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「視聴者」から、一緒に課題解決に挑む「仲間」へ 〜1ミリ革命が目指すもの〜

「1ミリ革命 みんなでローカルグッド」は、毎回視聴者から寄せられたお悩みの解決を目指しています。2023年12月放送回で取り上げたのは、熊本県在住の方が悩んでいる「地域活動の担い手不足」。

この地域課題を解消しようと、富山からは担い手不足のお祭りを盛り上げている若者、茨城からは公共交通の新たなカタチを模索している自動運転バス運営会社の社長、福島からは地元のおじさんたちに光を当てる図鑑を作った観光協会のスタッフ、地域活動の実情に詳しいローカルライフマガジンのプロデューサーが大集合!今回は悩みを寄せてくれた方も一緒に熱いトークを繰り広げました! 同じお悩みを抱えている方、必見です!

自治会役員から届いたお悩み

今回、「1ミリ革命」に寄せられたのは、こんなお悩みでした。

「地域の見守り委員をしていますが、高齢者が高齢者を見守っている状況で担い手不足に困っています。若手世代にも興味を持ってもらい、一緒に活動してくれる仲間を増やしたいです」

送ってくれたのは、熊本県八代市に住む寺川久留美さん(36)です。2023年5月放送回「Jリーグと地域活性化」を見て、自分が抱えている悩みを投稿してくれました。全国各地で少子高齢化が進む今、「地域活動の担い手不足」は、地方から都市までどの場所でも直面している問題です。36歳が感じる地域活動に対する不安とはいったい何なのか。詳しい事情を知るため、寺川さんの地域活動を取材することにしました。

寺川久留美さん
寺川久留美さん

寺川さんのトレードマークは金髪です。とても目立つので、地域の人たちから話しかけられやすいといいます。住んでいる地域は、人口約2300のうち、約4分1が65歳以上(2020年 国勢調査)です。高齢化が進む地域で自治会の活動を始めたのは、八代市に引っ越してきた8年前。近所に住む自治会の役員の方から人手不足に悩んでいる、ごみステーションの管理を相談されたことがきっかけでした。寺川さんは、「嫌だったけど、学生時代にボランティア活動をしていた経験もあったので、断れなかった」と話します。寺川さんの地域では、4か所のごみステーションを自治会の役員が管理しています。そのため、寺川さんは28歳で自治会役員を務めることになったのです。

ドキュメント2時間30分 地域住民の生活を支える自治会役員の仕事

ごみステーション管理担当者は、月2回行われる資源物回収のサポートを任されています。11月下旬、その仕事に密着してみました。

資源物回収の日、寺川さんは午前6時前にごみステーションステーションに足を運びます。八代市では、再利用・再資源化できる金属やプラスチック、紙類などを22品目に分けて回収しているため、集めるケースや袋などを準備しなければいけないのです。

作業は、同じく自治会役員を務める西村雅典さん(73)と一緒に行います。西村さんは40歳近く離れた寺川さんをとても頼りにしているといいます。

午前6時を過ぎると、住民が次々とごみ出しにやってきます。分別する品目が22もあるので、どのケースに入れていいのか悩む人も多く、そのたびに寺川さんがアドバイスします。この日は革のバッグを捨てる人がいました。回収するためには革の部分と金属部分を分ける必要があり、寺川さんは自ら持参したはさみなどを使って、作業を手伝いました。

さらにペットボトルや白色トレイなどは大量に回収されるので1袋では足りず、いっぱいになる度に取り替えていきます。西村さんとのコンビネーションはバッチリで、手際よく作業していました。

作業は午前6時から午前8時30分まで、2時間30分ずっと立ちっぱなしでした。次から次に来る住民に声をかけ、ときには、世間話もしながら。寺川さんはこの地道な作業を暑い日も、寒い日も、台風が来ても、雪が降っても、8年間ずっと続けてきました。私はたった1日同行しただけでもその大変さを痛感しました。寺川さんに地域活動のモチベーションを伺ってみると、「地域の人たちとの交流が楽しいし、『ありがとう』と感謝されます。近所で会ったときも声をかけてもらえるようになって、やっていたよかったと思います」という答えが返ってきました。

