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“完全勝利以外 私たちに選択肢はない” ~ウクライナ大統領府副長官 単独インタビュー~

幾重にも張り巡らされたバリケード、二重、三重の厳重な警備をくぐり抜けた先にウクライナの大統領府はありました。

建物の内部には今も土嚢が積み重ねられ、戦時下の緊迫感が伝わってきます。

そこで私たちが面会したのは、大統領府副長官のイーゴル・ジョフクワ氏(44)。
ゼレンスキー大統領の側近として、就任以降、外交問題を担当してきました。

ロシアによる軍事侵攻から2年を迎えたウクライナ。
欧米の支援も先細る中で、どんな戦略を描いているのか聞きました。

(「クローズアップ現代」取材班)

ウクライナ支援の現状は

ウクライナ大統領府 副長官 イーゴル・ジョフクワ氏(44)

Q. ロシアによる軍事侵攻が始まった頃、欧米を中心に国際社会はウクライナ支援のため、強力な結束を示しました。しかし、2年が経った今、その支援は遅れが出ているようにも感じます。この2年間ウクライナへの支援はどのように変化しましたか?

ジョフクワ氏

私は逆に、この2年間で支援の量が増えただけでなく、支援のスピードも上がったと言えると思っています。残念ながら、ロシアによるウクライナへの公然たる侵略が始まった当初は、砲弾や大砲から戦車、防空システム、長距離ミサイルに至るまで、戦場におけるほとんどすべてのものが不足していました。


今では、これらすべてが戦場で機能し、効果的に使われています。ウクライナ軍はこれらすべての兵器を使用しており、時にはこの種の兵器を供給してくれる国の軍隊よりも優れていることさえあるのです。私たちに支援を行う国の数は増え続けており、最初に援助した国々は、さらにその援助を増やしています。


例えば、欧州のパートナー諸国が表明した支援額を見て頂けますか。ドイツは今年70億ユーロ以上を、安全保障に関する協定を結んでいる。イギリスは年間で25億ユーロです。侵略から2年がたった今でも、私たちはさらに団結し、私たちのパートナーに対してさらに信頼感を持ち、パートナーも私たちの勝利にさらに確信を持ってくれているのです。

Q. 最大の支援国アメリカの追加支援の予算案が、野党・共和党の反対で暗礁に乗り上げています。もし予算案が承認されず、アメリカからの援助がなされない場合、どのような影響があるのでしょうか?

ジョフクワ氏

まず第一に、私は承認されると確信しています。


私の確信は、ウクライナ大統領と彼のチームが承認されるために行ってきた努力に基づくものです。ウクライナ大統領はこの半年で2度ワシントンを訪れ、その際に上下両院で会合を持ち、民主党、共和党の両政党の代表者たちと会談を行いました。 (共和党の)マイク・ジョンソン下院議長との会談もありましたし、バイデン大統領やカマラ・ハリス副大統領との会談も行いました。そしてそのすべての会談で、やはりどちらの党の代表者たちからも、ウクライナへの援助は必要ない、それを取り上げるべきではないという言葉は一言も聞かれなかったのです。


たしかに、アメリカには国内の政治状況があります。この2つの政党を分断している、良く知られた問題があります。彼らはこれらの問題について議論を重ねています。


しかし、今日私たちが話をしている間に、これら2つの問題はすでに上院で話し合われていますし、そしてもうすぐ下院でも始まると期待しています。そして、もしかしたら、このインタビューが出る時には、この問題はすでに解決されているかも知れません。ウクライナやイスラエルへの資金提供の問題は、国境の(不法移民の)問題とは別に検討されています。


流れはポジティブです。ウクライナ側は必要なあらゆる努力をしています。大統領レベルでも、チームのレベルでも適切なコミュニケーションが取れています。私たちは、この問題が前向きに解決されると確信しています。すでに良い例として、今後4年間に500億ユーロを割り当てた欧州連合のことが挙げられます。EUのこの前向きな例が、アメリカでも繰り返されることを願っています。

