都内 「木密」不燃化対策
指標は70%に達せず

東京都は首都直下地震への備えとして、木造住宅の密集地で火災が燃え広がらないようにするため、住宅の建て替え支援などを進めていますが、まちの燃えにくさを示す指標は対策が進められている地域の平均で市街地の延焼の危険性がほぼなくなるとされる70%には達していません。

首都直下地震への備えを進めている東京都は、木造住宅が密集する20の区の28地域を「整備地域」に指定して火災が燃え広がらない対策として老朽化した住宅の撤去や建て替え費用の助成などを行っています。

また、「整備地域」では、用地を買収して道路を作ったり拡幅したりして延焼を遅らせ、避難や消防活動のスペースを確保する重点対策を進めています。

こうした対策でまちの燃えにくさを示す指標、「不燃領域率」は28の「整備地域」の平均で東日本大震災直後の2011年度に58.4%だったのが2018年度に63%となりました。

しかし、市街地で延焼の危険性がほぼなくなるとされる70%には達していません。

また、地域ごとにみても70%を超えているのは、28のうち4地域にとどまっています。

都は、「土地の複雑な権利関係などで対策が難しい地域もあるが区とともに住民の理解を得ながら取り組みを進めたい」と話しています。

70%に達しているのは4地域

まちの燃えにくさを示す「不燃領域率」は、鉄筋コンクリートなど燃えにくい建物の割合や、延焼を遮断する道路や公園などが占める割合などから算出します。

「不燃領域率」が70%に達すると市街地で延焼の危険性がほぼなくなるとされていますが、都が対策を進めている28の「整備地域」で、2018年度に70%に達しているのは4地域にとどまっています。

4地域のうち、「不燃領域率」が最も高いのは、台東区の「浅草北部地域」で74.0%です。

次いで、▽文京区と豊島区にまたがる「東池袋・大塚地域」で73.7%、▽豊島区と北区、板橋区にまたがる「池袋西・池袋北・滝野川地域」が71.6%、▽江東区の「北砂地域」が71.0%となっています。

このほかの24地域はいずれも70%を下回っています。

▽大田区の「大森中地域」は65.5%、
▽大田区の「西蒲田地域」は66.6%、
▽大田区の「羽田地域」は52.1%、
▽目黒区と品川区、大田区にまたがる「林試の森周辺・荏原地域」は60.3%、
▽世田谷区の「世田谷区役所周辺・三宿・太子堂地域」は59.6%、
▽世田谷区と渋谷区にまたがる「北沢地域」が56.1%、
▽新宿区、中野区、渋谷区、杉並区にまたがる「南台・本町・西新宿地域」は64.1%、
▽杉並区と中野区にまたがる「阿佐谷・高円寺周辺地域」が54.1%、
▽中野区と杉並区にまたがる「大和町・野方地域」が57.2%、
▽新宿区と豊島区にまたがる「南長崎・長崎・落合地域」が63.0%、
▽豊島区と板橋区、練馬区にまたがる「大谷口周辺地域」が67.2%、
▽文京区と台東区、荒川区にまたがる「千駄木・向丘・谷中地域」が65.5%、
▽豊島区と北区にまたがる「西ヶ原・巣鴨地域」が62.2%、
▽北区の「十条・赤羽西地域」が55.8%、
▽北区の「志茂地域」が56.6%、
▽台東区と北区、荒川区にまたがる「荒川地域」が69.1%、
▽足立区の「千住地域」が59.6%、
▽足立区の「西新井駅西口一帯地域」が58.7%、
▽足立区の「足立地域」が62.0%、
▽江東区と墨田区にまたがる「墨田区北部・亀戸地域」が65.9%、
▽江戸川区の「平井地域」が64.0%、
▽葛飾区の「立石・四つ木・堀切地域」が62.1%、
▽葛飾区と江戸川区にまたがる「松島・新小岩駅周辺地域」が66.5%、
▽江戸川区の「南小岩・東松本地域」が55.7%となっています。

東京大学 廣井悠准教授「継続的な積み重ねを」

木造住宅が密集する地域での不燃化の取り組みについて、都市防災に詳しい東京大学の廣井悠准教授は、「木密地域には高齢者が多く暮らしていて、住宅を建て替えようというモチベーションは低くなる。不燃化はすぐに進む事業ではなく、時間がかかることを前提として地域の実情に合わせた継続的な積み重ねが重要だ」と話しています。

そのうえで、「リスクは『ゼロ』にはならないので、不燃領域率が70%に届いたからといって何もしなくていいわけではない。地域の防災力を高め、いち早い避難や出火防止、初期消火などもきちんと行えるよう準備しておく必要がある」と指摘しています。