ドローン 災害時に備え
全国の消防本部に配備へ

地震や豪雨など災害の被害状況を迅速に確認し被災者の救出につなげるため、総務省は全国の消防本部に動画の撮影などが可能なドローンを配備する方針を固めました。
購入費用の7割を交付税で措置する新たな仕組みを創設することにしています。

各地の災害現場では、二次災害の危険があるような場所でも迅速に被害状況が確認でき、被災している人の救出につながることからドローンの活用が進んでいます。

総務省によりますと、全国におよそ700ある消防本部のうちドローンを導入しているのは京都市や浜松市といった政令指定都市の消防本部など半数にとどまっているということです。

総務省は、予測が困難な豪雨などによる災害にも対応できる十分な備えが必要だとして、今後4年かけて、すべての消防本部に動画の撮影機能などを備えたドローンを配備する方針を固めました。

これまでのところ1機350万円程度のドローンの購入を想定し、消防本部が購入する費用の7割を交付税で措置する新たな仕組みを創設することにしていて、必要な経費を来年度予算案に盛り込む方向で詰めの調整を進めています。

また、配備が1機だけだと点検などで対応できない可能性もあるため、総務省では2機以上を配備するよう各消防本部に通知することにしています。

きっかけは熱海の土石流災害

今回の方針を固めたきっかけの一つは、ことし7月に発生した静岡県熱海市での土石流災害です。

土石流が起きた日に浜松市消防局のドローン部隊が応援に入り、発災から20時間後の翌朝、明るくなってから現場の撮影を行いました。

映像は、東京の総理大臣官邸や総務省消防庁など関係機関にもリアルタイムで送られ、捜索方針の判断材料になったということです。

ドローン部隊を指揮した浜松市消防局の塚田大二郎消防司令は「どれくらいの人が被害にあっているか、何軒くらいの家が被害にあっているかを把握し、土砂の流れた方向などを専門家に解析してもらうことで捜索範囲がかなり絞られてくる。今まではふかん的に現場を把握する方法が限られていたので、今後ドローンをさまざまな用途に活用できると期待している」と話していました。

また、去年7月の豪雨の際、熊本県芦北町で発生した工場火災や、去年9月の台風10号の際、宮崎県椎葉村で起きた土砂崩れでもドローンが活用されたということです。

1機350万円程度想定 “操縦できる職員の確保”課題に

災害で活用されるドローンは、動画を撮影できることや、防水機能を備えていることなどが必要になります。

こうした機種は数百万円で販売されているため、総務省では平均で1機350万円程度を想定しています。

また赤外線のセンサーがあれば熱を感知できるため山で遭難した人の発見や森林の火災などで燃え方が激しい場所の特定にもつながるということです。

1機が800万円程度で、撮影した画像をもとに災害現場の地図を自動で作成できる機能のついたドローンもあり、総務省は今回の取り組みとは別に今後、各都道府県に配備する方針です。

一方、課題もあります。ドローンは操縦に一定の技術が必要で、導入していても十分に活用できていないケースもあるということです。

総務省は消防本部の職員を集めた研修を行うなど、操縦できる職員の確保も同時に進めていくことにしています。

また、バッテリーが数十分しか持たない機種も多いということで、捜索活動などを長時間続けることが難しいという指摘もあります。