ラリーマンと議員
兼業するしかない!?

日本には「地方議員」が3万人もいることをご存じですか?
今回、その全員に初めてのアンケートを行いました。回答してくれたのは2万人近く。NHKでは1か月にわたって、そのホンネを伝えるキャンペーンを展開します。

ここまで2回にわたって議員報酬についての切実な声を取り上げてきました。3回目は、解決策をめぐる声をご紹介します。

むしろ減らしてしまっては!?

60代の男性議員は、むしろ報酬を減らしてしまう方法があるといいます。その方が、議会の活性化にも効果的だというのです。

「議員報酬を『年収』と考えると、退職金もなく、議員年金もない中で、少ないと思うが、3か月に1度の本会議で、必須の出席日数からみると、多いと思う。
議員定数について、各地域の流れから、減らすことしか考えていないと思いますが、私は増やして、報酬を減らしていいと思います。議員定数が問題ではなく、総人件費が問題なので。
20人のところを30人にし、30万円の給付が20万円の報酬になれば、いいと思います。議員が多い方が、地域住民の方々の相談者が増え、よりよいコミュニティができると思う。また常任委員会が、2つや3つの重ねた委員会より、それぞれの単体での委員会の方が、より詳しく会議でき、深い審議ができます」

ボランティアという考え方

70代の男性議員は、報酬を減額することで、ボランティアとして議員ができる人材を呼び込むべきだという意見を持っています。

「議員報酬が少ないとの声もあるが、私はもっと少なくして町民のために使うべきと思う。報酬で生活などと言っているから首長や職員に軽視される。それなりに自活でき、町の有識者や産業を担っている人が奉仕の精神で働けば、首長・職員もそれなりの敬意をもった対応をすると思う。今までの概念にとらわれず、後輩たちのために努力しなければいけない時である」

50代の男性議員も、新しい議会の形があるのではないかとしています。

「地方議会は欧米なみの『夜間ボランティア議会』にすべき。報酬が発生しなければ、金目当ての議員は寄ってこない。純粋に街を思う、政策を考える資質の高い議員が中心となる。
現在も各種政策における自治体の先見性は、各種ボランティア団体、市民団体の活動に負う部分が大きい。
『夜間ボランティア議会』を、住民直接参加型議会として運用すればいい」

ボランティアでは無理

こうした意見の一方で、今の時代状況では難しいと指摘するのは、40代の男性議員です。

「議員の中には、ボランティア化を進めるべきと言われる方もみえるが、自治会、町内会ですら役員や理事のなり手がいなくなっているのが現状。であるならば、地方議員も今までのような名誉職でなく一生の業としていくべき」

もはや兼業しかない?

議員報酬の増額が難しい中では、もはや兼業をしやすい状況を作ったほうがいいのではないか、という意見も相次ぎました。

「特に町村議員の報酬の低さから、若者の立候補がない。報酬だけでは生活できない。兼業、兼職の容認が必要と考える」(70代男性議員)
「基本的には、議員は専業職であることを願います。しかしながら議員報酬の問題もあるので、生活をしていくためには兼業、兼職もやむを得ないと思います」(50代男性議員)

40代の男性議員は、報酬を減らしても兼業しやすい環境さえあれば、立候補する人はいるのではないかといいます。

「なり手不足を解消するために議員報酬を引き上げるのではなく、むしろ引き下げるとともに、兼業しやすい環境を整えてこそ、志があり市民感覚のある人が議員に立候補するのではないかと思います。
今は報酬目当ての人が多すぎるように思います。議員は非常勤特別職の公務員ですから、常勤と同じような待遇を求めるのはおかしいと常々感じています」

今回のアンケートでも、「議員のなり手不足解消に何が必要だと思いますか」という質問で、「兼業・兼職の容認が必要」と答えた議員は、70%を超えました。

でも、どっちが本業?

一方で、兼業することのリスクを指摘するのは、40代の女性議員です。

「議員報酬では食べていけない。それで他に仕事を持ち、どちらが本業か判らなくなり、忙しいいゆえ、議員としての勉強もせず成長しない人が多い気がする。自分がそうならないよう気をつけている」

ある市議会の60代の議員は、こんな懸念を抱いています。

「ほとんどの市議会議員は議員以外の仕事を持っており、議員報酬以上の月収となっている。このような状況は、議員活動はアルバイトと考えているのではないのか」

議員との兼業、会社が認めてくれるのか

60代の男性議員は、そもそも議員との兼業を、勤め先が認めてくれるかが問題だと指摘します。

「地方議員の報酬では、若者や子育て世代などは、まず無理ではないか。兼業・兼職の容認も必要だと思うが、議会、委員会、議員としてのボランティア活動と、地区会会長も兼任しており、年間100回ぐらい議員活動などがある。会社員だとそれぐらい休むとなれば、会社側の理解を得るのは無理ではないか。議員報酬で生活出来るのが一番良いが、それでは住民の理解が得られない。結果的には退職者で年金の受給者(が議員)となるのが現状である」

70代の女性議員は、みずからの経験を振り返り、兼業は難しいと述べます。

「私の経験では県政課題についてほぼ全日、24時間調査、研究、論戦、住民運動との連携などに力を注いできたのが実情。兼業のイメージがわかない」

解決策、なお模索中

さまざまな意見が出ましたが、それぞれの議会での状況も違い、決定打といえる解決策を選ぶというのは容易ではないようです。次回は、こうした状況のなかで、どんな人が「議員のなり手」になっていて、その影響がどう出ているのかについて紹介します。

なお、寄せられた声をもとに、記事は随時更新していきます。一旦、集計は終了しましたが、ご意見は今後も参考にさせていただきますので、まだ回答されていない議員のかた、お待ちしております。
また、議員の方だけでなく、読者の皆様にも、地方議会の課題についてのご意見をいただきたいと思います。下の画像をクリックしていただけると、「ニュースポスト」が開きます。そちらにぜひ、「議員アンケートについて」などと書いて、投稿をお願いします。

【全議員アンケートについて】
NHKは、今年1月から3月にかけて、全国1788の都道府県・市区町村の議会と、所属する約3万2000人の議員全てを対象とした、初めての大規模アンケートを行いました。議員のなり手不足など、厳しい状態に置かれている地方議会の現状を明らかにし、「最も身近な民主主義」である議会のあり方について、有権者一人一人に考えていただく材料にしてもらおうというのが趣旨です。
約60%にあたる1万9000人余りから回答が寄せられています。集計結果をもとに、テレビ番組や特設サイト、そして週刊WEBメディア「政治マガジン」などで、統一地方選が終わる4月末にかけて「議員2万人のホンネ」と題したキャンペーン報道を行っていきます。4月27日(土)には、午後9時から「NHKスペシャル」の放送を予定しています。

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