「大切な出会いはこの先、たくさん待っている」 福島県いわき市出身・富田望生さん
「能登半島地震を経験した“子どもたち”へ、私がいま伝えたいこと」
このページでは、かつて東日本大震災などで家族や友人、ふるさとなどを失った“子どもたち”からのメッセージを紹介します。
福島県いわき市出身の俳優・富田望生(とみた・みう)さん、24歳。
現在放送中の連続テレビ小説「ブギウギ」で、福島出身の「小林小夜」を演じています。
富田さんは小学5年生の時に東日本大震災を経験しました。
発災時は小学校の校舎内にいた富田さん。
とっさに机の下に隠れましたが、「安全ベルトをせずにジェットコースターに乗っているような、放り投げられそうな状況」だったといいます。
ホテルの支配人として働いていた母と連絡が取れないなか、その夜は自宅向かいの友人宅でろうそくを1本立てて過ごしました。
翌朝、母が帰宅。
母が働いていたホテルは電気が使えたため、自宅からホテルに移動して生活を始めました。
しかしおよそ10日後、母から東京に避難することを告げられます。
自宅は半壊し、ライフラインも途切れた状況では生活できないと頭で理解しながらも、富田さんは沸き上がる感情を抑えることができませんでした。
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富田さん
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「行ってしまったらもう帰ってこられないんじゃないかって思って。もう『ここで私は死んでやる!』『連れてくな!』って言って車の中で暴れて。それまですごくきぜんとした対応をホテルのお客様にしていた母親に『うるさい!』『黙りなさい!』ととても叱られて。黙るしかなかったんで、シュンってなってボロボロ泣きながら関東に向かいましたね」
東京の小学校に転校した富田さん。
自身の性格や友達との距離感など、すべてが変わってしまったといいます。
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富田さん
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「『おい、放射能!』とかって、覚えたての言葉を投げかけてくる子もいたんです、東京で。はぁ…ってもちろんなりますし。で、それをかばってくれる子もいて、『あんたそういうのやめなよ』みたいな。でも『あんたそういうのやめなよ』って言っている子にも素直になれないんですよね。『何をもってこの子はいま正義を振りかざしてるのか分からない』とか思っちゃったりもして。素直に『ありがとう』とは言えなかった」
福島で打ち込んでいたピアノにも取り組めずにいた富田さん。
ある日目にしたのが、タレント養成所の広告でした。
「テレビに出たら福島の友達に活躍を見てもらえるのではないか」と思い、俳優の道へと進むことを決意しました。
富田さんはNHKの連続テレビ小説「なつぞら」「ブギウギ」をはじめ、数多くのドラマや映画で活躍しています。
能登半島地震で大切な人やものを失った子どもたちへ。
富田さんからのメッセージです。
「皆さん、こんにちは、こんばんは、おはようございます、かな?俳優の富田望生です。私は小学5年生の時に東日本大震災を福島県で経験しました。当時はまだお芝居をしたいとか、こういうテレビの世界に入りたいとか考える全然前だったんですけど、とにかくテレビが大好きなテレビっ子でした。
そして私はピアノの先生になるのが夢で、ピアノが大好きだったんですけれども、福島から東京に来た時は、ピアノを最初は持ってこられなくて、先生とも離れてしまって夢を諦めるというか、何か手放すというかやめようって決めたこともありました。
何かやりたいことが見つからないとか、大人の言ってることって何なんだとか、自分の気持ちを押し殺す瞬間とかもきっとあると思うんですね。子どもって気を遣うから、私もたくさん気を遣ったから、周りの方の表情とかいろいろ考えてしまうとは思うんですけれども、でもきっと何か1つの決断とか、それがたとえ自分の元から離れていくものだとしても、大切な出会いってこの先たくさん待っていると思いますので、皆さんの温かい輝く未来を応援しています。
そして何かそんな1つに、楽しいなとかおもしろいなとかいいなとか思ってもらえるようなきっかけに私もなれたらいいなと思っております。食べられる時にご飯、たくさん食べて大きく育ってほしいです」