治的な影響を懸念」
元特捜部長ら意見書提出

内閣の判断で検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案について、政界をめぐる汚職事件などを手がける東京地検特捜部の熊崎勝彦元部長など特捜部OBの有志38人が、「検察権の行使に政治的な影響が及ぶことが強く懸念される」として、考え直すよう求める意見書を18日、法務省に提出しました。

検察庁法の改正案について意見書を提出したのは、元東京地検特捜部長の熊崎勝彦氏や八木宏幸氏など特捜部長の経験者6人を含む特捜部OBの有志38人です。

検察庁法の改正案は、特例規定として内閣や法務大臣の判断で検察幹部らの定年延長を最長3年まで可能にするもので、意見書では「検察権の行使に政治的な影響が及ぶことが強く懸念され、慎重かつ十分な吟味が不可欠だ。将来に禍根を残しかねない今回の法改正は看過できず、法改正を急ぐことは検察に対する国民の信頼を損ないかねない」として、考え直すよう求めています。

東京地検特捜部は、政界をめぐる汚職事件や大型経済事件などを手がける検察の象徴的な存在で、熊崎氏は金丸信元自民党副総裁の脱税事件やゼネコン汚職事件などを指揮しました。

改正案をめぐっては今月15日、ロッキード事件の捜査を担当した松尾邦弘元検事総長ら14人が法務省に反対の意見書を提出しています。

熊崎勝彦氏「検察の独立性に影響懸念」

意見書を取りまとめた世話人の1人で元東京地検特捜部長の熊崎勝彦氏は、NHKの電話インタビューに応じ「大型事件を捜査する際、特捜部では現場の検事を含めて政治的なプレッシャーを感じることはある。改正案が、内容や基準があいまいなまま法制度化されると、特捜部が今後、政官財の事件を扱う際、政治的中立性や検察の独立性に影響を及ぼしかねないと懸念し、意見書を出すに至った。国民から疑念を抱かれるようなことはあってはならない」と述べました。

また、「後輩の検事は法と証拠に従って愚直に仕事をすることと信じています」と話していました。

中井憲治氏「将来に禍根残す」

意見書を取りまとめた世話人の1人で元東京地検特捜部長の中井憲治氏は「今回の改正案については、国会の審議でも具体的な説明が足りておらず非常に違和感を感じていた。このままでは将来に禍根を残すと思い、あえて声を上げざるをえないと判断した」と述べました。

そのうえで「検察がいちばん怖いのは国民からの信頼がなくなるということで、信頼がなくなれば捜査もうまくいくはずがない。改正案についてぜひ、もう一度吟味して考え直してほしい」と話していました。