岸田首相 NATO会議後 EUと定期首脳協議へ

ヨーロッパを歴訪中の岸田総理大臣は、最後の訪問先、ベルギーを訪れています。日本時間の13日夜、EU=ヨーロッパ連合との定期首脳協議に臨み、安全保障面での協力を拡大する方針などを盛り込んだ共同声明を発表する見通しです。

岸田総理大臣はリトアニアでNATOの首脳会議に出席し、ロシアや中国の動向を念頭に、ヨーロッパとインド太平洋の安全保障は不可分だと強調したほか、ウクライナに対し、新たに無人航空機の検知システムを含めた殺傷性のない装備品の供与を進めていく方針を明らかにしました。

そして会議にあわせて、サイバーや宇宙などを含めた安全保障上の課題に共同で対応していくことを盛り込んだ新たな協力文書をまとめました。

また各国首脳とも個別に会談し、韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領との会談では、福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する計画への理解を求めたのに対し、ユン大統領はIAEA=国際原子力機関の報告書を尊重する立場を説明しました。

一連の日程を終えた岸田総理大臣は記者団に対し、NATOの首脳会議について「参加各国と思いを共有できた。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて連携を引き続き進めていきたい」と述べました。

そして日本時間の13日未明、最後の訪問先、ベルギーに到着しました。

岸田総理大臣は13日夜、EUとの定期首脳協議に臨み、経済安全保障を含めた安全保障面での協力を拡大する方針などを盛り込んだ共同声明を発表する見通しです。

このほか、福島第一原発の事故のあとから続く日本産食品に対する輸入規制の撤廃をめぐっても意見が交わされるものとみられます。

岸田首相「参加各国と思いを共有」

岸田総理大臣は訪問先のリトアニアを出発する際、記者団に対し、NATOの首脳会議について「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分だとの認識のもとに地域を越えた同志国間の協力が重要だという指摘を行い、参加各国と思いを共有できた。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けてNATO加盟国やパートナー国との連携を引き続き進めていきたい」と述べました。

日本とNATOがまとめた新たな協力文書について「日NATO協力を新時代の挑戦に対応し、新たな高みに引き上げるための文書で合意できた。今後は協力文書を踏まえて伝統的な分野に加え、サイバーや新興技術など新たな分野での協力を進めていきたい」と述べました。

また、日韓首脳会談について「2国間の対話や協力の進展を互いに確認し、関係改善を両国の国民が実感できるよう、さらに取り組んでいくことで一致した」と述べました。

岸田首相“スウェーデンのNATO加盟支持”

岸田総理大臣は、訪問先のリトアニアで、スウェーデンのクリステション首相と会談し、NATO=北大西洋条約機構への加盟申請の決断を支持する考えなどを伝え、両国の安全保障面での協力をいっそう強化していくことで一致しました。

会談は、日本時間の12日夜8時40分から、およそ20分間行われました。

この中で岸田総理大臣は、ロシアや中国の動向を念頭に、いまの厳しい国際安全保障環境のもとでは、ヨーロッパとインド太平洋の安全保障は不可分だという認識を重ねて示しました。

その上で、スウェーデンのNATOへの加盟申請の決断を支持する考えとともに、その早期実現と、ヨーロッパの安全保障がいっそう強化されることへの期待を伝えました。

その上で両首脳は、NATOやEUを通じた連携とともに、日本とスウェーデンの2国間でも安全保障面での協力をいっそう強化していくことで一致しました。

また両首脳は、北朝鮮情勢をめぐっても意見を交わし、12日のICBM級の弾道ミサイル発射を含めた核・ミサイル問題や拉致問題への対応で、引き続き連携していくことも確認しました。

ゼレンスキー大統領との会談は見送りに

岸田総理大臣は、リトアニアで開かれたNATO=北大西洋条約機構の首脳会議にあわせ、ウクライナのゼレンスキー大統領と首脳会談を行う予定でしたが、政府関係者によりますと、現地の日程に遅れが生じたことなどで最終的な調整がつかず、見送られました。

これについて、岸田総理大臣は空港で記者団に対し「ゼレンスキー大統領とは、NATOの会合が大幅に長引いたため、残念ながら会談をするには至らなかった。G7とウクライナとの間でウクライナ支援に関する共同宣言を発出したが、そのための式典の舞台裏で短時間、懇談を行った」と述べました。