としの政治を一目で!
「政治カレンダー」

ことしは「ね年」です。
戦後の「ね年」は過去に6回。そのうち実に5回で、総理大臣の交代が起きていることをご存じでしょうか。果たして、ことしの政局は?
一目で分かる「政治カレンダー」に沿って、与野党のキャップが解説します。
(広内仁、太田雅志)

焦点はどこだ?

1月:「通常国会」召集 波乱は…

号砲が鳴るのは、1月20日。通常国会が召集されます。
会期は、6月17日までの150日間。東京都知事選挙やオリンピックが控えているため、与党内では、「会期の延長は難しい」という声が聞かれます。

このため、政府は、提出法案を50本余りに絞り込み、確実な成立を期す方針です。
短時間労働者への厚生年金の適用拡大などを柱とする年金制度改革の関連法案などが焦点となりそうです。

通常国会で、まず、政府・与党は、経済対策などを盛り込んだ補正予算案新年度予算案を早期に成立させ、経済の下振れリスクに備えたいとしています。また、自民党は、安倍総理が意欲を示す憲法改正の実現に向けて、国民投票法改正案を成立させ、議論を加速させたい考えです。

一方の野党側。
国会論戦で追及のテーマに挙げるのが、「IR」、「中東派遣」、「桜」の3つです。

・自民党に所属していた現職議員が逮捕されたIR=統合型リゾート施設をめぐる汚職事件
・アメリカとイランが対立する中での中東への自衛隊派遣
・去年の臨時国会から追及を続けている総理大臣主催の「桜を見る会」

野党側は、いずれも安倍総理は説明責任を果たしていないと批判を強めています。

自民党のある幹部は、「会期中にどんな問題が出るか分からず、緊張感を持って臨まなければならない」とも。

その前に…国会までに結論は? 野党合流

波乱含みの国会。でもその前に、焦点となっているのが、立憲民主党と国民民主党の合流です。

両党は、去年12月末、幹事長レベルでは合流させる方向で一致。
しかし、ことしに入って枝野代表と玉木代表の間で意見の違いが表面化し、政策のすりあわせや党名などをめぐり、議論は平行線となっています。

枝野氏と玉木氏は、連日、党首会談を重ねるものの合意には至らず、いったん、それぞれの党で議論を行うことになりました。一致結束し、足並みをそろえて通常国会に臨みたいとする野党側。

国会の召集までに合流について結論を出せるのでしょうか。

2月:自衛隊の護衛艦が中東に

衆議院で予算審議がヤマ場を迎えるのは2月。
その2月に、護衛艦「たかなみ」が中東に派遣される予定です。

安倍総理は、「情報収集態勢を強化するため、自衛隊を派遣し、日本関係船舶の航行の安全を確保していく」と述べています。自民党内でも、「こうした状況だからこそ、情報収集のための自衛隊派遣は行うべきだ」といった意見が相次いでいます。

一方、野党側は、「自衛隊を派遣する閣議決定をした時と状況が変わっている」として、派遣の決定を撤回するよう求めています。

国会論戦の大きなテーマになるのは必至です。

春:中国の習主席が訪日

春には、中国の習近平国家主席が国賓として日本を訪れる予定です。

安倍総理は、先月の記者会見で、「日中両国は、アジアや世界の平和、安定、繁栄に対する大きな責任を有しており、習主席の国賓訪問を、その責任を果たす意志を明確に内外に示していく機会としたい」と述べています。

ただ、与野党の間からは、中国当局による日本人の拘束や、沖縄県の尖閣諸島の沖合で中国海警局の船による領海侵入などが相次いでいることを受けて、政府は、中国側に対応を求めるべきだという意見が出ています。

北朝鮮の問題について、どこまで突っ込んだ議論が行われるのか、また、東シナ海をめぐる問題などで改善を見いだせるかが焦点となります。

そして、1972年の日中共同声明や、1978年の日中平和友好条約など、日中でこれまでに交わした「4つの政治的文書」(※記事末に注)に加え、「日中新時代」を打ち出すための「第5の文書」を作成するのかどうかも注目されています。

4月:韓国で総選挙が

4月15日には、韓国で総選挙が行われます。

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、トゲが刺さったままの日韓関係。
1年3か月ぶりとなった先月下旬の日韓首脳会談では、「徴用」をめぐる問題について、早期解決に向け、対話を継続することで一致したものの、ムン・ジェイン大統領は輸出管理の問題などと絡めて解決を図るよう求め、日本側との認識の違いが改めて浮き彫りになりました。

