にっぽん縦断 こころ旅
こころ旅、毎回楽しみにしています。
私にとって人生を変えた忘れられない場所は、美山町から京都市に通じる佐々里峠です。峠の頂上に小さな祠もあります。
美山町と京都市に通じる道路が開通したときに桜が植樹されました。
その中に数本の十月桜があります。10月終わりから咲き3月下旬にも、もう一度咲きます。私はこの桜が大好きです。
そして峠の付近には栃の大樹も自生しています。栃の木も桜も厳しい自然環境の中で凛と咲き大きな実をつけて強い生命力を感じさせてくれます。
私は31歳の時甲状腺がんになり、医師から「長く 生きられないかも」と告げられました。
幼かった2人の子供を抱え途方にくれました。
手術、コバルト照射のあと長い闘病生活が続きました。
毎月、京都市の病院に自分で 運転してこの峠道を通りました。
10月下旬寒風の中で凛と咲く桜に何度も励まされました。冬期間は積雪が多く通行止めになりますが3月15日に峠が開通すると雪の壁の間を通って桜を見に行きます。雪の重みで折れていないかと。
来年も桜に会おうと頑張ってきたように思います。
再発もなく70歳を迎えます。よくここまで生きてこれました。
数年前に軽い脳梗塞を起こし、もう自分で運転して見に行くことはできなくなりましたが、これからもこの桜と栃の木と共に過疎の集落で生きていきたいと思っています。
数年前、家の片隅に十月桜と栃の木を植えました。
京都府南丹市
林 江津子 69歳
京都府南丹市
林 江津子 さん(69歳)からのお手紙