東京電力など青森に建設中
中間貯蔵施設“審査合格”

原子力発電所の敷地にたまり続ける使用済み核燃料を一時的に保管するため、東京電力などが青森県に建設中の中間貯蔵施設について原子力規制委員会は規制基準に適合しているとして審査に合格したことを示す審査書を取りまとめました。

中間貯蔵施設は、原発の貯蔵プールにたまり続ける使用済み核燃料を一時的に保管するための施設で、東京電力と日本原子力発電が青森県むつ市に建設中です。

6年前から原子力規制委員会が新しい規制基準に適合しているか審査し、ことし9月には事実上の合格を示す審査書案を取りまとめていました。

そして11日、一般から意見を募るパブリックコメントが議論され、核燃料を入れる容器が地震や津波に耐えられるかなどの質問があったことが報告されました。

これについて、規制委員会は容器の強度などから安全性は確保されるとの見解を示し、規制基準の審査に合格したことを示す審査書を正式に取りまとめました。

中間貯蔵施設は、使用済み核燃料およそ3000トンを保管する容量があり、対策工事を終えた後、来年度中の操業開始を見込んでいます。

使用済み核燃料をめぐってはほかの電力会社の原発でも貯蔵プールの容量が限界に近づいていて各社、貯蔵施設を確保するための対応に追われています。

規制委 更田委員長「高い意識持って運用を」

青森県むつ市で建設中の使用済み核燃料の中間貯蔵施設に関して審査に合格したことを示す審査書を取りまとめたことについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長は、11日の会見で「原発の貯蔵プールである程度冷却された使用済み核燃料が保管される施設なので貯蔵量は多くなるが、安全上の議論になるところはそれほど多くはなかった。しかし、津波によって本当に核燃料の保管に影響がないのかといった論点があり、申請からおよそ6年かかった」と述べました。

そのうえで、「核物質の防護が重要な施設なので、事業者には社員への教育などを行いながら、高い意識を持って運用してほしい」と指摘しました。

運営会社「最初のステップ」

使用済み核燃料の中間貯蔵施設を運営するリサイクル燃料貯蔵の赤坂吉英常務取締役は「本日、審査に合格したが、このあとも設備の耐震性などの書類のチェックといった手続きがまだまだ残っているので、最初のステップと思ってこれからも頑張っていきたい」と述べました。

そのうえで、操業の開始時期について、「来年度の見込みと申請していてまだ変更する考えはないが、書類のチェックの進み方次第で改めて見極めたい」と述べました。

中間貯蔵施設と核燃料サイクル政策

使用済み核燃料の中間貯蔵施設は、国が進める「核燃料サイクル政策」で当初、想定されていなかった施設です。

電力各社は全国各地の原発の運転で発生した使用済み核燃料を青森県六ヶ所村の再処理工場に運び、処理していく予定でした。

ところが、再処理工場はトラブルや不祥事などで完成時期が繰り返し延期され、現在の完成予定は再来年度となっていて、まだ処理ができない状況です。

このため、各地の原発の貯蔵プールには再処理工場に運び出しができない使用済み核燃料がたまり続ける状態になっています。

廃炉になる福島県内の原発を含めて、全国の原発の貯蔵プールの容量は合わせて2万1400トンありますが、電気事業連合会のことし9月時点の集計ではおよそ75%に当たる1万6060トンがすでに埋まっています。

貯蔵プールがいっぱいになると原子炉から燃料を取り出せなくなり、運転継続が難しくなるため使用済み核燃料を一時保管する新たな施設、つまり、中間貯蔵施設が必要になったのです。

11日審査に合格した青森県に建設中の中間貯蔵施設は東京電力と日本原子力発電の使用済み核燃料が対象です。

この2社以外の電力会社でも貯蔵施設の確保に動いていますが、福島の原発事故後すでに原発が再稼働している関西電力、九州電力、そして四国電力は問題がより切実です。

九州電力と四国電力は原発の敷地の中に新たに貯蔵施設を作る計画を示しています。

関西電力は東京電力などと同様に原発が立地する福井県以外の場所に中間貯蔵施設をつくる方針で、ことし中に候補地を示すとしています。

福井県知事は原発の再稼働に同意する前提として候補地の提示を求めています。