【詳しく解説!】
クアッドってなに?焦点は?

クアッドとは

クアッドは、自由や民主主義、法の支配といった基本的価値を共有する日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国の枠組みです。
2004年のインドネシア、スマトラ島沖の巨大地震と津波の被害に対する国際社会の支援を4か国が主導したことをきっかけに、2019年に初めての外相会合が開かれました。

中国が覇権主義的な動きを強めていることもあって、バイデン大統領はこの枠組みを重視。
去年3月にはオンライン形式で、その半年後には対面での首脳会合が開かれました。
対面での会合はそれ以来で2回目となります。

一方、4か国の動きについて、中国外務省の報道官は「クアッドは時代遅れの冷戦思考に満ちており、軍事的な対抗の色彩が強く、時代の流れに逆行し、人々の支持を得られない」とけん制しています。

5月24日 東京で開催

今回のクアッド首脳会合は5月24日に東京で開催されます。

これを前に総理大臣官邸のホームページに開設された特設サイトでは、クアッドの首脳がこれまでに対面で1回、オンラインで2回開いた会合の内容や、それぞれの会合で出された共同声明などが紹介されています。

内閣広報室によりますと、国内で開かれる国際会議で総理大臣官邸のホームページに特設サイトを立ち上げたのは、G7=主要7か国とG20=主要20か国の首脳会議以外では初めてだということです。

警視庁は都内の各地で警戒を強化しています。

19日は会場や大使館の周辺などで車両検問を行いました。

警視庁は、クアッドの首脳会合が開かれる24日にかけて、検問の実施場所を増やすなど警戒をさらに強化することにしています。

今回の首脳会合の焦点は

今回の首脳会合で、4か国は、幅広い分野での連携を強化する方針で一致する見通しです。
これまで、ワクチンをはじめとする新型コロナ対策、気候変動、宇宙、サイバー、インフラ、重要・新興技術の6分野で作業部会を立ち上げていて、それぞれの進捗状況を確認し、さらなる協力に向けた話し合いが行われるものとみられます。

地域情勢をめぐっても意見が交わされ、覇権主義的な動きを強める中国などを念頭に、法の支配に基づく国際秩序を維持するとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取り組みをいっそう推進していく方針を確認する見通しです。

さらに、弾道ミサイルの発射を繰り返し、長距離弾道ミサイルの発射や核実験に踏み切る可能性が指摘されている北朝鮮への対応でも、連携を確認するものとみられます。

一方、ウクライナ情勢をめぐっては、人道支援のあり方などについて意見が交わされる見通しです。
岸田総理大臣は、3億ドルの追加の借款など日本の対応を説明し、G7=主要7か国などと連携しながらウクライナへの支援を継続する方針を強調することにしています。
ただ、インドは、ロシアと伝統的な友好関係にあり、国連でのロシアに対する非難決議案の採決でも棄権するなど、ウクライナ情勢をめぐる立場が異なっています。
このためロシアによるウクライナへの軍事侵攻も念頭に世界のいかなる地域でも力による一方的な現状変更は認められないという認識を共有できるかが焦点の1つとなります。

共同声明で中国念頭に海洋秩序への挑戦に対抗を明記へ

今回のクアッド首脳会合では、議論の成果を盛り込んだ共同声明が発表される見通しです。自由で開かれたインド太平洋への強固な関与を確認し、中国を念頭に、ルールに基づく海洋秩序への挑戦に対抗していく方針を明記する方向で調整が進められています。

共同声明には、自由で開かれたインド太平洋への4か国の強固な関与を確認し、自由や法の支配に加え、主権と領土の一体性などの原則を強く支持するとともに、これらの原則をほかの地域でも推進する立場が盛り込まれる方向です。

そのうえで、地域情勢に関して、中国が海洋進出の動きを強めていることを念頭に、ルールに基づく海洋秩序への挑戦に対抗し、国際法を順守する重要性を明記することが検討されています。

また北朝鮮をめぐって、朝鮮半島の非核化や、拉致問題の即時解決の必要性を確認し、情勢の不安定化をもたらす核・ミサイル開発を非難する見通しです。

共同声明ではインド太平洋地域での協力の在り方も盛り込まれ、
▽今後5年間でインフラ整備へのさらなる支援や投資を行う方針や、
▽気候変動問題に対応する新たな枠組みの立ち上げ、
それに
▽日米豪印4か国の衛星データを各国に提供するなど宇宙分野の協力の仕組みの創設などが盛り込まれる見通しです。

オーストラリアと日本の関係は

日本とオーストラリアは、中国による覇権主義的な行為や海洋進出の脅威に対する懸念を共有し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指しています。

