ワハラ防止対策
1日から大企業で義務化

年々深刻化するパワハラの被害を防止するため企業に対策を義務づける法律が施行され、大企業では1日から従業員の相談に応じる体制の整備などが必要となります。

1日施行された法律では、企業に対し、従業員からのパワハラに関する相談を受け付ける体制の整備や、再発防止に取り組むことなどを義務づけるほか、相談した従業員を解雇するといった不利益な扱いを禁止し、必要な対策を行わないなど悪質な企業はその名前を公表できることになっています。

また、セクハラや妊娠や出産に関するハラスメントと一元的に相談できる体制整備や就職活動中の学生やフリーランスで働く人などへのハラスメント、それに顧客からのハラスメントの防止策と合わせて行うことが望ましいとしています。

パワハラは労働局への相談件数は、直近の平成30年度のデータで8万件を超えて過去最多となり、年々深刻化しています。

パワハラの防止対策の義務化は、大企業では1日から、中小企業では再来年4月から始まり、それまでの期間は努力義務とされます。

新型コロナで対策の遅れ懸念も

1日から企業に義務づけられたパワハラの防止対策について、新型コロナウイルスの影響で取り組みの遅れを懸念する声があがっています。

パワハラの防止対策などについて企業向けの研修を実施している、東京 千代田区の「日本ハラスメントカウンセラー協会」によりますと、ことし2月以降、予定していた研修の中止や延期が相次いでいるということです。その数は全国で90件以上にのぼり、まだ実施のめどがたっていない企業も多いということです。

パワハラは、人材育成のために行う指導との線引きが難しいといった声が根強く、企業が対策を行うには具体的にどのような行為がパワハラになるのかを担当者が理解するなど、事前の準備が重要なため、協会ではことし3月以降、オンラインでの研修を始めています。

先月26日に実施したオンラインの研修には、企業のパワハラ対策の担当者などおよそ20人が参加し、弁護士が何がパワハラにあたるのかや相談を受けた際の対応などを説明していました。

講師をつとめる弁護士の坂東利国さんは「何がパワハラなのか、実際にどう対応すればいいのか、企業の悩みはつきないと感じています。オンラインなら、離島など、遠隔地でも参加できるメリットをいかし研修を実施していきたい」と話していました。

また、「日本ハラスメントカウンセラー協会」の監事の牧野常夫さんは、「6月の法律の施行に合わせて企業の皆さんも準備をすすめていましたが、それどころではなくなってしまったので、企業によっては半年から1年、対策が遅れるおそれがあると感じています。国も改めて必要な取り組みについて周知するなどして機運を高めてほしい」と話していました。