Q36 借地に立つ古民家を相続して、困っています
クローズアップ現代で継続取材してきた『住まいの問題』。視聴者の皆さまからも数多くのお悩みが寄せられました。そこで今回、専門家協力のもと、2ヶ月の間お答えしつづける「お悩み相談マラソン」に挑戦します。今回寄せられたのは「借地に立つ古民家を相続して困っている」というお悩み。NPO法人 空家・空地管理センターの専門家に聞きました。
(NHK『住まいの問題』取材チーム)
相談内容
親の実家を相続したのですが、山間部の古民家で土地は借地です。土地を返すには解体して現状復帰しろと 言われてますが費用が400万円くらいかかり、とても払えません。私が生きている間は借地料を払いますが、私が死んだ後は相続人全員に相続放棄をしてもらうしかありません。できれば生きているうちに解決したいのですが、ままなりません。
(兵庫県)
回答
“ 相続放棄には注意点があります。ぜひ一度、親族で集まって話し合ってください ”
解説
(NPO法人 空家・空地管理センター 上田真一)
たいへん悩ましい問題ですね。400万円はおいそれと支払える額ではありませんし、支払ったところで何かを得た実感も湧きづらいことですから、途方に暮れるお気持ちはよくわかります。
借地の場合、一定の要件(地主からの契約更新の拒絶など)を満たすと、地主に建物を買い取ってくれるよう請求できる「建物買取請求権」という権利が発生することがありますが、残念ながら今回のケースではおそらく要件を満たしていないかと思われます。
借地というと「地主に土地を貸してもらっているだけ」というイメージかもしれませんが、借地権は民法で定められている権利です。この権利自体を地主に買い取ってもらうという方法もあります。ただし、一定の場合を除いて、地主側に借地権を買い取る義務はありませんので、あくまでお願いという形になってしまいます。これまでの人間関係などが重要になってはきてしまいますが、解体費用の件などを含めて一度交渉されてもいいかと思います。
そして相続放棄についてはいくつか注意点があります。まず、相続放棄は民法上の正式な手続きであるため、相続開始から3カ月以内に家庭裁判所での手続きを開始する必要があります。さらに、特定の財産だけ権利を放棄することはできないため、相続放棄するのであればすべての財産を放棄しなければなりません。「借地権はいらないが、銀行口座に残った現金は欲しい」という要望は認められないのです。
また、民法では相続の順番が定められており、本来の相続人が相続放棄をすると別の方が相続人となる可能性があります。例えば、配偶者とお子さん全員が相続を放棄した場合、もし相談者さんにご兄弟がいらっしゃれば、ご兄弟に相続権が発生することになります。完全に権利を放棄するのであれば、あらかじめすべての相続人にしっかりと状況を把握しておいてもらう必要があります。
また、相続放棄したにもかかわらず相続財産の一部を使ってしまった場合などは、すべての財産を相続したとみなされるため注意が必要です。ぜひ一度、親族で集まって将来について話し合う機会を設けることをおすすめします。
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