このため、防衛技術の共同研究や、自衛隊とオーストラリア軍による共同訓練などを通じ、安全保障面での連携を加速してきました。

ことし1月に、両国の首脳は、共同訓練の際に互いに部隊を派遣しやすいよう、法的地位や手続きなどをあらかじめ取り決めておく「円滑化協定」に署名しました。

さらに、両政府は、サイバーや宇宙分野といった、より幅広い防衛分野や、サプライチェーンを含めた経済安全保障面まで連携を広げるための新たな共同宣言の発出に向け、作業を進めています。

一方、中国は先月、南太平洋のソロモン諸島と安全保障に関する協定を結び、インド太平洋地域への影響力を強めようとする動きを見せていて、日本としては、日豪両国の結束をさらに強固にしたい考えです。

労働党アルバニージー党首が首相就任 クアッド会合出席へ

オーストラリアで21日行われた総選挙で、議会下院で第1党となる見通しになった労働党のアルバニージー党首が23日、連邦総督の前で宣誓を行い、首相に就任しました。

21日の選挙の開票作業はまだ続いていますが、公共放送のABCなど地元メディアはアルバニージー氏率いる労働党が下院で第1党となることが確実になったとしていて、オーストラリアでは9年ぶりに政権が交代し、労働党政権が発足することになりました。

首相に就任したアルバニージー氏はこのあと日本に向かい、24日、東京で行われる日本、アメリカ、オーストラリアそれにインドの4か国の枠組み「クアッド」の首脳会合に出席する予定です。

インドと日本の関係は

日本は、14億近い人口を擁し、経済成長を続けるアジアの大国、インドを特別な戦略的パートナーと位置づけています。
首脳による相互往来も10年以上続いています。

モディ首相の今回の日本訪問は、ことし3月の岸田総理大臣のインド訪問を受ける形となり、首相としての来日は、5回目です。

日本は、インドとの間で、経済や開発面での結びつきだけにとどまらず、中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指して、外務・防衛の閣僚協議「2プラス2」を設けるなど、安全保障面での協力強化も図っています。

また、ウクライナ情勢をめぐっても、自由や民主主義などの価値観を共有するパートナーとして、2国間やクアッドなどを通じ、連携を強めたい考えです。

ただ、ウクライナ情勢をめぐっては、両国の立場が異なることから、今回、どのようなやりとりが交わされるかも注目されます。

去年のクアッドは

去年のクアッド首脳会合は9月25日にアメリカの首都ワシントンのホワイトハウスで開かれ、日本から菅総理大臣(当時)、アメリカのバイデン大統領、オーストラリアのモリソン首相、インドのモディ首相が出席しました。
対面で行われるのはこのときが初めてでした。

4人の首脳は覇権主義的な行動を強める中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて基本的価値を共有する4か国のコミットメントを再確認し、引き続きさまざまなパートナーとの連携を広げ、具体的な協力を積み上げていくことで一致しました。

また新型コロナウイルス対策で、ワクチンの生産拡大やインド太平洋地域への供給を含め協力していくことを確認しました。

さらに、インフラや宇宙、サイバー、クリーンエネルギーなどの分野でも協力を強化していくことで一致し、高速大容量の5Gなどの重要技術についても技術の設計や開発、利用などの原則に関する声明を採択し、連携をさらに強化することになりました。

一方、気候変動の問題で菅総理大臣は、アメリカが主導する「メタン」の世界的な排出量を削減する取り組みへの参加を表明しました。

そして、4人の首脳は協力のさらなる発展に向けて首脳会合を毎年行うことで合意しました。

東シナ海や南シナ海の情勢をめぐり、菅総理大臣は中国を念頭に、力を背景とした現状変更の試みに深刻な懸念を表明し、4人の首脳は国際法をはじめとするルールに基づく海洋秩序への挑戦に対応するため、連携していくことを確認しました。

菅総理大臣は香港や新疆ウイグル自治区の状況に懸念を表明したほか、台湾をめぐる問題についても「台湾海峡の平和と安定は重要だ」とする日本の立場を伝えました。

北朝鮮に対しては、4人の首脳は国連安保理決議の義務に従い、挑発行動を控えるとともに、実質的な対話を行うよう求めることで一致しました。

さらに、中国や台湾がTPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入を申請したことを踏まえ、インド太平洋地域の今後の国際秩序の在り方をめぐっても意見を交わしました。

一方、菅総理大臣は首脳会合の冒頭、アメリカが東京電力福島第一原子力発電所の事故のあとから続けていた日本の食品の輸入規制を撤廃したことについて「東日本大震災の復興を後押しする大きな一歩だ」と述べ、バイデン大統領に謝意を伝えました。

そして首脳会合のあと、議論の成果を盛り込んだ共同声明などが発表されました。