成人年齢18歳に引き下げへ
来年度以降の成人式は…?

成人になる年齢はこの春、18歳に引き下げられますが、成人式については来年度以降も引き続き20歳を対象に行う自治体が多いことがNHKの取材でわかりました。

多くの自治体 来年度以降も20歳対象に実施

ことし4月、改正民法が施行され「成人」になる年齢がこれまでの20歳から18歳に引き下げられます。140年以上前に成人年齢が定められて以来、初めての変更です。

これを受けて来年度以降の成人式はどうなるのか、NHKが今月
▽全国の県庁所在地の市と
▽政令指定都市
▽それに東京23区の
合わせて74の自治体を対象に調べたところ「検討中」とした青森市を除くすべての自治体がこれまでどおり20歳を対象に実施することがわかりました。

対象年齢を変えない理由としてほとんどの自治体が挙げたのが「18歳にすると受験や就職の準備と式典の時期が重なり出席者が減ってしまう」で、このほか「飲酒や喫煙が可能になる20歳の節目に大人としての自覚を促したい」という声も聞かれました。

方針を決めるうえで若者などにアンケート調査を行ったという自治体も多くありました。
一方、法務省などによりますと18歳での開催を決めている自治体は三重県伊賀市など一部にとどまるとみられます。

引き続き20歳とする自治体の中には
▽式典の名称や内容の変更のほか
▽法律上、成人となる18歳の人たちへの対応を検討しているところもあり
「成人」の定義が変わる中、成人式の在り方が改めて問われることになりそうです。

東京 世田谷区はこれまでどおり20歳が対象

「成人式」の対象となる若者が毎年8000人ほどにのぼる東京 世田谷区は来年度の式典について「二十歳のつどい」などと名前を変えて、これまでどおり20歳を対象に行うことを決めました。

決定に当たって世田谷区ではおととし、若者たちの声を直接、区長などが聞いて議論を交わす場を設けました。

出席した若者からは
▽これまでどおり20歳での開催がよいという意見と
▽18歳での開催に変えたほうがよいという意見が
同じくらい出たといいます。

20歳のままがよいとする若者からは
▽1月は受験に没頭しているため出席が難しいという現実的な意見に加え
▽18歳で成人式となると大人になる準備期間があまりにも短いと感じるなど
これまでより早く成人を迎えることへの戸惑いも聞かれたということです。

一方、18歳がよいという若者からは
▽成人式が大人としての自覚を持つきっかけになるという声や
▽いずれ18歳成人が定着すれば成人式を20歳で行うことに疑問が出るので法改正に合わせて変えるべき
といった意見が出されたということです。

このほか区内在住の15歳から17歳の中高生を対象にしたアンケート調査で「20歳での開催が適当」という回答が75%にのぼったことなどを踏まえて、来年度以降も対象年齢は変えないと決めたということです。

ただ式典の内容をこれまでのお祝いを中心としたものから、若者への激励や地域社会への参加を意識するものに変更していくことにしています。

成人式を担当する区民健康村・ふるさと交流課の大谷昇課長は「成人から2年という時間を経て迎える式典になるので生まれ育った地域社会に自分たちがどう関わっていくのか考える場になればと思う。当面この形で実施してみて、若者の意識や社会の変化によっては検討し直す必要が生じるかもしれない」と話しています。

三重県伊賀市は成人式の対象を18歳に

三重県伊賀市は成人年齢の引き下げを踏まえ成人式の対象を18歳とする方針を決めています。

伊賀市によりますと、変わり目となる来年度は18歳、19歳、20歳の3つの年齢が対象となることから来年の
▽1月8日に20歳
▽3月19日に19歳
▽5月4日の「みどりの日」に18歳と
日程を分けて成人式を行うということです。

令和5年度以降は18歳のみを対象としますが、受験や就職活動への影響を避けるため新成人の多くが高校を卒業したあとの5月の大型連休中に開催することにしています。

18歳を対象とする理由について伊賀市は「行政が行う成人式は新成人が社会的責任を持って大人として生きることを自覚し、社会も新成人として迎え入れることを確認する場であるべきだ」としています。

市の方針に対し一部の市民からは反対する声もあがっていて、市民グループ「伊賀市の未来を考える勉強会」は
▽進学などで費用がかさむ時期に式が重なることで経済的負担が集中するほか
▽就職や進学で転居した人にとってはわずか1か月後に帰省が必要となり負担がかかるなどとして
従来どおり20歳を対象とするよう求める要望書や署名を市長に提出しています。

来年の成人式へ振り袖など予約相次ぐ

来年度から成人式の対象が18歳に引き下げられる三重県伊賀市では、呉服店に早くも来年の成人式に向けた振り袖などの予約が相次いでいます。

店によりますと、例年70人ほどに振り袖などを貸し出しているため3つの年齢が対象となる来年は3倍の200件余りの予約を見込んでいて、1年以上先の成人式に向けすでに100件を超す予約が入っているということです。

店では例年より広いスペースを確保して成人式が行われる時期ごとに衣装を分けて保管するなど管理の徹底を図っています。

呉服店の馬場澄子社長は「18歳成人式が決まって来年5月に式を迎える高校2年生がすでに来店しています。来年度はいつもの3倍の需要があるので商品をしっかりそろえていきたい」と話していました。

専門家「きちんと議論する必要がある」

成人式の歴史に詳しい上智大学の田中治彦名誉教授は、多くの自治体がこれまでどおり20歳を対象に式典を行うとしていることについて「国が18歳を成人と定めているのに市町村は20歳まで大人として認めないことになってしまう。当事者である若者や一般社会にも混乱を来すので成人式を何歳でやるかきちんと議論する必要がある」と指摘します。

そのうえで「人はいっぺんに大人になるわけではなく20歳も18歳も子どもから大人への通過点だ。その間に『自分は何をすべきか、どういう生き方をしていくか』考えてほしい。それこそ成人式の意味であり、成人式が何歳であろうと考えるべきことだと思う」と話しています。