政府内では、「総選挙を控え、ムン・ジェイン政権は、振り上げた拳を簡単に下ろすことはできない」という見方が出ています。

一方で、「韓国側に日本との対話を模索する雰囲気が出てきている」という指摘も。解決策が示されるのか、与野党ともに、韓国側の対応を注視することになりそうです。

4月末:政局を占う補選

4月26日、衆議院静岡4区では、自民党の望月義夫元環境大臣の死去に伴い、補欠選挙が行われます。

国会論戦を踏まえ、与野党に審判が下される場となります。

自民党は、公募で候補者を決める方針。
これに対し、立憲民主党と国民民主党が候補者の擁立を調整していて、野党の統一候補として戦いたい考え。

その後の政局を占う選挙となります。

社会保障の行方は

安倍総理がことし「最大のチャレンジ」とするのが全世代型社会保障制度改革。
政府の検討会議は、夏に、最終報告をまとめる予定です。

2年後の2022年には、いわゆる団塊の世代が75歳になり始め、このままでは、医療費をはじめ社会保障費が急増します。
政府の検討会議が先月まとめた中間報告では、現役世代の負担の上昇を抑えるため、社会保障制度を、年齢ではなく所得などに応じて負担を求める「応能負担」の考え方に見直す必要があるとしました。

そして、75歳以上の後期高齢者医療制度について、原則1割となっている病院などでの窓口負担を、「一定所得以上の人は2割とする」と明記しました。
最終報告で、2割負担を求める人の所得基準などについて、結論を得たい考えです。

これに対し、与党内からは、過度な負担にならないよう配慮すべきだとして、2割負担の対象を絞るよう求める声があがっています。
ただ、現役世代のサラリーマンが加入する健康保険組合などは、あまりに対象者を少なくすると保険財政の改善につながらないとして、対象を広げるよう主張していて、2割負担となる人の所得の基準を、どこで線引きするかが焦点となります。

一方、野党側は、「抜本的な改革は望めない。高齢者に手厚く、現役世代の暮らしや子育てへの配慮が手薄なままだ」と批判し、国会でただしていくことにしています。

痛みを伴う改革だけに、内閣支持率や選挙の時期など政治情勢もにらみながら、調整が行われることになりそうです。

7月:首都決戦!

首都決戦となる東京都知事選挙は6月18日告示、7月5日投開票です。

現職の小池知事は態度を明らかにしていませんが、都政関係者の間では、オリンピックの期間中に任期満了を迎えることなどから、再選を目指して立候補する可能性が高いと見られていて、表明の時期が注目されます。

一方、主要政党では、自民党の二階幹事長が、小池知事が立候補すれば、支援する考えを示しているのに対し、小池知事と対立する自民党東京都連は独自の候補者を擁立する方針で、今後、選考を本格化させることにしています。

公明党は、山口代表が、「都政の継続性が重要だ」として、小池知事を支援する考えをにじませています。

また、国政で野党第1党の立憲民主党や、都議会の主要会派の共産党は、野党統一候補の擁立を目指しています。

ある自民党の幹部は、「都知事選挙は知名度が勝負で、後出しジャンケンでもいい」と話すなど、主要政党による擁立のメドは立っておらず、どのような構図になるかが焦点です。

9月:あと1年…動き出すかポスト安倍

9月30日には、安倍総理の自民党総裁の任期満了まで1年となります。

安倍総理は、新年早々、党の仕事始めで思わせぶりな話をしました。
「ことしで第2次安倍政権ができて8年目を迎える。『桃くり3年』で、桃やくりは収穫できた。国民のため力を合わせて立派な柿の収穫を行いたい。この先には『ゆずは9年の花盛り』という言葉もあり、ゆずまでは私も責任を持って日本に大きな花を咲かせたい」

来年9月までの任期を全うする意欲と受け取れる発言です。
そのうえで安倍総理は、次のように続けました。

「さらに、その先には、『梅はすいすい13年、梨はゆるゆる15年、りんごにこにこ25年』というのもある。こういうものは、ここにいる皆さんが中心になって収穫を得てもらいたい」

安倍総理は、NHKの番組で、自民党総裁として4期目を目指す考えがあるか問われたのに対し、「本当に考えていない。頭の片隅にもない」と。

さらに、年末に民放の番組では、ポスト安倍をめぐって、岸田政務調査会長、茂木外務大臣、菅官房長官、それに加藤厚生労働大臣の名前を挙げて、「自民党は人材の宝庫だ。競い合いながら、国民の皆さんに『自民党にはたくさんの人物がいる』と思って頂けたらと思う」と述べました。

一方、みずから石破元幹事長には触れませんでした。

自民党内では、「安倍総理の意中の人は岸田氏だ」という見方もあります。
安倍総理は、別の民放番組で、岸田氏について、「もうバットをぶんぶん振っていると思う。もうじきその音が聞こえてくると思う」と評しました。

その岸田氏は、初詣に訪れたあと、「次の自民党の総裁選挙に立候補するということは申し上げてきており、新年を迎え、新しい時代を担うんだという気持ちを強くしている。政治家としての力を蓄えるためことしは大切な1年だ」と述べ、改めて意欲を示しました。

