26年ぶり政府提出の全法案成立 党首討論は開催されず 通常国会
通常国会は6月15日に閉会し、26年ぶりに政府が提出したすべての法案が成立しました。
各党は、6月22日公示、7月10日投票の日程で行われる参議院選挙に向けて、事実上の選挙戦に入ります。
通常国会は会期末を迎え、衆参両院の本会議では閉会の手続きなどが行われ、150日間の会期を終えました。
通常国会では、「こども家庭庁」の設置法や、経済安全保障の強化を図る「経済安全保障推進法」、SNS上のひぼう中傷対策を強化するため、侮辱罪に懲役刑を導入する改正刑法など、政府が提出した61の法案すべてが成立しました。
政府提出のすべての法案が成立したのは戦後3回目で、橋本内閣の平成8年以来26年ぶりです。
また、憲法論議が活発に行われ、衆議院憲法審査会は過去最多の16回開かれ、オンラインでの国会審議をめぐる報告書をまとめました。
岸田総理大臣と野党党首による「党首討論」は、1度も開催されませんでした。
一方、国会議員に毎月100万円支払われ、文書交通費から名称が変わった「調査研究広報滞在費」は、日割り支給に改められたものの、使いみちの範囲や公開の在り方などは合意に至りませんでした。
国会の閉会を受けて、各党は、6月22日公示、7月10日投票の日程で行われる参議院選挙に向けて、体制の構築を図るなど、事実上の選挙戦に入ります。
活発な憲法論議も
通常国会では、与野党の憲法論議がこれまで以上に行われました。
憲法審査会の開催は、衆議院では16回に及び、2月以降はほぼ毎週行われ、1つの国会としては最も多くなりました。
背景には、ウクライナ情勢に伴う安全保障政策の在り方や、新型コロナの感染拡大を受けた緊急事態対応など、憲法に関わる議題が多かったこともあります。
衆議院の審査会ではオンラインでの国会審議について議論が進められ、3月には、憲法解釈によって例外的な実現が可能だという意見が多かったとする報告書をまとめました。
また、緊急事態における議員任期の延長の是非や、憲法9条を改正して自衛隊を明記するかどうか、それに憲法改正の国民投票を行う際の広告規制の在り方などについて意見が交わされました。
一方、参議院の審査会も7回開催され、選挙区の「合区」などをめぐって議論が行われました。
憲法をめぐっては、今回の参議院選挙でも、各党が公約に盛り込み、争点の1つになるものとみられ、憲法改正に前向きな勢力が、改正の発議に必要な3分の2の議席を確保するかどうかも焦点となります。
選挙の結果によっては、改正に向けた動きがより活発になることも予想されます。
【詳細】首相会見 感染症対策司令塔強化 「県民割」全国拡大へ
岸田総理大臣は、国会閉会にあたって記者会見し、新型コロナなど感染症対策の司令塔機能を強化するため「内閣感染症危機管理庁」を設置すると表明しました。
また、感染状況の改善が確認できれば、旅行代金の割り引きを受けられる観光需要の喚起策「県民割」を7月から全国に拡大する方針を明らかにしました。
エネルギーや食料価格の高騰について
この中で、岸田総理大臣は、エネルギーや食料価格の高騰について「わが国の消費者物価上昇はほとんどがエネルギーと食料品価格の上昇だ。まさにロシアによる価格高騰、『有事の価格高騰』だ」と強調しました。
そのうえで「ウクライナ危機の影響は価格だけにとどまらない。電気料金の上昇を抑制し、同時に電力需給の安定を確保する対策が必要だ」と述べ、省エネと節電を徹底する措置を早急に公表する考えを示しました。
また、輸入小麦の売り渡し価格について、10月以降も、輸入価格の高騰が続いている場合は、必要な措置を講じると説明しました。
さらに、政府内にみずからを本部長とする「物価・賃金・生活総合対策本部」を立ち上げ、物価や景気の状況に応じた迅速かつ総合的な対策に取り組む方針を示しました。
「県民割」7月前半から全国に拡大の方針 感染状況改善確認で
一方、岸田総理大臣は「新型コロナを乗り越え、平時に近い経済社会を取り戻す」と述べ、旅行代金の割り引きを受けられる観光需要の喚起策「県民割」を、感染状況の改善が確認できれば、7月前半から全国に拡大する方針を明らかにしました。
「内閣感染症危機管理庁」設置へ
そして、今後の感染症への対応として、国と地方が医療資源の確保などでより強い権限を持てるよう法整備を行うほか、地域の拠点病院に都道府県と協定を締結する義務を課すなどして必要な医療提供体制を確保し、有事には確実に稼働するよう担保する考えを示しました。
