相 ハンセン病元患者の
家族と面会し謝罪

ハンセン病患者の家族への差別被害を認めた集団訴訟の判決を受け、安倍総理大臣は元患者の家族と面会し、政府として謝罪するとともに訴訟に参加していない家族も含め必要な救済策を盛り込んだ立法措置を講ずる考えを伝えました。

ハンセン病の患者に対する隔離政策で、家族も差別され被害を受けたとして、元患者の家族が国を訴えた集団訴訟は、国の責任を認めて賠償を命じた熊本地方裁判所の判断を政府が受け入れて、判決が確定しています。

これを受けて安倍総理大臣は、午前10時すぎ、総理大臣官邸で元患者の家族ら40人余りと面会しました。

この中で安倍総理大臣は「ハンセン病に対する極めて厳しい差別と偏見が、皆様に向けられてきたことは否定しがたい厳然たる事実だ。その結果、本当に長い間、皆様に大変な苦痛と苦難を強いることとなってしまった。内閣総理大臣として、政府を代表して心から深くおわびを申し上げる」と述べ、頭を下げて謝罪しました。

そのうえで「先般、判決の受け入れを決定したが、それにとどまらず、今回、訴訟に参加されなかった方々も含め、新たに補償するための立法措置を講ずる。さらに、さまざまな問題の解決に向けて協議の場を速やかに設け、皆様と一緒に差別偏見の根絶に向け、政府一丸となって全力を尽くしていくことをお約束する」と述べました。

これに対し原告団団長の林力さんは「らい予防法は廃止からすでに20年余りがたったが、長きにわたり作り出された差別の構造と社会意識は簡単に払拭(ふっしょく)できるものではない。安倍総理大臣には訴訟を機に、誤った認識を正す啓発と教育に、当事者であるわたしたちの声を生かしながら、国の総力を挙げて取り組んでもらいたい」と求めました。

「私たちの声を十分に取り入れた立法措置を」

ハンセン病の元患者の家族や集団訴訟の弁護団は、安倍総理大臣との面会後、都内で記者会見を開きました。

集団訴訟の原告団長で、父親が鹿児島県の療養所に入所していた福岡市の林力さん(94)は「原告みんな、悲しみや差別との戦いの人生があり、それに対して総理からねぎらいのことばがあったのはうれしく思った。今後は私たちの声を十分に取り入れた立法措置を講じてもらいたい。官僚サイドだけで進めては私たちの思いは届かない」と訴えました。

両親が熊本県の療養所に入所していた鹿児島県奄美市の奥晴海さん(72)は「私たちの話を真剣に聞いてくれたと信じている。総理にはもう一歩踏み込み、すべての原告が納得できる差別のない解決をしてほしい」と話しました。

弁護団の共同代表の徳田靖之弁護士は「家族に対する差別や偏見について、国が誤っていたと総理が明言したことは大きく、今後、全力で取り組むと言ったことは評価できる。裁判に参加していない人も含めて、一律に補償することが最重要課題であり、それを実現するのが私たちの使命だと思っている」と話しました。

菅官房長官「新たな補償など早急に検討」

菅官房長官は午前の記者会見で「新たな補償や、差別と偏見の根絶に向けた取り組みの具体的な内容については、協議の場などを通じて引き続き、ご家族の皆様の声に耳を傾けながら、しっかり早急に検討していく」と述べました。

国民 玉木氏「新たな立法措置に全力で協力」

国民民主党の玉木代表は記者会見で、「政府がハンセン病の元患者や家族に寄り添った対応をとることを強く期待する。新たな立法措置については速やかに作業を進めて、秋の臨時国会に法案を提出するよう求め、成立に全力で協力したい」と述べました。