京都予算案 一般会計
7兆4610億円で過去最大に

東京都は新年度(2019年度)の予算案を発表しました。来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックに関係する事業費が増加したことなどから、一般会計の総額は過去最大の7兆4610億円になりました。

東京都の新年度予算案は、一般会計の総額が7兆4610億円で、今年度の当初予算より4150億円増え、バブル崩壊に伴う景気対策が行われた1992年度を上回って過去最大となりました。

これは、来年に迫った東京大会に関係する事業費として、今年度当初より2047億円多い5330億円を計上したことが主な要因です。

また、小池知事が重点項目としている分野では、国際金融都市の実現や新産業の育成などに3260億円、地震や水害に強いまちづくりに3179億円、子どもを安心して産み育てることができる環境の整備に2206億円を計上しました。

歳入面では、緩やかな景気の回復に伴って都税収入が今年度当初より2700億円増え、過去最高に迫る5兆5032億円となる見通しです。

また、効率的に予算を使うため、今回は1208の事業を見直し、過去最大のおよそ900億円の財源を生み出したとしています。

一方、東京大会などのため、都の貯金にあたる基金のうち、5841億円を取り崩す予定ですが、基金の残高は来年3月末の時点で1兆9090億円を確保する見通しです。

都の新年度予算案は、来月、開会する都議会の定例会に提出されます。

小池知事「最大規模だが質高めた予算」

東京都の小池知事は記者会見で、新年度予算案の一般会計の総額が過去最大となったことについて「2020年東京大会の支出がこの時期にいちばん高くなっていることがあるが、大会のためだけでなく、その先を見越して都市力の強化や『稼ぐ力』の強化などを、いまやっておかなければ、このあと、より課題が大きくなってしまう。最大規模といっても、質を高めた予算になったと考えている」と述べました。

また、小池知事は「財政の健全性を保つため、都債の発行額を極めて抑えた。社会の変化や、AI=人工知能などのさまざまなツールの変化によって、都市や自治体の運営も変わることなども考えながら、今回の予算編成を行った」と述べました。

新年度予算案の主な事業

東京都の小池知事は、新年度の予算編成にあたり、防災力の強化を含む気候変動対策や、「稼ぐ力」の強化などの産業政策、それに子どもを安心して産み育てることができる環境の整備などを重点項目に掲げました。

このうち、防災力の強化では、大規模な災害に備えて住民一人一人が具体的な避難のタイミングを事前に決めておく「マイ・タイムライン」の作成を進める事業に5億円を計上したほか、道路が狭く、消防車や救急車が入ることが難しい地域で小型自動車などを使って救出活動にあたる「ファーストエイドチーム」を東京消防庁に創設します。

また、気候変動対策として、省エネ効果の高い家電に買い替える都民を対象に、商品券などと交換できる独自のポイントを付与する制度の創設に45億円を計上しました。

この制度は、ことし10月に予定されている消費税率の引き上げに伴う景気対策も兼ねています。

東京の「稼ぐ力」を強化する事業としては、国際金融都市の実現や外資系企業の誘致などに取り組む事業に27億円、「MICE」と呼ばれる大規模な国際会議や展示会などを誘致する事業に18億円を計上しました。

福祉や教育の分野では、国がことし10月からの実施を予定している幼児教育と保育の無償化の対象にならない世帯に、都が独自に支援する制度に254億円、閉館した国立の児童施設、「こどもの城」を都民の複合施設として活用するため、国から建物と土地を購入する費用などとして609億円を計上しました。

都の五輪・パラ関係事業費 総額1兆4000億円

東京都は今回の予算案に合わせて、来年の東京オリンピック・パラリンピックに関係する事業費を改めて公表し、その総額は2020年度までにおよそ1兆4000億円になる見込みです。

東京大会では、新設の競技会場の整備や大会運営などの費用となる「大会経費」を都と組織委員会、それに国が負担しますが、このうち都は6000億円を負担します。

また、都は大会経費とは別に、東京大会をきっかけに行う事業の費用を「大会関連経費」と位置づけていて、2020年度までの4年間で8100億円の負担を見込んでいるとしています。

この大会関連経費の内訳をみると、競技会場として使われる東京体育館など既存のスポーツ施設の改修や選手村が建設される晴海地区の整備などに860億円。

都心と臨海地域を結ぶ環状2号線など幹線道路の整備や競技会場周辺のセキュリティー対策などに1870億円。

競技会場周辺の駅のバリアフリー化などに750億円。

それに、電線を地中に埋める無電柱化など都市インフラの整備に2710億円となっていて、東京大会にあわせたさまざまなまちづくりの費用も盛り込まれています。

この結果、都の東京大会に関係する事業費は、大会経費と大会関連経費を合わせておよそ1兆4000億円を見込んでいます。

このうち、新年度の予算案には大会経費として新国立競技場の整備で都が負担する395億円を含む2720億円を計上しました。また大会関連経費としては、ことし夏に行われるテスト大会で暑さ対策を検証する事業や大会期間中に都内で活動する都市ボランティアの育成事業などに合わせて2610億円を計上しました。

新年度の大会経費と大会関連経費を合わせると5330億円となり、支出はピークを迎えます。

都の財政は大丈夫?

東京都の財政は好調な都税収入に支えられていますが、その一方で、およそ1兆4000億円に上る東京大会に関係する事業費などをどのように工面していくかが大きな課題です。

過去最大となった新年度の当初予算案で、東京都は貯金にあたる基金のうち、5841億円を取り崩し、税収を補っています。

都は、東京大会の開催に備えて基金を最大2兆7556億円まで積み立てたため、2020年度までに1兆円以上を取り崩しても、1兆4000億円余りを確保できる見込みだとしています。

その一方で、将来世代への負担を抑えるため、都の借金にあたる都債は発行額を抑制していて、新年度の都債の発行額は今年度の当初と比べて11億円減らした2096億円にする予定です。

この結果、来年3月末時点の都債の発行残高は4兆9724億円で、7年連続の減少となる見通しです。

また、新年度予算案の歳入に占める都債の割合は2.8%で都は、国やほかの自治体と比べて健全な状態だとしています。

しかし、今後の財政は楽観できる状況にありません。国は、大都市と地方の税収格差を是正するため、都の地方法人税の一部を地方に配分する方針で、これにともなって2021年度以降、都税収入は年間でおよそ8800億円、減る見通しです。

さらに、企業からの税収は景気に左右されやすく、リーマンショック後の景気悪化の際に都の税収が1年で1兆円減ったこともありました。

東京では今後、過去に例のない高齢化が進むほか、社会インフラの更新費用などもかさむ見通しで、都には引き続き、むだな事業を見直して、既存施設を有効に活用するなど、将来につけを残さない都政運営が求められています。

予算案審議の見通しは

東京都の新年度予算案は、来月、開会する都議会の定例会に提出され、審議が行われます。

小池知事を支持する都民ファーストの会は今月、都議会議員3人が離党しましたが、それでも所属する都議会議員は50人で依然として都議会の最大会派です。

小池知事の都政運営に是々非々の姿勢で臨むとしている公明党と協力すれば、都議会の過半数となり、予算案は可決・成立することになります。

一方、1年前の都議会で今年度の当初予算案が賛成多数で可決された際、自民党と共産党などは反対しました。

小池知事との対決姿勢を鮮明にしている自民党が、当初予算案に反対するのは41年ぶりでした。

今回の都議会では、来年夏に実施される見通しの次の都知事選挙をにらみながら、自民党が新年度の予算案にどのような対応をとるのかも、注目されます。