月の訪日韓国人旅行者
去年の約3分の1に

日韓関係が悪化する中、先月、日本を訪れた韓国人旅行者は推計で19万人余りで、去年の同じ月と比べて65.5%減少し、8年前の東日本大震災の直後以来の大幅な落ち込みとなりました。これが響いて全体の外国人旅行者数も2か月ぶりに減少しました。

日本政府観光局によりますと先月、日本を訪れた韓国人旅行者は推計で19万7300人で去年の同じ月と比べて65.5%減少しました。

この減少幅は、東日本大震災が起きた直後の2011年4月に66.4%のマイナスになって以来、8年6か月ぶりのことで、日韓関係の悪化に伴って日本への旅行を控える動きや航空便の減便が続いていることが要因です。

この結果、先月日本を訪れた外国人旅行者は、全体で推計249万6600人と、去年の同じ月より5.5%減少し、2か月ぶりにマイナスとなりました。

先月はラグビーワールドカップ日本大会の開催でイギリスやアイルランド、それに南アフリカなど出場国からの旅行者が大きく伸びたものの、韓国人旅行者の大幅な減少と台風による航空便の欠航が響いた形です。

政府は2020年に外国人旅行者の数を4000万人に増やす目標を掲げていますが、国と地域別で去年は2番目に多かった韓国からの旅行者の減少に歯止めがかからず、今後の影響が懸念されます。

韓国人以外の観光客増やそうと取り組み

韓国人旅行者が減少するなか、これまで韓国人が多く訪れていたホテルや旅館では、ほかの国や地域から観光客を取り込もうという動きが出始めています。

山あいの温泉地として知られる大分県九重町の宝泉寺温泉では、別府や湯布院、熊本県の阿蘇など人気の観光地に近く韓国人ツアー客の宿泊地として人気を集めてきました。

創業から120年以上の歴史があるホテル「湯本屋」も、ことしの夏前までは宿泊客のおよそ7割を韓国人旅行者が占めていました。しかし、日韓関係の悪化で、ことし6月ごろから韓国人ツアーのキャンセルが相次ぐようになり、紅葉が見頃を迎え、例年だとかき入れ時となる今月も予約数は前の年の半分ほどに落ち込んでいます。

こうした中、このホテルでは、これまでターゲットにしていた韓国人以外の国や地域からの観光客を増やそうと新たな取り組みを始めています。

夕食を提供していた宴会場は、大広間で畳に座ってもらうスタイルから、いすとテーブルを置いた個室へと改装しました。畳に座って食事をするスタイルに慣れていない人や、個人や少人数で旅行を楽しむ人たちを引き付けるためです。

さらに、この秋からは英語もできるバングラデシュ人を従業員として採用し、より多くの国や地域の旅行客をもてなせるよう体制を整えました。

ホテルでは、今後、韓国以外の国や地域への営業活動も強化することにしていて、経営者の矢野敏朗さんは今月、ベトナムに赴いて旅行会社を回るほか、現地の人の意見を聞いてベトナム人観光客のニーズを探ることにしています。

矢野さんは「韓国で日本製品の不買運動が広がっているという話を耳にはしていたが、旅行者にここまで影響が出るとは、正直、思っていなかった。いろいろな国からお客さんに来ていただけるようリサーチを重ねて、韓国に代わる次のターゲットを開拓していきたい」と話していました。

観光庁長官「多くの国々から来ていただくことが重要」

観光庁の田端浩長官は、記者会見で日韓関係の悪化や抗議活動が続く香港などを念頭に「社会情勢でさまざまな国々で旅行者の浮き沈みがあることもあるが、多くの国々から来ていただくことが重要だと思っているので、観光政策としてさまざまな国や地域からの誘致に取り組んでいきたい」と述べました。

日韓関係 日本企業の業績にも影響

日韓関係の悪化は、韓国の不買運動などを背景に、日本企業の業績にも影響を与えています。

このうち韓国で人気の高いスポーツ用品大手の「デサント」は、ことし9月までの3か月間の韓国での売り上げが前の年の同じ時期より30%程度減少しました。

デサントは、韓国での販売が全体の売り上げのおよそ半分を占めていて、来年3月期の営業利益の見通しをこれまでの80億円から11億円へと大幅に下方修正しました。

一方アパレルでは、大手衣料品チェーン「ユニクロ」の韓国での事業のことし8月までの1年間の決算は、不買運動の影響を受け、前の年の増収増益から減収減益に転じました。

また「23区」などのブランドを展開するアパレル大手の「オンワードホールディングス」は、日韓関係の悪化の影響もあって、韓国にあるゴルフウェアブランドを扱うすべての店舗を閉鎖して、市場から撤退すると発表しています。

化粧品メーカーの「資生堂」は、ことし9月までの3か月間の韓国での売り上げが前の年の同じ時期よりも30%程度減少しました。

このほか、韓国で輸入ビールのトップシェアを占める「アサヒ」は、主力のビールの売り上げが大きく落ち込んでいて、ことし7月からテレビコマーシャルの放送を取りやめているということです。

ラグビーW杯出場国からの観光客は増加

ラグビーワールドカップが日本で初めて開催されたことから、期間中に出場国から訪れた外国人旅行者数は、前の年の同じ時期に比べていずれの国も増加しました。

日本政府観光局によりますと、ラグビーワールドカップに出場した国から訪れた外国人旅行者数は、先月までの2か月間で推計76万4100人と前の年の同じ時期に比べて30%近く増えました。

このうち、優勝した南アフリカからの旅行者は、9500人と5倍近くに増えたほか、日本と1次リーグで対戦したアイルランドからも2万1200人とおよそ5.5倍に増加しました。

また、スコットランド、イングランド、ウェールズを含めたイギリスからは、11万8000人と、およそ85%の大幅な増加となりました。

観光庁の田端浩長官は記者会見で、「全国各地が会場となり、地方に長期滞在する人も多かったため、住民との国際交流が図られて、とてもよい機会になった。こうした成果を、来年の東京オリンピック・パラリンピックにつなげていきたい」と述べました。