【特集】大人の発達障害(ADHD・ASD)症状や治療法について

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【特集】大人の発達障害(ADHD・ASD)症状や治療法について

注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)といった発達障害は、子ども特有のものではありません。成長した後も症状が持続したり、大人になってから気づく人も増えています。大人の発達障害について、症状や治療法についてまとめました。

発達障害とは

日本では、発達障害は行動や認知の特徴(特性)によって、主にASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動性)、LD(学習障害)の3つに分類されますが、大人の発達障害はADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)が中心です。

注意欠如・多動症(ADHD)

「注意欠如・多動症(ADHD)」は、成人の3~4%が持っていると言われており、診断を受ける大人が増えています。「多動性・衝動性」による特徴と「不注意」による特徴があります。

多動性・衝動性による特徴

多動性・衝動性による特徴

多動性・衝動性による特徴として、「目的のない動きをする」「感情が不安定になりやすい」「過度なおしゃべりや不用意な発言」などがあります。
多動のある方は、行動として現れるため、子どものときに気づかれる可能性が高いと考えられます。大人になると目に見える多動症状はおさまってくることが多いのですが、手足や内面の落ち着きのなさが残ることがあります。

不注意による特徴

ADHD 不注意による特徴

不注意による特徴として、「注意を持続するのが難しい」「ケアレスミスが多い」「片づけが苦手・忘れ物が多い」などがあります。
大人になると許容されないことの範囲が広くなり、本人が負う責任も大きくなります。不注意による症状は、特に社会に出てから仕事などに支障を来し、問題につながることが増えます。

ADHDの治療

ADHDの特性を理解し、うまくコントロールすることで、よりスムーズで快適な社会生活を送ることができます。
例えば、「1つのことに考えが集中できない」ということは、アイデアが豊富で好奇心があるとも言えます。また、地道な作業などは苦手でも、フットワークの軽さや瞬発力が求められる場所では、もっと個性をいかすことができます。

治療としては、薬で症状をやわらげることや、行動の改善を図り、対処法を身につけることなどが行われています。

大人の「注意欠如・多動症(ADHD)」とは?特徴や治療について詳しくはこちら

周りがサポートできることは?

周囲の人たちは、ADHDの人たちがどんな苦労をしているのか理解し、サポートしていくことが重要です。

ADHDの方へのサポート例

職場では

  • 指示は文書にして伝える
  • 一度に多くのことを頼まない
  • 締め切りや約束には前もって声をかけるなど。

家庭では

  • スケジュールや持ち物を一緒に確認する
  • 過度に集中しないよう見守るなど。

「大人の発達障害 周囲はどうする?特性の理解こそサポートの第一歩」はこちら



自閉スペクトラム症(ASD)

「自閉スペクトラム症(ASD)」は、コミュニケーション・対人関係の困難とともに、強いこだわり・限られた興味を持つという特徴がある発達障害です。「スペクトラム」とは、「連続している」という意味で、ASDには、自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群などが含まれます。
ASDは、注意欠如・多動症(ADHD)と同じく、子どもの頃から症状が現れるものですが、大人になってから診断を受けるというケースが増えています。子どもの頃から症状があっても、それが大きな不適応に至らず、知的能力も平均以上の場合は、社会人になってから社会生活や人間関係における困難に気づくことがあります。近年、ASDの診断は子どもより大人になってから受けるケースが多くなっています。

コミュニケーション・対人関係の困難

ASDの人のコミュニケーションの特徴としては、「相手の立場に立って考えることが苦手」ということがあります。相手との距離感がつかめず、不用意な発言をすることで、困難を招くことがあります。
さらに、ASDでは、「言葉を文字通り解釈する」「想像力が乏しい」という特徴がみられます。言葉のニュアンスや表情から状況を察することが難しく、社交辞令や冗談が通じないことがあります。また、「適当に」や「もう少し」、「多めに」など、日常や仕事上でよく使われる、幅のある表現を受けての判断や対応が難しい場合があります。

強いこだわりによる困難

ASDのもうひとつの特徴、「強いこだわり・限られた興味」からトラブルが起こることもあります。「興味の対象が限定的で、好きなことには仕事を忘れて没頭する」という特徴があるため、例えば、仕事を忘れてゲームに打ち込むという人もいます。強いこだわりから、いつもと違う状況に対応できず、「融通が利かない」と思われてしまうこともよくあります。

ASDの二次的な症状

大人の自閉スペクトラム症(ASD)の二次的な症状

ASDの人は、その特性から、周りに「配慮がない」「空気が読めない」と思われてしまうことがあります。結果として、職場などで孤立してしまうことが多く、それが原因で二次的な症状を伴うこともあります。伴いやすい症状として、人間関係で孤立する状況などから、「引きこもり」や「うつ病」につながることがあります。また、ASDの人は不安や恐怖に敏感なため、強いストレスを受けやすく、「パニック障害」や「対人恐怖症」などを伴うことがあります。

ASDの治療

ASDの治療に有効とされる薬は、現時点ではありません。そのため、本人の思考や行動パターンを変え、行動を改善することが治療の中心になります。特に、社会の中で生きていくためのソーシャルスキルの習得などが重要です。そのため、これから就職を目指す人や、既に仕事をしている人のために、それぞれの目標に合った専門のグループケアなどを行っている医療機関などもあります。

また、全国のハローワークや、障害者職業センター、発達障害者支援センターなどでは、発達障害の特性に合った職業相談・就職支援を行っています。

自分の特性をよく理解し、不得手な場面での対処法を身につけることで、ASDの「こだわり」や「興味のあることに打ち込む」という面がプラスに働くこともあります。

ルールやマニュアルがしっかりしている職種(経理・法務など)、または数字は論理で対応できる職種(プログラマーなど)は、ASDの特性にフィットする可能性が高い仕事です。自分の得手・不得手なことを見極め、就きたい職業を具体的に検討してみてください。

大人の「自閉スペクトラム症(ASD)」とは?は詳しくはこちら

周りがサポートできることは?

周りの人は、本人の特性を理解し、その特性に応じた配慮が必要になります。

ASDの人へのサポート例

職場では

  • 指示はあいまいにせずに伝える
  • 指示を急に変更しない
  • 音や光に過敏な人には配慮するなど。

家庭では

  • 対人的なルールを伝えておく
  • 失礼な言葉を聞いたら指摘するなど。

「大人の発達障害 周囲はどうする?特性の理解こそサポートの第一歩」はこちら



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