“推し休暇” 札幌の保育園が11月導入 最大10日間付与

多様な働き方が注目される中、札幌市にある保育園は、保育士に自分の好きな、いわゆる「推し」のアーティストのライブなどに休暇を使って行ってもらえるよう新たに「推し休暇」という制度を11月から導入することになりました。

札幌市西区にある「アリス保育園」が導入する「推し休暇」は、いわゆる「推し」のアーティストのライブや映画、演劇などに行く場合に使える有給休暇の制度です。

これまでの年間10日間の有給休暇に加えて、来月から「推し休暇」として、さらに最大で10日間の休暇が有給で付与されます。

14人の保育士などが働くこの保育園では、平日は午前7時から午後8時まで、さらに土日や祝日も開園していて、残業もある忙しい仕事の中でもプライベートを充実させてほしいと、新たな休暇の導入を決めたということです。

「推し休暇」の導入について、“ディズニーランド推し”という30代の保育士は、「『トイ・ストーリー』が好きで、アトラクションの『トイ・ストーリー・マニア!』を楽しんだり、グッズを買ったりしたいです。モチベーションはぐっと上がると思います」と話していました。

また、ゲームの大会などに出場する“プロゲーマー推し”という20代の保育士は、「自分の趣味が充実していないと、どうしても疲れとかで仕事に影響が出てしまうと思うので、休暇をたくさん満喫して楽しんだ分、その楽しさを子どもと一緒に遊ぶ中で、違う形で伝えていきたい」と話していました。

保育園では、休暇をとりやすい環境を作ろうと日頃から保育士どうしのコミュニケーションを大事にしているほか、1か月以上前から余裕を持って休暇の希望を出してもらったうえで、シフトが回るように互いに譲り合って調整しているということです。

自身はロックバンドの「BUCK-TICK」が推しという遠藤政志園長は、「保育士は、負担のかかる仕事で、体や気持ちの負担を少しでも軽くしてあげたいと模索しています。子どもたちの笑顔は保育士の笑顔から生まれると思っていて、プライベートが充実すると仕事中も自然な笑顔でいられます。そして、結果として子どもたちの楽しみにつながることを期待しています」と話しています。

街の人は…

「推し休暇」について、市内で話を聞きました。

札幌市の60代の女性は、「今、働いている会社にはそのような制度はないが、もしあったら、私も歌手のASKAさんとスターダストレビューが『推し』なので、ぜひ使いたい」と話していました。

東京から観光で訪れた20代の女性は、「推し休暇について初めて知りました。就活の際にはそういった制度がある会社にひかれます。あとは周りに推し休暇を取っている人がいれば取りやすいと思います」と話していました。

札幌市の30代の会社員の男性は、「自分は推しがいないので、特に使ってみたいとは思っていませんが、平日などにもイベントはあるので、そういう制度が導入されてもいいと思います。もし会社が導入する場合は現場の体制を整えたうえで人員が確保できるのであれば賛成です」と話していました。

滋賀県から観光で訪れた製造業に勤める60代の男性は、「有給休暇もしっかり取れていない会社もあるので、まずは、有給休暇を使うことで推しの活動にも参加できるのではないかと思います」と話していました。

専門家 「長時間労働の是正から働きがいが大事に」

北海道二十一世紀総合研究所の横浜啓調査部長は、働き方改革のステージは、長時間労働の是正といった法的な対応から、“働きがい”を大事にする多様な働き方の選択へと移ってきていると指摘しています。

そのうえで「推し休暇」の取り組みについて、「働き手のニーズにあわせて対応することで働きがいが出てきて、それが生産性につながることを目的に導入するところが出てきているのだと思う」と話しています。

そして、「選ばれる企業にならないと、売手市場の今、人が十分に確保できず、経営にも大きな影響があるので、魅力的な職場を作って、人に来てもらうことが大事だ」と話しています。