にっぽん縦断 こころ旅
いつも楽しく拝見しております。
私の母方の実家が京丹波町須知(しゅうち)にあるのですが、お墓参りにいつも京都からお参りしていました。今は亡き父がいつも8mmカメラで私達家族を撮ってくれていましたが、私が2つの時にその近くの琴滝という美しい滝に行った際に起こった事件を、その8mmカメラが捉えていた事を時々思い出します。
フィルムでは、静かな美しい滝と滝壺を捉えているのですが、その中に1人滝壺の淵に釣りをしているおじさんが写っていました。そこに2歳の私がトコトコと歩み寄り、おじさんの横にあったエサの箱に手を伸ばし、エサをギュッと握って滝壺にばらまき始めました。おじさんは唖然とし、私の家族も慌てて私を止めようと駆け寄るのですが、すばしっこかった私は家族が駆け寄るまでに何度もそれを繰り返しているという珍事が写っていました。
私は幼かったので、その時は何で止められているのかわからなかったのですが、家族の中でその珍事はずっと話題になり、そのフィルムを見るたびに家族で笑うという事がたびたびありました。
私の家は色々な事があり、笑う事が消える事も度々ありましたが、父が映した8mmが家族の絆を とどめていた事を思い出します。その中でも、私のこの珍事が皆の心の紐を緩めていた事が何とも嬉しかぎりです。今は父も亡くなり、その8mmを上映する術がないのですが、私の心の中にいつまでも上映されている映像なのです。
もし、琴滝に寄っていただけるのなら、その美しく静かなたたずまいと、それを壊すような家族のドタバタの情景を思い浮かべて微笑んでいただければ良いかと思います。
NHKにっぽん縦断 こころ旅
火野正平 様
京都市
米澤 知子
京都市
米澤知子さん(54歳)からのお手紙