ジョフクワ氏とゼレンスキー大統領

ロシアとの停戦の可能性は

Q. 非公式協議などの場で、グローバル・サウス[1]の幾つかの国々から、ロシアと停戦するよう求める声が上がったという情報もあります。そのことについて、どう認識していますか?ウクライナが停戦をする可能性はあるのでしょうか?

[1] 世界で影響力を高めるアジアやアフリカなどの新興国や途上国

ジョフクワ氏

話を整理しましょう。


停戦を求める声は、グローバル・サウスからというよりも、停戦を夢見ているある侵略国から上がっています。今、立ち止まって、完全に停戦し、彼らが得たと信じているものを、ここで確定させましょう、と言うのです。そしてその後で彼らは軍を再編成し、さらに動員をかけ、攻勢を再開することでしょう。ウクライナはこのことをよく理解しています。


そして、このいわゆるゲームについては、グローバル・サウスのパートナーも完全に理解しています。なぜなら、私たちはその事を説明しているからです。ゼレンスキー大統領がここウクライナで、あるいは外遊先でグローバル・サウスの指導者たちと会うとき、どの指導者たちも口を揃えて言うのです。「私たちもウクライナに対するロシアの侵略の影響を感じている」と。


そして彼らはネガティブです。どこかで物価が上昇し、どこかで経済のチェーンが混乱し、どこかで供給ルートが適切に機能していないために、ウクライナからの一部の農産物が不足しています。そして、彼らは皆、侵略を止めなければならないと言っています。


しかし、ウクライナに平和をもたらすのはゼレンスキー大統領の和平案しかないことを、彼らはみな理解しています。ウクライナでは戦争が続いています。それゆえ、ブラジルによるウクライナのための和平案もアフリカの案も、かつては声高に叫ばれていたのに、今では聞かれなくなりました。


今日、特にグローバル・サウスの国々を含め、誰もが、そして何よりも、これがゼレンスキーのプランであるべきだと理解しています。したがって、今日のゼレンスキー大統領の任務は、平和サミット、世界平和サミットを、実際にウクライナの和平案が全員に承認される最初のサミットを開催することなのです。


もちろん、グローバル・サウスのアプローチは西側諸国のそれとは異なります。私たちは、グローバル・サウスの国々がすべての項目を満たさなければならないと言っているのではありません。もし1つか2つの点であっても、全体として共通の理解があれば、それはすでにこの案が実現し始めていることを意味するのです。グローバル・サウスの国々が侵略国に集団的な圧力をかけ、和平案が実施されて行くにつれ、ウクライナ人にとっての平和が近づいてくるのです。平和の公式を実行に移すためのプロジェクトを早急に開始する必要があります。


実際これは、戦場だけでなく、ロシアから侵略の手段をいかにして奪うかということです。戦場では、われわれは軍事力でロシアと対峙しています。しかし、農業や食糧の安全保障、エネルギーの安全保障、核の安全保障、環境の安全保障といった分野では、ロシア単独ではこれらの問題で全世界に立ち向かうことはできないし、侵略者になることはできないと主張するため、国際社会が一致団結して取り組む必要があるのです。

ウクライナ兵

Q. 先日、ロシアのプーチン大統領が、アメリカのジャーナリストのインタビューに応え、「戦闘を止めたいなら武器の供与をやめるべきだ。そうすれば数週間で終わる」と述べ、アメリカが軍事支援を即刻停止すべきと主張しました。この発言をどう受け止めましたか?

ジョフクワ氏

正直に言って、このインタビューを見る時間がありませんでしたが、私が見た抜粋では、個人的には、何も新しいストーリーを見出せませんでした。これは、ウクライナへの侵略という誤った決断を下した当初から、プーチンが夢見ていたことのすべてです。「停戦しましょう」と言います。西側諸国にウクライナへの援助を打ち切らせ、ロシアはその成果を確定させるのです。


そんなことは起こりません!西側は絶対にウクライナへの援助をやめないでしょうし、西側だけではありません。日本も憲法と法律が許す範囲で、ウクライナを援助してくれています。