岸田氏は、ことし発信力の強化を目指す考えです。

対する石破氏。新年を迎え、「その任に堪えられないと言える立場ではない。国民の期待に応えられる人間になれるかどうか、みずからに問いかけ、少しでも前に進む年にしたい」と述べ、ポスト安倍に重ねて意欲を示しています。

石破氏は、議員支持の拡大を目指す考えです。

ほかにも、河野防衛大臣や小泉環境大臣らの名前も挙がっています。
ことし誰が頭角を現すのか、注目です。

一方で、安倍総理が国政選挙で6連勝していることなどを踏まえ、総裁任期を延長して4期目に入ることに期待する声も根強くあります。

二階幹事長は、年始の記者会見で、「本人の決意が明らかにされれば、自民党みんながもろ手を挙げて強力に加勢してくれるだろう」と述べ、安倍総理が4期目を目指すと決意すれば、支援する考えを強調しました。
次の衆議院選挙もにらみながら、ポスト安倍をめぐる動きが活発になりそうです。

10月:任期満了まで1年 解散は?

その衆議院選挙、いったいいつなのか。
永田町で2人以上集まれば、すぐにこの話題になるほどです。

すでに、衆議院議員の任期は、折り返しの2年を過ぎ、10月21日には、任期満了まで残り1年となります。

解散権を持つ安倍総理は、先月の記者会見で、「国民に信を問うべき時が来たと判断すれば、躊躇なく決断する」と述べています。

新年早々には、西暦1600年が、ことしのえとと同じ「庚子(かのえね)」だったことを引いて、少し冗談めかして、「1600年には、関ヶ原の戦いがあり、まさに戦いを挑んで、徳川260年の太平をひらいた。やるべき時には戦わなければならない」とも。

これまで「頭の片隅にも、もちろん真ん中にもない」としていた発言からは大きく変わったように思えます。その真意はどこにあるのでしょうか。

取り沙汰されているタイミングは3つ。

まずは、通常国会冒頭、補正予算案が成立した直後の解散です。
自民党内では、野党の選挙態勢が整う前の早期解散論も残っており、立憲民主、国民民主、社民の3党などは、早期解散に備え、合流に向けた話し合いを進めています。しかし、IRをめぐる事件や「桜を見る会」の影響も念頭に、自民党のある幹部は、「議席を減らす可能性があり、早期解散は得策でない」と話すなど、否定的な意見があります。

次が、秋篠宮さまが皇位継承順位1位の「皇嗣」となられたことを広く明らかにする4月19日の「立皇嗣の礼」以降の解散です。
東京都知事選挙に合わせるという説もあります。ただ、聖火リレーが行われ、東京オリンピック・パラリンピックの準備に万全を期す時期に、全国各地で選挙戦を行うことに理解が得られるか疑問視する声も。

そして、今年中に解散があるとすれば、有力視されるのが、9月6日のパラリンピック閉会式以降です。
与党内では、「秋以降はいつあってもおかしくない」という声が大勢。一方で、オリンピック後は、景気後退を懸念する意見もあります。まだまだそのころの状況は見通せません。

与党側は、「与党にとって有利なタイミング」を慎重に探るでしょう。
安倍総理自身が解散に踏み切るのか、それとも次の自民党総裁に委ねられるのかも含め、任期満了が近づけば近づくほど、解散時期への関心は高まりそうです。

11月:アメリカ大統領選挙で

その後、11月には、アメリカ大統領選挙が控えています。

トランプ大統領が再選を果たすのか、それとも民主党が政権を奪還するのか。

自民党内では、「トランプ大統領が再選されれば、渡り合っていけるのは、やはり安倍総理しかいないとなる」などとして、安倍総理4選の判断にも影響するという見方もあります。

他方、トランプ大統領が再選されれば、引き続き難しいかじ取りを迫られることも予想されるほか、もし大統領が代われば、アメリカへのアプローチも変える必要が出てきます。

大統領選挙の結果は、日本の政治にも大きな影響を与えそうです。

一寸先は「闇」

毎年、年始に行う、ことしの政局展望。1年後に読み返すと、正直、当たっていないことも多くあります。

「政治の世界は一寸先は闇」

ことしは、どれだけ予想が裏切られるのでしょうか。
日に日に緊張感が高まる1年となるのは間違いありません。

 

※注「4つの政治的文書」=1972年の日中共同声明、1978年の日中平和友好条約、1998年の日中共同宣言、2008年の日中共同声明のことを指す。

政治部記者
広内 仁
1997年入局。横浜局から政治部。ワシントン支局を経て、現在、与党キャップ。
政治部記者
太田 雅志
2001年入局。岡山局初任。政治部、京都局デスクを経て、現在、野党キャップ。