小山田圭吾さん
東京五輪作曲陣から辞任

東京オリンピックの開会式で、作曲の担当者の1人だったミュージシャンの小山田圭吾さんについて、大会組織委員会は作曲陣から辞任したことを発表しました。
小山田さんは、過去に雑誌のインタビューで明かした学生時代のいじめの告白をめぐり、批判が続いていて、大会の開幕4日前に辞任する異例の事態となりました。

「Cornelius(コーネリアス)」の名前で活動する小山田圭吾さんは、今月14日に組織委員会から東京オリンピックの開会式の作曲担当者の1人として発表されました。

しかしその後、小山田さんが20年以上前に雑誌のインタビューで明かした学生時代のいじめの告白をめぐって批判が相次ぎ、小山田さんは自身のホームページなどにおわびの文章を掲載したものの、批判が続いていました。

こうした中、小山田さんは19日、組織委員会に対し「依頼を受けたのは配慮に欠けていた」などとして辞任を申し出たということで、組織委員会はこれを了承し、作曲陣から辞任したことを発表しました。

組織委員会は、これまで小山田さんについて「行為は断じて許されるものではないが、開会式が迫る中、引き続き、準備に努めていただく」と、続投させることを表明していましたが、辞任の申し出を受け「これは誤った判断であるという考えに至った。多くの皆様に不快な思いをさせ、混乱を招いたことを心からおわび申し上げます」と了承した理由などを説明しています。

東京オリンピックは開会式が4日後に迫る中、その作曲の担当者が辞任する異例の事態となりました。

五輪開会式 小山田さんの曲使用せず 組織委

組織委員会の武藤事務総長は19日夜、報道機関の取材に応じ、4日後に迫る開会式で小山田さんの作った曲を使用しないことを明らかにしました。

小山田さんの曲は開会式の冒頭で4分ほど使われる計画でしたが、辞任を受けて差し替えることとし、残っている制作チームが検討を進めているということです。

小山田さん パラ開会式も取りやめ

また、小山田さんはパラリンピックの開会式にも関わる予定でしたが、こちらも取りやめとなりました。

組織委員会は、小山田さんの過去の言動について把握していなかったということで、武藤事務総長は「小山田さんの謝罪が社会に受け入れてもらえず、組織委員会が過去の言動についてチェックできなかったことも判断を誤った理由だ。大変深く反省し、おわびしたいと思います」と述べました。

障害者の家族団体が声明発表

知的障害者の家族で作る「全国手をつなぐ育成会連合会」は今回の問題を受けて声明を発表しました。

声明では、まず前提として「いじめというより虐待、暴行と呼ぶべき所業で、ターゲットが反撃される可能性が少ない障害のあるクラスメイトだったことからも強く抗議する」としています。

そのうえで「年代を考慮すると行き過ぎた言動はあるかもしれないが、成人し著名なミュージシャンとなったあとに、面白おかしく公表する必要性はなかった。発言では明らかに障害者を差別的に揶揄している部分も各所に見受けられ、この時点では反省していないばかりか、一種の武勇伝のように語っている様子が伺える」と問題視しています。

そして「今回の事案により東京大会を楽しめない気持ちになった障害のある人や家族、関係者が多くいることを強く指摘しておきたい」としています。

声明を出した「全国手をつなぐ育成会連合会」の又村あおい常務理事は、「最初に記事を読んだときはショックや憤りなど様々な感情がわきあがってきた。障害のある人はそうした被害を受けやすいことが残念ながら、改めて浮き彫りになった」としています。

そのうえで、「小山田氏は謝罪文を公表したがこれをもって真摯(しんし)な説明がなされたとは受け止められない。また組織委員会も『いかなる差別も禁じる』という五輪憲章の理念に照らして、なぜふさわしいと考えて起用し今回も退任を求めないのか、説明が必要だ。両者とも記者会見のような公式な場でしっかり説明すべきだと思う」としています。

いじめ発言を掲載した雑誌の編集長が謝罪

ミュージシャンの小山田圭吾さんの過去のいじめに関する発言を掲載した雑誌の一つ「ロッキング・オン・ジャパン」でインタビューを担当した山崎洋一郎編集長は、会社のホームページで18日謝罪しました。

山崎さんは当時も編集長を務めていて「インタビュアーとしての姿勢、それを掲載した編集長としての判断、その全てはいじめという問題に対しての倫理観や真摯(しんし)さに欠ける間違った行為であると思います。27年前の記事ですが、それはいつまでも読まれ続けるものであり、掲載責任者としての責任はこれからも問われ続け引き受け続けなければならないと考えています。傷つけてしまった被害者の方およびご家族の皆様、記事を目にされて不快な思いをされた方々に深くお詫び申し上げます」と謝罪しています。

「いじめ あってはならず」加藤官房長官

加藤官房長官は19日午前の記者会見で「障害の有無にかかわらず、いじめや虐待はあってはならない行為だ。政府として共生社会の実現に向けた取り組みを進めており、こうしたことに照らしても全く許されるものではない」と述べました。

そのうえで「菅総理大臣は東京大会では共生社会の実現に向けた心のバリアフリーの精神をしっかり伝えたいと話しており、そのことに何ら変わることはない。その点も踏まえて組織委員会で適切な対応をとっていくことが必要だ」と述べました。