プーチンは、世界がウクライナに背を向けるのを待つことができません。彼はそれを期待していたのですが。中東で有名な出来事(イスラエルとハマスとの戦闘)が始まった時の、ロシアのシナリオを思い出してください。「さあ、ついに注目がウクライナから逸らされる!世界は他の問題に注力するだろう。誰もがウクライナのことを忘れ、グローバル・サウスは思い出しもしないだろう」と。


その後、私たちには何がありましたか?ウクライナへの注目はさらに高まったのです。世界はさらに結束しつつあります。そしてそれは続くでしょう。私たちの勝利の前だけでなく、勝利の間も、そして勝利の後も、です。なぜなら、世界の誰もが、今後世界のこの地域の安全保障を担うのはウクライナであることをすでに理解しているからです。


今日、すでにそれはヨーロッパの安全保障システムだけでなく、欧州・大西洋安全保障システム、そして世界の安全保障システムにとっても不可欠な要素となっています。今日、ウクライナとその周辺の安全保障を抜きにして、世界の安全保障システムを語ることはできません。したがって、侵略者に対する私たちの共通の勝利の後、私たちはさらに団結し、世界はさらに安全になるはずです。

ウクライナ国民の声にどう応えるか

兵士の家族たちによるデモ

Q. ウクライナで多くの人に話を聞いてきました。動員された兵士の家族からは、戦争に勝たなければならないが、兵士には休暇も必要だ、最低限の権利を保障してほしいという声も上がっています。ウクライナ政府は、こうした国民の声にどう応えていくのでしょうか?これは政府にとって難しい選択だと思いますが、実際のところはどうなのでしょうか?

ジョフクワ氏

大統領も、政府も、ウクライナのまともな意識の持ち主であれば、ロシアの停戦シナリオを決して受け入れないことは明らかです。停戦は、全領土を奪取するため、侵略軍をさらに再編成するための休息であり、休止でしかありません。


残念ながら、彼らはそのための莫大な人的資源を持っており、毎日戦場で何十人、何百人、何千人と失っても、それでもなお侵略を続けています。ウクライナに関して言えば、ウクライナは兵士一人ひとりを大切にしています。ウクライナの大統領はすべての兵士を大切にしているのです。従って、(兵士の)公平なローテーションについての問題は、確かにそうあるべきですが、今こうしてあなた方と話している間では解決されません。


ウクライナ最高議会は、第1読会において動員法を可決したところです。この法律では、ローテーションの必要性、戦場での戦闘遂行を適切に保証する必要性について対応する規範が規定されています。ウクライナ社会は、これらすべての疑問に対する答えを確かに手にすることになり、この法律が採択されれば、私たちの軍はさらに効果的に行動することになるでしょう。


戦場にいるすべてのウクライナ人兵士が、また自らの職場にいるすべてのウクライナ人が、完全勝利までロシアの侵略者と戦い続けることは正しいのです。それ以外に選択肢はないのですから。

混迷の世界で

Q. 今、世界では本当に大きな出来事がたくさん起こっています。例えば、イスラエルでの戦争もあれば、日本では年始に大きな地震も起きました。世界で困難な状況が続く中、ウクライナへの支援を維持し、拡大していくために、ウクライナ政府は今後どんなプランをお持ちですか?

ジョフクワ氏

ウクライナの大統領が行っていることを続けることです。各国のリーダーたちと対話を行い、主要国の議会で訴え、それらの国の国民とコミュニケーションをとります。


世界のメディアのインタビューに応じ、ウクライナで実際に何が起きているのか、侵略者の今の目標は何なのか、プーチンはなぜウクライナを攻撃することにしたのか、彼の目的は何なのかについて話していきます。私たちが、どんなロシアのシナリオよりも強いのは、ある単純な理由のためです。私たちには真実があるのです。


私たちはウクライナの大地のため、ウクライナの領土のため、ウクライナ人のために戦っています。他国の土地は1センチたりとも必要ありませんが、私たちの土地は絶対に誰にも渡しません。ウクライナの大統領とウクライナ国民全体が、このリズムに従い、この体制で動いており、今後もこの活動を続けて行くでしょう。

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担当 「クローズアップ現代」取材班の
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