「人とペットの共生条例案」全会一致で否決 岡山 総社市議会

人とペットが共生する社会を実現しようという岡山県総社市の条例案は、12月21日に市議会の本会議で採決が行われ、全会一致で否決されました。

総社市の「人とペットの共生条例案」は「ペットは家族の一員」という理念のもと、飼い主などの役割を定め、市の責務として迷子の捜索に協力し、災害時にはペットと一緒の避難所を設置するといった内容です。

21日の市議会の本会議で、審議してきた委員会の委員長が結果を報告し、職員の事務負担を考えると今、必要なものではないとか、避難が長期間になるとエサや排せつ物が問題になりうるが、災害時の対応を、安直に考えているように感じるといった意見が出されたと述べました。

このあと、議長と欠席した議員を除く20人で採決が行われ、条例案は全会一致で否決されました。

本会議のあと、村木理英議長は記者会見で「目的やペットの定義が不十分で、条例として形になっていないと言わざるを得ない」と述べました。

一方、片岡聡一市長は報道陣に対して「残念で悔しい。共生という理念やペットと避難できる避難所の設置など、市の義務を明文化した条例が必要だと考えているが、今後については、冷静に議論して決めたい」と述べました。

「人とペットの共生条例案」とは

総社市の「人とペットの共生条例案」は、「ペットは家族の一員」という理念のもと、飼い主や販売業者に求められる役割だけでなく行政側の責務も盛り込んでいます。

このうち市の責務として、迷子になったペットの捜索や、保護された動物の飼い主の特定に協力していくことや、災害時に飼い主とともにペットが避難できる避難所を整備するとしています。

また飼い主には、近隣住民の理解が得られるよう飼育環境を整えることを求め、販売業者には適切なペットの飼育を客側に促すことを求めています。

総社市は、ペットの管理などの規制に焦点をあてるのではなく、ペットと共生していくという理念に重点を置いていて、このような条例は全国的にも珍しいとしています。

岡山県内では昨年度1年間に、迷子や飼育放棄で自治体に引き取られた犬や猫はおよそ1400匹にのぼり、行政や保護団体は、管理や譲渡先の確保などの対応に苦慮しています。

これまでも総社市は「人とペットの共生」という理念のもと、ペットを飼う人に配慮した政策を行ってきました。

総社市でも大きな被害を受けた4年前の西日本豪雨では、市役所など3か所に、飼い主がペットと同伴できる避難所を開設し、もっとも多いときであわせて犬24匹、猫9匹が避難しました。

また11月に行われた、島根原発での事故を想定した避難訓練では、避難者が、気兼ねなく動物と一緒に過ごせるスペースを、避難所に設置する取り組みも行いました。

このほか、飼い主がわかるように犬や猫にマイクロチップを装着する費用の全額を補助する制度を、10月から始め、12月までに61件の申請があったということです。