道さえなければ…」
厚労省担当者がメール

シベリア抑留者の遺骨を取り違えていた疑いがある問題を受けて、日本の調査団の派遣がロシア側の意向で中止になったことについて、厚生労働省の担当者が「報道さえなければ事業は復活していたのに非常に残念だ」などと、収集事業に協力する団体にメールで伝えていたことが分かりました。厚生労働省の公式の見解とは異なる内容で団体の幹部は「みずからが招いた問題を報道のせいにしており、あきれてものが言えない」と批判しています。

「事業は復活していたのに非常に残念」とメール

シベリア抑留者の遺骨をめぐっては、厚生労働省が取り違えの疑いを14年前に把握しながら、ロシア側と協議せず事実上放置していたことがNHKの報道で明らかになり、今月下旬に戦没者の慰霊事業の1つとしてロシア極東の沿海地方で予定されていた日本の遺骨調査団の派遣がロシア側の意向で中止になりました。

これについて、厚生労働省の担当者が今月下旬、「報道さえなければ、いや、せめてもう少し遅ければ沿海地方の慰霊事業は復活していたのに非常に残念だ」などと、国の収集事業に協力する団体にメールで伝えていたことが分かりました。

厚生労働省は一連の問題について「報道がなくても公表するつもりだったが、スピード感が足りず反省している」などと説明していましたが、メールの内容はこうした公式の見解とは異なる内容になっています。

団体理事「あきれてものが言えない」

メールが送られた団体「日本戦没者遺骨収集推進協会」の赤木衛理事は「厚生労働省はみずからが招いた自業自得の問題を報道のせいにしており、あきれてものが言えない」と批判しています。

厚労省「コメントは控えたい」

メールの内容について、厚生労働省は「事実を隠し通せば物事がうまく進むと考えている職員はいないと信じているが、事実関係を確認できていないのでコメントは控えたい」と話しています。

ロシアの団体「厚労省 信用失った」と批判

シベリア抑留者の遺骨を取り違えていた疑いがある問題について、ロシア側で遺骨収集事業を支援してきた団体の幹部は、「厚生労働省は信用を失った」と批判し、ロシア政府が納得する再発防止策を示すよう、日本側に求めました。

シベリア抑留者の遺骨を取り違えていた疑いがある問題について協議するためロシアを訪れている厚生労働省の担当者は26日、これまで遺骨収集事業のために現地調査などを支援してきたロシアの団体「国際軍人慰霊協力協会」の幹部と面談しました。

面談のあと「国際軍人慰霊協力協会」のトロチコ副会長はNHKの取材に対し「厚生労働省は信用を失った。失った信用をこれから取り戻さなくてはならない」と述べ、厚生労働省が遺骨の取り違えの疑いを把握しながら、ロシア側に伝えなかったことを批判しました。

そのうえで「日本の世論やロシア政府が、厚生労働省の高い専門性を認め、再び信用するには、長い時間がかかる」と述べ、ロシア政府が納得する再発防止策を示すよう日本側に求めました。

また今月下旬にロシア極東の沿海地方で予定されていた、日本の遺骨調査団の派遣がロシア側の意向で中止になったことについては「今のところ、一時的な措置のようだ。しかし再開が来年になるのか、それとも数年先になるのかはわからない」と述べました。