にっぽん縦断 こころ旅
正平様、チャリオ君、スタッフの皆さん、毎回旅が始まるのを楽しみにしています。
私の思い出の風景は、山形県白鷹町鮎貝にある「鮎貝八幡宮とその境内」です。そこは最上川が造った高い河岸段丘にあり、昔の城跡址に建っています。神社の本殿、屋根付きの土俵や鐘楼、神社前には広場があり、本殿の後ろには城跡の名残の土塁となっていて、一帯が杉の大木で囲まれています。そこは、「小学生だけのパラダイス」でした。
私も小学校に入る頃になると、兄に連れられて行くようになりましたが、近くの町内からも小学生が次々と集まってきます。そこでの遊びでは、代々引き継がれた小学生だけの掟というか、特別ルールがありました。
ソフトボールでは、相撲場の近くにホームベースがあり、神社の屋根に上がったら二塁打、屋根を越したらホームラン。低学年ではとても届かない二塁打、ホームランがだんだん高学年になり届くようになると、仲間が皆で抱き合って喜んだものです。ボールが崖に落ちれば、高学年の子供だけが急な崖を降りて捜します。低学年には決して崖には行かせませんでした。
ソフトボールの人数が揃うまでは、相撲や神社で隠れんぼです。隠れんぼにもルールがあり、建物の土台の石までは足をついても良いのですが、地面についたらアウトです。地面について歩けば、簡単にいい隠れ場所に行けますが、そんなことをしたら「○○君インチキした」といわれ、仲間はずれにされかねないので、皆必死に建物をつたって隠れたものです。
また、土塁の杉林の中に、「秘密基地」をつくり、おやつを食べながら何となく、当時のテレビの忍者のヒーローになった気分に意気揚々となっていました。
休みになれば、朝から晩まで神社境内で人数に合わせ、いろいろな遊び方をしました。家に帰る時間になると「鐘楼」の鐘を鳴らし、「また明日遊ぼうや」と約束し、毎日毎日「鮎貝八幡宮パラダイス」で過ごしました。
でも中学生になると上級生もそうでしたが、私も行かないようになりました。何となく、中学生になると小学生とは別なんだ、という変なプライドと気恥ずかしい思いが入り交じり、結果「小学生だけのパラダイス」でした。
しかし、今考えると、このパラダイスではいろいろな事を学びました。ルールを守るとか、上級生と下級生との役割であったり、思いやりであったり、そして遊び仲間達との友情であったりと。
今年で65歳になり同級会が開かれますが、別な所用のため残念ながら参加できない分を是非正平様に「小学生だけのパラダイス」を訪れて見て貰えればと思います。わがままなお願いですが。
楽しい旅をこれからも見させてください。
宮城県 宮城郡
新野 俊晴(ニイノ トシハル)64歳(男)
宮城県七ヶ浜町
新野俊晴さん(64歳)からのお手紙