にっぽん縦断 こころ旅
火野さん、スタッフの皆さまへ
いつも番組を楽しく拝見しております。
私の懐かしい風景は、広島県三原市高坂町の"佛通寺"という禅寺です。
市内で教師をしていた父は大のカメラ好きで、学校で生徒さんを撮影したり、休日は海や山で長時間シャッターチャンスを待ちながら過ごしていました。中でもこの佛通寺のもみじや苔むした階段などの佇まいは とても気に入っていて 私もよく連れてこられました。
でも着いたとたん 幼い娘をほったらかして 自分は撮影ざんまい。
私も私で ひとりきれいな川に入って遊んだり
縁の下のありじごくを掘り出したりしながら
日暮れまで父を待ったものでした。
小学3年頃の夏、境内で流しそうめんを頂けることになりました。
めんつゆの入ったガラスコップと割箸をもらい、私ははりきって
最上流ですから その気になればいくらでも流された瞬間にめんを仕留めることができます。私は流れに箸を立て、調子に乗ってがっぽりとすくってはコップに入れていきました。
が、すぐにその強欲さを後悔することに・・・・・・。
当然あっという間にコップはそうめんであふれ つゆは薄まって、ただの‘水そうめん’になってしまっていたのでした。
そのあまりの不味さに半ベソの私に、父が呆れたように「欲張るけえ(から)じゃ・・・」と自分の残り少ないつゆを少し分けてくれました。
なんとも申し訳なく、バツの悪かった思い出です。
父も既に他界し、今の住まいからは遠い山の中ということもあり長らく訪れていませんが、川の流れや境内の木々はきっと今でも美しいままだと思います。
稚拙でお恥ずかしい記憶の場所ながら 本来は由緒正しい古刹と聞いています。
火野さん、よかったら一度ゆっくり歩いてみていただけませんか?
よろしくお願いします。手前の坂がもしも急だったら
ごめんなさい。
お身体に気をつけて、引き続き よい旅を。
杉谷 倫子
横浜市
杉谷