業再開しても「ぜひ来て
と言えない」 宿泊施設

大型連休の終了に合わせて、休業要請の対象から宿泊施設などを外す県も出てきています。しかし、引き続き県をまたいだ移動や外出自粛が求められていることなどから、営業再開を見送る施設も相次ぎ、先行きへの不安の声はいまも聞こえています。

群馬県は、不要不急の外出自粛や遊興施設や遊技施設などに対する休業要請を今月末まで延長した一方、宿泊施設やゴルフ場などは大型連休の終了に合わせて7日から対象外としました。

今週末からの営業再開を目指している渋川市の伊香保温泉の旅館では、浴場や部屋を掃除したり、従業員と宿泊客ができるだけ接触しないようにする感染防止策をまとめた案内文を用意したりしていました。

しかし、県をまたいだ移動や外出の自粛が引き続き求められていることから、営業を再開しても客足が戻るか不安を抱えるところも多く、伊香保温泉にある44軒の旅館やホテルのうち営業を再開したのは5軒でした。

「美松館」の高橋秀樹代表取締役は「再開できるのはうれしい反面、『ぜひいらしてください』とは言えないので複雑な気持ちです」と話していました。

渋川伊香保温泉観光協会の大森隆博会長は「右足でアクセルを踏みながら左足でブレーキを踏むような現実に対じし、宿泊予約が入らない状況に困惑しています。早い終息を願いながら、お客さんが安全・安心に楽しめる受け入れ態勢を整えていきたい」と話していました。

「お客様と従業員の安全 守る使命が…」

宮城県では7日に休業要請が解除されましたが、宿泊施設の経営者からは全国的に感染拡大が収束したわけではないとして、営業再開に慎重な意見が聞かれました。

このうち仙台市郊外の秋保温泉でホテルを経営し「宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合」の理事長も務める佐藤勘三郎社長は、休業要請を解除した宮城県の判断について、「観光業も含めて経済的に困窮する方が増えていることを考えると現実的な判断だと思う」と理解を示しました。

このホテルではすでに今月28日まで休業を決めていて、来月にはおよそ1300人分の予約が入っているということですが、全国的に感染拡大が収束しないままでは営業は再開できないとし、来月以降も休業を続ける方向で検討しています。

佐藤社長は「まだまだ収束していない地域が国内にたくさんある中で、営業を再開すれば県境を越えた人たちが流れ込んでくる可能性も否定できない。お客様と従業員の安全を守るという使命があり、直ちに営業再開するという判断はできない」と話していました。

食堂のみ営業の民宿は

岩手県田野畑村の民宿「白花しゃくなげ荘」は県外からも多くの観光客が訪れることから、緊急事態宣言が全国に拡大された先月中旬から宿泊客の受けれを自主的に取りやめ、食堂のみ営業を続けていました。

しかし食堂での感染を防ぐため、座席の距離をあけたうえで対面にならないように配置した結果、これまでは40人ほどが座れた店内に、いまは7人しか座れなくなってしまったといいます。全体の売り上げは例年に比べると9割も減少したといい、いまは従業員の出勤日数を半分程度に減らしているといいます。

民宿には常連客などから励ましの手紙が30通ほど寄せられていて、緊急事態宣言が解除されれば宿泊客の受け入れを再開したいとしています。

白花しゃくなげ荘の泡淵正社長は「緊急事態宣言が続いているので貯金を取り崩しながら何とか対応しています。この状況が続くのは厳しいですが、もうしばらく我慢して再開に向けて頑張りたい」と話していました。