「改正難病法」成立 患者「一日も早く治療薬開発を」

難病患者のデータベースを整備し製薬会社などが活用できるようにすることなど、治療薬の開発につながると期待される施策を盛り込んだ改正難病法が、10日に参議院本会議で可決・成立しました。
新型コロナの影響で、法改正に向けた検討が当初の予定より遅れての成立に、当事者からは法律の施行に期待する声とともに、一日も早く治療薬の開発を求める声があがっています。

「難病法」は、難病患者への医療費の助成や治療につながる研究の推進などを定めた法律で、2015年1月の施行後5年以内をめどに必要に応じて見直すことになっていました。

厚生労働省は当初、2019年の年末ごろに見直しの方針をまとめようと検討を始めましたが、新型コロナの感染拡大の影響で一時中断を余儀なくされたほか、コロナの対応に多くの人手が必要となったために、法改正が進まない状態が続いていました


改正法には、難病患者への支援策として、医療費助成を開始する時期をこれまでの「申請時点」よりさかのぼって「重症化した時点」とすることや、自治体が患者に「登録者証」を発行し、就労支援や福祉サービスを円滑に受けられるようにすることをなどが盛り込まれています。


また、治療法の研究や治療薬の開発につながると期待される施策として、軽症患者も含めたデータベースを整備し、一定の条件で製薬会社なども利用できるようにすることが盛り込まれています。

この法律は来年10月以降、順次、施行されることになっています。

難病患者 “一刻も早く治療薬を届けて”

改正難病法の成立に、難病の当事者からは法律の施行に期待するとともに、一日も早い治療薬の開発を待ち望む声があがっています。

東京 八王子市に住む岩崎恵介さん(41)は、指定難病の1つ「脊髄小脳変性症」の患者です。体が思うように動かせなくなっていく難病で、7年前の34歳の時に診断されました。

ここ数年は、特に病気の進行が早まっていると感じるようになったということで、以前はマンションで1人暮らしをして、自宅でできるオンラインの仕事を続けていましたが、その後、声が出にくくなったことを受けて仕事を辞め、8月からは実家で家族と暮らしています。

以前は、つえを突きながら1人で通院や買い物もしていましたが、今は足の痛みが強くなり、自宅の中で移動をする際に歩行器を使うようになりました。

それでも岩崎さんは、毎日8000歩を目指して家の近くを散歩しているほか、言語聴覚士や理学療法士の訪問を受けながらリハビリを続けています。

この病気の処方薬は2種類で、症状を和らげる効果はあるものの治療する薬ではないため、一日も早く新しい治療薬が開発されることを願っています。
岩崎さんは今回の法改正について、「この法律の後ろには多くの治療を待つ患者がいるので、新型コロナによって止まっていた法律が動き出してとてもうれしい。患者は薬だけが解決策なので、法律が可決されただけで喜ぶのではなく、研究開発を進めて一刻も早く治療薬を届けてほしい」と話しています。