【特集】早期発見がかぎ「大腸がん」 原因と検査、治療法、体験談まとめ

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【特集】早期発見がかぎ「大腸がん」 原因と検査、治療法、体験談まとめ

大腸がんは、日本人に多いがんのひとつです。ただし早期に発見して、適切な治療を行えばほぼ治すことができるため、検査が重要です。検診を正しく受診すれば約9割の確率で見つけることができます。大腸がんの原因や検査の目安、治療、「リンチ症候群」のセルフチェックについて紹介します。

大腸がんとは?

大腸がんは、進行が遅い、性質が比較的おとなしい、ほかの臓器に転移しても切除可能といった特徴があり、治る可能性の高いがんと言われています。そのため、早期に発見して適切な治療を受けることが大切です。外科手術で根治可能な大腸がんは、大腸がん検診を正しく受診すれば、約9割の確率で見つけることができます。

症状

大腸がんになると、便秘や下痢、血便や腹痛、便が細くなるなどの自覚症状が現れる場合があります。ただ、これらは大腸がんが進行してからの症状なので、早期発見のためには、定期的な検診を受けることが何よりも重要です。

大腸がんの原因

大腸がん増加の原因とは

大腸がんが増えているのは、食生活の欧米化が原因と考えられています。また、近年の研究により、肥満とアルコールのとり過ぎが、大腸がんを引き起こしやすい原因であることが明らかになってきました。ほかにも、運動不足や喫煙なども大腸がんの発症に関わっている可能性が高いとされています。また、高齢になると発症しやすく、遺伝性の場合もあります。

大腸がんについて詳しく知りたい方はこちら

大腸がんにつながる病気

大腸がんにつながる遺伝の病気
大腸がんにつながる病気

大腸がんにつながる病気は、「家族性大腸腺腫症」「リンチ症候群」の遺伝性の病気と、「大腸ポリープ(腺腫)」「潰瘍性大腸炎」などがあります。

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大腸がんにつながる遺伝性の病気(リンチ症候群)

大腸がんの危険因子のひとつにリンチ症候群という病気があります。生まれつきの体質(遺伝的な素因)が原因で起こる大腸がんの中で、一番頻度が高いものがリンチ症候群です。両親のどちらかがリンチ症候群である場合、その原因となる遺伝子の変化(バリアントといいます)が50%の確率で子どもに引き継がれます。

リンチ症候群の場合、20代や30代などの比較的若い年齢でがんが発生しやすく、手術でがんを取り除いても、残った大腸や他の臓器(子宮、卵巣、胃など)に別のがんができやすくなります。そして、同じ遺伝子の変化を持つ血縁者にもがんが発生する可能性が高くなります。

リンチ症候群セルフチェック

早く見つけて、がんを予防するためのセルフチェック法をご紹介します。

自分から見た第一度近親者と第二度近親者

チェックするのは、第一度近親者(両親、きょうだい、子どもなど)、第二度近親者(祖父母、おじおば、孫など)の中に、次の2つの項目に当てはまる人がいないかどうかをチェックしてください。

  • 50歳未満で大腸がんや関連がん*(子宮体がん、胃がん、卵巣がんなど)を発症した人がいる
  • 年齢に関係なく、大腸がんや関連がん*(子宮体がん、胃がん、卵巣がんなど)など、2つ以上のがんを発症した人がいる。

リンチ症候群について詳しく知りたい方はこちら



大腸がんの検査

検査の目安

検査の目安は?

検査は、「40歳以上の人は便潜血検査を年に1回は受ける」ことをおすすめします。自治体や職場の大腸がん検診で受けることができます。「50歳になったら一度は大腸内視鏡検査を受ける」ことが検査の目安としてすすめられます。また、家族に大腸がんを発症した人がいる場合は、家族が発症したときの年齢よりも10年早く内視鏡検査を受けることをおすすめします。

便潜血検査と大腸内視鏡検査

40歳以上の人に推奨されているのが便潜血検査です。便潜血検査では、採取した2日分の便を提出し、便に血液が混じっていないかどうかを調べます。2回のうち1回でも陽性になれば「要精密検査」となり、大腸内視鏡検査を受診します。

大腸内視鏡検査は、内視鏡を肛門から挿入し、大腸の粘膜の様子を調べます。病変が見つかったときは、組織を採取して調べたり、その場でポリープや早期がんを切除したりすることもあります。

新しい検査

新しい検査「CTコロノグラフィー」と「カプセル内視鏡」は、内視鏡よりは精度が低いと考えられていますが、どちらも、6mm以上のがんやポリープを9割以上発見できます。

  • CTコロノグラフィー
    CT検査のデジタルデータを用いて画像処理を行い、三次元画像でがんを診断することができる検査です。保険適用され、痛みを感じることはありません。
  • カプセル内視鏡
    カメラと無線装置が内蔵された、長さ約3cm、直径約1cmのカプセルを口からのみ込み、大腸を通過するときに撮影して、腫瘍などを発見します。大腸の癒着があるなど大腸内視鏡検査が難しい人に限り、保険適用で受けることができます。

大腸がんの検査について詳しく知りたい方はこちら



大腸がんの治療

大腸ポリープ

大腸ポリープ

大腸がんのもととなる大腸ポリープには、腫瘍になるものとならないものがあります。腫瘍にならないものは年をとると誰にでも見られる「過形成性ポリープ」と呼ばれます。一方、腫瘍には良性と悪性の2タイプがあります。大腸ポリープの約8割は良性の腫瘍で「腺腫」と呼ばれ、このうち悪性のタイプががんです。ただ、良性でも大きさが1cmを超えるとがんを含んでいる可能性が高まり、いわゆる前がん病変とされます。

内視鏡による治療

内視鏡による治療

大腸がんは、大腸表面の粘膜から発生し、進行するにつれ深く侵入して粘膜下層へたどりつきます。粘膜下層には、リンパ管や血管が通っているため、がんが深く侵入するとリンパ節などへ転移する恐れがあります。

内視鏡による治療は、粘膜下層に侵入する前の、がんが表面の粘膜にとどまっている場合に行われ、ポリープの形により、主に「ポリペクトミー」「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」の3つの治療法があります。早期がんや前がん病変の段階で腫瘍を内視鏡的に発見・切除することで大腸がんの罹患率ひいては死亡率まで減少できることがほぼ確実となっているため、これらの内視鏡治療を適切な段階で受けることが重要となってきます。

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