にっぽん縦断 こころ旅
「こころ旅」新シリーズ、楽しみです。
正平さん、スタッフのみなさん頑張って下さい。
私には、早く死別した父との思い出の場所がひとつだけあります。
それは、宇治川の「井川用水機場」横の川岸です。
私の父は、さきの戦争ではアンコールワットの近くに行っていたときいています。終戦後は胃腸の病気に悩まされ、昭和34年に、38歳で ガンで亡くなりました。 私が4歳、姉は11歳でした。
それまでも、入退院をくり返していた父が、最後の入院をする前日の夕方、父と私は、2人で、家の近くの宇治川の堤防(あじろぎの道)を散歩しました。
その時の父は、もう元気で家にはもどれないと覚悟していたと思います。
何を話してよいかわからず、ふだんおしゃべりな私は、ずっと黙って歩きました。
平等院鳳凰堂を背にして、川岸に腰をおろして川を見ながら、1本のコーヒー牛乳をかわるがわる分け合って、飲みました。
その時父が、「誰かと分けあうときは、最後のひとくちは相手にゆずるため 残しておくもんだよ」と、私に教えてくれた事だけは、今でもはっきりと覚えています。
その場所は、いつの頃からか、ベンチが設置され、今では、宇治市が舞台のアニメにも登場するらしく、多くのアニメファンが訪れているそうです。
今から60年近く前のあの日、父はどんなことを考えていたのでしょう。心やさしい父でしたから、きっと、幼い娘達のことを心配しながら、川の流れを見つめていたのだと思います。
正平さんも、ぜひ、そこから宇治川の流れをながめてみて下さい。 お願い致します。
京都府宇治市
岡田泰子さん(62歳)からのお手紙