「佐渡島の金山」世界文化遺産登録の推薦書に不備 再提出へ

新潟県の「佐渡島の金山」の世界文化遺産への登録を目指して政府は、すでに提出している推薦書の不備をユネスコから指摘されたことから提出し直すことになりました。
末松文部科学大臣は、来年の登録実現は難しいという認識を示しました。

新潟県の「佐渡島の金山」をめぐって、政府は、ことし2月に世界文化遺産への登録を目指して、ユネスコに推薦書を提出しています。

末松文部科学大臣は7月28日午前、岸田総理大臣にその後の進捗(しんちょく)状況などを報告しました。

この中で、末松大臣は、「ユネスコの事務局から推薦書の一部に十分でない点があるという判断が示され再考を求めてきたが、事務局の判断は変わらないことが最終的に確認された」と説明しました。

そのうえで、「できるかぎり審査が早期かつ確実に進み、登録を実現するためには、苦渋の選択だが、推薦書を改めて提出するほかない」と述べ、推薦書を提出し直す意向を伝えました。

これに対し、岸田総理大臣は「まことに遺憾ながらやむをえない」と述べ、登録の実現に向けて新潟県などと連携して全力で取り組むよう指示しました。

このあと、末松大臣は「9月末までに暫定版の推薦書を提出し、来年2月1日までに正式なものを提出したい。地元自治体と協力して、最大限努力したい」と述べました。

そして、来年の登録実現については「難しい状況だ」と述べました。

ユネスコの指摘内容など

【推薦書の不備】
文化庁によりますと、ユネスコから不備が指摘されたのは、「佐渡島の金山」の2つの構成資産のうち「西三川砂金山」に関する部分だということです。
砂金をとる水を引き込むための「導水路」が途切れている箇所についての説明が記されていないと指摘されたということです。
文化庁は、「必要なものはしかるべく記載した」と話しています。
日本が提出した推薦書の不備を指摘されて審査がストップするのは、初めてだということです。

【いつごろ指摘された?】
ユネスコの作業指針によりますと、推薦書の審査結果は3月1日を目安に提出国に知らされることになっています。
文化庁は今回、不備が指摘された時期について、「外交上のやりとりであり、差し控える」としています。
新潟県など地元自治体には、7月27日から28日にかけて連絡したということです。

【不備指摘の背景】
今回、推薦書提出までの過程がこれまでとは異なっていました。
世界文化遺産の登録を目指す国は通常のスケジュールでは、まず、9月末までに暫定版の推薦書を提出します。
その後、ユネスコからの助言などを踏まえ、翌年の2月1日までに正式なものを提出するということです。
文化庁の審議会は例年、夏ごろに推薦候補を選定していますが、「佐渡島の金山」の推薦にあたっては、基準の見直しなどもあって、選定が冬にずれ込みました。
これに伴って、政府の決定も1月になり、暫定版は提出されず、最初から正式版が提出されました。
文化庁は「結果として、こうしたことが影響したという指摘もあろうかと思う」と話しています。

磯崎官房副長官「早い登録を目指し尽力していく」

磯崎官房副長官は、午前の記者会見で「誠に遺憾ながら、ユネスコでの審査をできるかぎり早期かつ確実に進め、登録を実現するため、推薦書を改めて提出することにした。ロシアによるウクライナ侵略を受けて世界遺産委員会のプロセスが遅れており、これからどのようなプロセスをたどっていくかは非常に流動的だ。できるだけ早い登録を目指し尽力していくという考え方に変わりはない」と述べました。

自民 議員連盟 細田衆院議員「情報共有なく非常に大きな問題」

世界文化遺産への登録の実現を後押しするための、自民党の議員連盟で事務局長を務める、衆議院新潟2区選出の細田健一衆議院議員は、記者団に対し「来年の登録に向けて、順調にプロセスを踏んでいるという認識だったので、大変驚いている。推薦書の不備についてユネスコから指摘を受けた、文部科学省も努力したと思うが、新潟県や佐渡市にも情報共有がなされておらず、非常に大きな問題がある」と述べました。

佐渡市 渡辺市長「情報を待って対応したい」

新潟県の「佐渡島の金山」の世界文化遺産への登録を目指して政府が提出している推薦書の不備を、ユネスコから指摘されたことを受けて、佐渡市の渡辺竜五市長が28日朝、報道各社の取材に応じました。

渡辺市長は27日夜に文部科学省から連絡があったとしたうえで、「推薦書の不備の考え方について国とユネスコとで協議しているという話であり、最善の方向に向けて取り組んでもらっていると思う。それ以上は情報を待って対応したい」と述べました。

そのうえで「われわれは何度もチャレンジして世界遺産審議会をクリアし、日本として世界文化遺産にふさわしいという認定をいただいている。私自身は諦めることはないし、この課題も今までと同じように乗り越えられると考えている」と述べました。

また、渡辺市長は午後の会見で、「率直にいって残念です。ただ、佐渡を世界遺産にするために今回、取り下げを含めて精査するという話だ。まだチャンスはあると思っているので、準備を進めるのが市町村の役割だ」と述べました。

そのうえで、渡辺市長は不備と指摘された申請書の内容について、「かなり細かい話もあるので、しっかり担当どうしで議論すべきだと思う。大きなことが抜けているということではない。少し細かい話だと聞いているが精査して発表できればと思う」と述べました。

一方、市民団体「佐渡を世界遺産にする会」の中野洸会長は、「残念としか言いようがありません。『佐渡を世界遺産にする会』も、ことしこそはという思いで活動してきたので、会員一同、相当落胆していると思います。島の住民全体が世界遺産にかけていると言っても過言ではないが、それがこういう結果になり、大きく落胆しているのではないかと思っています」と話しています。

新潟 花角知事「大変残念」

世界文化遺産への登録を目指す新潟県の「佐渡島の金山」をめぐり、政府がユネスコへの推薦書を提出し直すことになったことを受けて、新潟県の花角知事は28日午後、コメントを発表しました。

このなかで花角知事は「世界文化遺産登録の早期の実現を目指し、佐渡市とともに取り組みを進めていただけに、大変残念に思っています。推薦書の再提出に向け、国や佐渡市と連携して取り組みを進めていく」としています。