さらに、対策の司令塔機能を強化するため、新たに「内閣感染症危機管理庁」を内閣官房に設置するとともに、厚生労働省の関係する各部署を統合して省内に「感染症対策部」をつくることを発表しました。
また、「国立感染症研究所」と「国立国際医療研究センター」を統合し、アメリカのCDC=疾病対策センターの日本版を創設すると表明しました。
そして、17日に政府の対策本部で正式に決定する方針を示しました。
感染症対策の司令塔機能の強化について、岸田総理大臣は「有事と平時にそれぞれメリハリをきかせた体制をつくることを考えた。次の感染症拡大をはじめとする、さらなる危機に迅速かつ機動的に対応できるように体制をつくっていきたい」と述べました。
NATO首脳会議への出席明らかに 日本の首相で初
このほか、岸田総理大臣は、6月下旬にドイツで開かれるG7サミット=主要7か国首脳会議に続き、スペインで開かれるNATO=北大西洋条約機構の首脳会議に、日本の総理大臣として初めて出席することを明らかにしました。
出産育児一時金 大幅に増額する考え
また、「こども家庭庁」の設置法が成立したことを受け、直ちに設置に向けた準備室を立ち上げる方針を示したほか、出産費用を助成するため、現在は原則42万円が支給される「出産育児一時金」を大幅に増額する考えを示しました。
参院選 勝敗ライン「与党で過半数」
一方、参議院選挙について「コロナとのたたかいやロシアによるウクライナ侵略、世界的な物価高騰といった歴史を画するような課題に日本がどう挑戦するのかを、国民に判断いただく選挙だ」と述べました。
また、勝敗ラインについて「従来から非改選の議員も含めて、与党で過半数と申し上げている。自民党の公認候補はどの選挙区でも支持をいただけるよう全力で取り組むが、全体の数字としては与党で過半数だ」と述べました。
参院選「選挙公約の重点項目の1つに憲法改正掲げる」
そして「今回の参議院選挙でも選挙公約の重点項目の1つに憲法改正を掲げる。自民党の改正案の4項目はどれも現代的な課題で、国民生活を考えてもしっかり進めなければならず、できるだけ多くの国民にご理解いただけるよう、選挙などを通じて丁寧に説明し、結論を出すべく歩みを進めたい」と述べました。
予算編成「政策の特徴に合わせ規模や財源考える」
予算編成の在り方と財源について「財源は政策課題によってさまざまだ。新しい資本主義を進めるにあたって、多くの民間の投資を集める呼び水となる財政出動を国が行う形で全体を賄うことになる」と述べました。
また、増額を表明している防衛費について「厳しい安全保障環境の中で、国民の命や暮らしを守るために何が必要なのかを議論し、維持するためにはどれだけの予算が必要なのか、規模によって財源の在り方が変わってくる」と述べました。
そして「政策の特徴に合わせて予算の規模や財源を考えていく。さまざまな政策の組み合わせの中で、日本の財政全体も念頭に置きながら考えていきたい」と述べました。
日銀 “物価安定目標維”持へ努力続けることを期待
物価の高騰に関連し、記者団が「日銀の金融政策を修正する必要はあるか」と質問したのに対し、「日銀はさまざまな影響を総合的に判断して、金融政策を決めていくと理解している。具体的な金融政策は日銀が判断するものだが、物価安定目標を持続的、安定的に維持するために努力を続けていくことを期待している」と述べました。
日韓首脳会談「何も決まっていない」
NATO=北大西洋条約機構の首脳会議に合わせて、日韓首脳会談を行うかと問われたのに対し「何も決まっていない。東アジアの厳しい安全保障環境を考えれば、日米韓や日韓で戦略的な連携をしていくことは大変重要で、非常に厳しい状況にある日韓関係を放置しておくことはできないが、国と国との約束を守ることは国家間の関係の基本だ。日韓関係を健全な関係に戻すべく、日本の一貫した立場に基づいて意志疎通を図ることは重要だ」と述べました。
核兵器禁止条約の初の締約国会議「出席考えていない」
来週21日から開かれる核兵器禁止条約の初めての締約国会議に出席するかどうか問われ「まず唯一の同盟国であるアメリカとの信頼関係のもとに、現実的な核軍縮・不拡散の取り組みを進めるところから始めていくべきだ。それが、新時代リアリズム外交として適切だと判断し、会議には出席を考えていない」と述べました。
サル痘「必要であれば対応」
欧米を中心に患者の確認が相次いでいる「サル痘」について「日本では現在、感染は確認されていない。天然痘のワクチンが効果があると報告されており、わが国は相当量の国産ワクチンを備蓄している。WHOの検討状況を含め、科学的知見や諸外国の感染動向を注視し、必要であれば対応していく」と述べました。