Q22 建替えをめぐって住民の意見が完全に割れています
クローズアップ現代で継続取材してきた『住まいの問題』。視聴者の皆さまからも数多くのお悩みが寄せられました。そこで今回、専門家協力のもと、2ヶ月の間お答えしつづける「お悩み相談マラソン」に挑戦します。今回寄せられたのは「老朽化した建物を建替えるかどうかで住民の間で意見が完全に割れている」というお悩み。マンション管理の専門家に聞きました。
(NHK『住まいの問題』取材チーム)
相談内容
70年代につくられた建物を建替えるかどうかで住民の間で揉めている。長く住めると思い込んでいる高齢世代と建替えたい現役世代が対立して、合意形成が進まないまま10年が経った。
回答
“ 建替えは所有者の人生設計そのもの。臆せずに専門家の力を借りましょう ”
解説
(マンションみらい価値研究所 所長 久保依子)
もしかしたら相談者さんは、老朽化したマンションは最終的には「建替え」するものだと思っているのかもしれません。これまでは、容積率の緩和措置による恩恵を受けられるような好立地にあるマンションが建替え時期を迎えていたため、不動産会社が参入して建替えすることができました。そのせいもあってか、いずれは自分のマンションも追加の費用負担なしに建替えることができるという認識を持っている方は少なくありません。しかし、実はそもそも日本ではマンションを建替えた事例は300件に満たないのです。また、これから建替えの時期を迎えるマンションはそうした恵まれた条件にあるものばかりではなくなります。
ただ、ほかにも選択肢はあります。(1)時期を決めて修繕し続ける、(2)1棟まるごとリノベーションする、(3)敷地売却です。そしてこの中のどれが最善の解決策なのか結論を出すには、十分な比較検討が必要です。
検討にあたっては所有者個人のライフプランが大きく関わってきます。いま住宅ローンがいくら残っているのか、子育て世代であれば子どもは何歳でこれからいくらかかるのか、高齢者であれば子どもにどのような資産を残したいのか、最期はどこで迎えたいのか。ひとりひとりの事情と、前述のマンションの将来の掛け合わせから結論を導いていくことになります。
建替えの検討は所有者の人生設計そのものです。区分所有法やマンション建替え円滑化法などの関連法規、さらには個人のファイナンシャルプランニングなどができる知識を持ち合わせている相談先がないと、管理組合だけでは合意に至ることは難しいでしょう。自分の人生設計をご近所さんに相談するのはなかなか抵抗のあることだと思います。第三者のプロにこそ打ち明けられる話もあるはずです。もう10年も話し合っているなら、そろそろプロに相談してはいかがでしょうか。
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