にっぽん縦断 こころ旅
誰かにそっと教えたい、こころの絶景
火野さん こんにちは。
私は今 北アルプスの山小屋で働いているのですが、同僚と共にいつも放送を楽しく見ています。番組を見ながら皆とあれこれ話す良い時間をありがとうございます。
私の心の風景、それは家の近所にある御射神社春宮です。
坂道を登った突き当たりに鳥居があり、坂道の麓から見るとその赤い鳥居が森の入口のように見えます。鳥居の脇にはしめ縄の巻かれた御神木があり、学校の帰り道にこの木の根元でよく一休みしたものです。
暑い夏の日、汗だくで坂を登って来てこの御神木の木陰に入ると 不思議と気温が、ほんの少し下がるような涼やかな空気が流れるのです。七五三や入学・卒業式の時にはこの鳥居の下で記念撮影をするのが我が家の恒例でした。町内子供会でのお宮清掃、夏休みのラジオ体操、秋には焼き芋大会やたいまつ祭など、子供の時は何かとお宮に集まる機会がありました。
集まりが終わると、親が呼びに来るまでだるまさんやグリコ、裏山探検や秘密基地作りなどをして飽きることなく皆で遊んでいました。
ですが徐々に歳を重ねるにつれ、部活や勉強などを理由に一人また一人と山を″卒業″していきました。いつの間にかお宮や裏山で遊ぶのは私一人になっていました。
私の家は母が居なく、家族は父と兄二人。紅一点で思春期を迎えた私は家庭でも学校でも居場所が無いような心許ない気持ちでいるのが常でした。
家にも学校にもいたくない、そんな時お宮の裏山をー人歩き回っていると不思議と寂しい心が癒されるのでした。父や先生にたくさん心配をかけた10代でしたが、最終的に足が向かうのはいつでもお宮の裏山。そこで最後のー線を越えることなく無事成人を迎えることができたように思います。
そうして大人になった今では故郷松本を見渡す北アルプスで働いています。
毎日表情を変える雄大な山なみを眺めていると、自身のちっぽけさと一日一日生かされている事実に日々気づかされ続けます。
そしていつでも私の心の中の原点にあるのは子供の頃過ごした
お宮の記憶です。
是非私の心の風景、御射神社春宮を訪れてみてください。
少し時期はずれますが、毎年10月3日には日本三大火祭りにも数えられる「たいまつ祭」が催されます。
私も自転車旅が大好きで毎日の放送が本当に楽しみです。
くれぐれもお身体には気をつけて元気に旅を続けてください
応援しています。
長野県 松本市 野畑 伊代 28 歳
※ 現在「たいまつ祭」は10月第2土曜日。
長野県松本市
野畑伊代さん(28歳)からのお手紙