認知症基本法が成立 「希望持って暮らせるように」

認知症の人が希望を持って暮らせるように国や自治体の取り組みを定めた認知症基本法が参議院本会議で全会一致で可決・成立しました。

国内の認知症の人は、厚生労働省の研究班の推計で、年々増加傾向にあり、2025年には、およそ700万人になるとされています。

認知症基本法では、認知症の人が尊厳を保持し、希望を持って暮らせるよう国に対し、総理大臣が本部長の「認知症施策推進本部」を設け、家族も含めて意見を聞いて基本計画を策定することを義務づけています。

また、認知症の人が生活しやすいように国や地方自治体に移動の交通手段の確保や地域での見守り体制の整備などを求めています。

さらに、住んでいる場所にかかわらず適切な医療を受けられるよう、医療機関の整備を図るための施策を講じることや、認知症の人が利用しやすい製品の開発や普及なども求めています。

14日の参議院本会議で法案の採決が行われ、全会一致で可決・成立しました。

松野官房長官 “法律成立の意義 極めて大きい”

松野官房長官は、14日午前の記者会見で「高齢化の進展に伴い、認知症の方が増える中、法律が成立する意義は極めて大きい。今後、共生社会の実現に向けて認知症施策を進めるという法律の趣旨を踏まえ、取り組みを進めていきたい」と述べました。

専門家「高齢社会を支える大事な基本理念」

認知症基本法について専門家はどう見ているのか。

認知症の人や介護する家族について長年研究してきた北海道医療大学の中島紀惠子名誉教授に聞きました。

「人権宣言につながるような人間の自由と平等に関することが定められ、認知症やその家族だけでなく、国民も自治体も家族もみながそれなりの責務を持ち共生社会を築こうという、日本の高齢社会を支える大事な基本理念が書かれてあり、精神的な支柱ができたと評価できる」

その上で、「認知症の本質的な特徴は社会環境や生活状況、人との関わり方が記憶障害に影響を与え、症状が良くも悪くもなりうることです。だからこそ、皆で支え合う社会をこの基本法に沿って作っていく必要があると思います」と話していました。