実は寺川さんは前回の資源物回収を腰の調子が思わしくなく欠席していました。この日は住民の方から、「腰は大丈夫?」、「もう治ったの?」など身体を心配する声をかけられていました。まさに寺川さんは、地域住民の日常生活を支える役割を担っていると感じました。

36歳が見据える地域の未来「担い手に不安・・・」

寺川さんが地域活動を始めて、地域のつながりの大切さを実感した出来事がありました。2016年4月に発生した熊本地震です。寺川さんは自治会活動を通して、近所の人たちと顔見知りになっていたので、一緒に避難したり、避難先で励まし合ったり、その存在に助けられたといいます。

ただ、地域活動に対して熱心な思いが芽生えれば芽生えるほど、不安に感じてくるのが将来のことです。今、自治会の役員が15人いますが、ほとんどが70代。中には、80代や90代の方まで。また、寺川さんは地域の高齢者の見守り委員を務めていますが、他の見守り委員には80代の方もいて、80代が80代を見守っているケースもあるといいます。こうした状況に対して、寺川さんは力強くこう話してくれました。

「地域活動は誰かが担わないといけない。ぜひ若い人に参加してほしい。でも、自治会というと、面倒くさいイメージがある・・・。ぜひ良い面もあることを知ってもらいたいです」

「視聴者」から「参加者」に!“お悩み人”が番組に出演

取材のあと、2023年12月放送回で特集するテーマを、寺川さんのお悩みから「地域活動の担い手不足」に決めました。さらに寺川さんに「ぜひ番組に出演してほしい」とお願いしました。「え!?悩みをメールしただけなのに、こんな展開になるとは!」と驚いていました。寺川さんは、取材を通して自分自身のことを話すうちに、地域活動に対するモチベーションを再確認し、「担い手不足の課題を解決したい」という思いを強くしたといいます。今回の番組には全国各地で寺川さんが悩む問題に取り組む当事者たちが参加するので、「ぜひ話をしてみたい!」と出演を快諾してくれました。

収録当日、寺川さんは自宅からリモートで番組に参加。番組には、全国各地で担い手不足に取り組む当事者やその動きを取材してきた記者、ディレクター、さらには地域活動の実情に詳しい専門家が集合。寺川さんが抱える「地域活動の担う若者を増やしたい」というお悩みを解決するアイデアを考えました。

越中祭青年会 発起人 五十嵐友輔さん

富山県射水市を中心に地域のお祭りを盛り上げる活動を行っています。県内外の担い手不足に悩んでいるお祭りに出向き、地元の人たちと協力して新しい風を吹かせています。
五十嵐友輔さんからのアドバイス

「仲間を増やすためには、何でも話し合える関係になることが大切です。そのために、まず地域内で気軽なお茶会を開催して、情報を共有したり、新しいネットワークを作ってみたりするのはどうでしょうか?」

自動運転バス会社運営会社社長 佐治友基さん

茨城県境町など全国5か所で自動運転バスの実証実験に取り組んでいます。担い手不足に悩む公共交通の新しいカタチを模索している若き経営者です。
佐治友基さんからのアドバイス

「地域で新しいことをやろうとすると反対する人も出てきます。でも、反対しているということは、逆にいえば、自分の考えを持っているとも言えます。逃げずにコミュニケーションを取って納得してもらえば、ものすごい力を発揮する仲間になります!」

福島県二本松市 岩代観光協会 有野真由美さん 
岩代地区在住デザイナー 武藤琴美さん

2人は、過疎化が進む岩代地区に住む20人のおじさんの生態をユーモラスに伝える『岩代おじさん図鑑』を発行。おじさんを観光資源にする“おじさんツーリズム”を提唱しています。
有野さんと武藤さんのアドバイス

「若い人は地域内に少ないし、地域外から新たに来てもらうのも大変です。でも、元気なおじさんならたくさんいます。年齢に関係なく、活躍できる人に活躍してもらえれば、地域はまだまだ活性化できると思います!ぜひおじさんには可能性がいっぱいです!」

『岩代おじさん図鑑』の詳細は、こちらの記事から!
“おじさんは地域の光”「岩代おじさん図鑑」 爆誕のヒミツを徹底取材!

ローカルライフマガジンプロデューサー 堀口正裕さん

取材やイベントの開催などを通して、全国各地の地域活動の実情に精通しています。さらに、自身も住んでいる埼玉県内で自治会活動に参加しています。
堀口さんからのアドバイス

「地域創生というと、どうしても地域外から若者に来てもらおうという発想になってしまうが、50代、60代、70代は激動の時代を戦ってきた知見を持っています。人口減少社会の今、おじさん図鑑の発想は他の地域でも活用できるヒント。ぜひおじさんサミットを全国各地で開催してほしい」

番組がきっかけでお悩みを解決するヒントが!

番組の放送は25分ですが、収録は議論が白熱し、2時間に及びました。寺川さんにとってはすべての時間がとても役立ったといいます。収録の感想を伺ったところ・・・。

寺川久留美さん

「みなさんから各地の取り組みを聞いて、新たな担い手を若い人だけに絞っていた自分の視野が狭かったことに気付かされました。年齢が離れていても、一緒に何かができるんじゃないかと勇気をもらいました。近いうちにさまざまな世代が参加できるお茶会はぜひ開催していきたいです。みんなで『いいところだね』って言えるような地域にしていきたいと思います。『1ミリ革命』に参加できて、よかったです」

「1ミリ革命」では、今後も寺川さんの活動を見守っていく予定です。

1ミリ革命が目指す“エンゲージド・ジャーナリズム”

「1ミリ革命 みんなでローカルグッド」では、対話型の取材を続け、信頼関係を築きながら、その取材過程も発信し、地域課題の解決に役立ちたいと考えています。
こうした取り組みは、「エンゲージド・ジャーナリズム」と呼ばれ、今、世界各地のメディアで広がっています。

エンゲージド・ジャーナリズムに関する詳しい内容はこちら👇
Engaged Journalism|NHK放送文化研究所

今回の番組では、地域の祭りの担い手不足も議論されましたが、私がエンゲージド・ジャーナリズムに興味を持ったきっかけのひとつにも、ある祭りの存在がありました。

私は、2022年夏までNHK大分放送局に5年間勤務していました。“おんせん県おおいた”での暮らしは居心地が良く、特に県南部の佐伯市は、海がきれいでお寿司もおいしく、休みの日によく遊びに出かけていました。ある日、佐伯市内でゲストハウスを経営する友人から斬新なお祭について教えてもらいました。その名も「魔界フェス」。参加者は白塗りになり、年齢も性別も肩書きも超えて、音楽やスポーツを楽しむといいます。

魔界フェス

「魔界フェス」は、7年前に地元の若者たちが佐伯を盛り上げたいと始めた新しいお祭りです。これまでNHKのニュースで取り上げられたことは一度もありませんでした。各地域にはとても多様で魅力的なトピックがたくさんありますが、その中でニュースに取り上げられるのは一部であることを痛感しました。そして、私の中である思いが強くなりました。

「地域の人から寄せていただいた声や情報を大切にして番組制作を行いたい!!」

「1ミリ革命 みんなでローカルグッド」では、みなさんから寄せられた声をもとに取材を進め、情報を発信しながら、みなさんのニーズに応えていきたいと考えています。ぜひ地域課題に関するお悩みや解決するアイデアなどをお寄せください。寺川さんのように取材させて頂いたり、番組に参加頂いたりする可能性もあります!

こちらから↓ご応募ください。お待ちしています!
「1ミリ革命 みんなでローカルグッド」 お悩み・疑問・情報提供・ご意見募集!

この記事のコメント投稿フォームからみなさんの声をお待ちしています。

担当 阿部 公信の
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この記事の執筆者

第2制作センター ディレクター(「1ミリ革命」プロジェクト・クローズアップ現代)
阿部 公信

福島県いわき市出身。福井局や大分局での勤務経験などをいかし、地域課題の解決を目指すコンテンツを制作。みなさんからの情報提供をいかした“エンゲージドジャーナリズム”に力を入れている。

みんなのコメント(1件)

感想
え−ちゃん
70歳以上 男性
2023年12月10日
私たち老人を若い人達も思っていてくれている。うれしい。2割の賛成、2割の反対、6割の無関心。なるほど、参考になりました。