詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年2月 号に掲載されています。
-
テキストのご案内
※品切れの際はご容赦ください。 -
購入をご希望の方は書店かNHK出版お客様注文センター
0570-000-321 まで - くわしくはこちら
更新日
痔ろうは、お尻にたまった膿(うみ)を排出するため、肛門括約筋を貫通するようにできたトンネルのことです。
肛門の奥、歯状線のところには小さなくぼみがあり、そこに細菌が入り込むことで炎症が起こり、膿がたまります。これが痔ろうの前段階、「肛門周囲膿(のう)よう」です。肛門周囲膿ようができると、肛門周囲に強い痛みが現れたり、37~38℃程度の発熱が生じます。膿ようが皮膚に近いところにできると、肛門周囲の皮膚が赤く腫れることもあります。
肛門周囲膿ようが破れて痔ろうができると、痛みは治まります。痔ろうの管を通って膿が出てくるため、下着が汚れることがあります。
痔ろうは圧倒的に男性に多くみられます。年齢では、男女ともに30~40代での発症が最も多いとされていますが、10代や60代、70代で発症することもあります。下痢をすると水状の便が歯状線のくぼみに入り込みやすいため、下痢を繰り返している人も肛門周囲膿ようや痔ろうになりやすいといえます。
一度できてしまった痔ろうは、自然に治ることはありません。生活改善や薬で治すことはできないため、痔ろうを完治させるには手術が必要になります。
痔ろうは肛門を締めたり緩めたりするのに重要な肛門括約筋を貫通しているため、どうしても括約筋を一部切り取らなくてはなりません。かつては括約筋を大きく切除し、肛門を締める機能が損なわれることがありましたが、現在はできるだけ肛門本来の機能を残せるような手術が行われています。ここでは主な3つの手術法を紹介します。
切開開放術は、痔ろうの形が単純で、括約筋の比較的浅い位置を通っている場合に行われる手術法です。痔ろうの管とともに括約筋を切除します。括約筋の端を少し切る程度なので、肛門の機能に影響はありません。
括約筋温存術では、痔ろうの入り口から出口までをくり抜くように切除します。痔ろうの管が括約筋の深いところを通っていて、切開開放術では肛門の機能を損ねる恐れがある場合に検討されます。括約筋温存術は、その名のとおり括約筋を残すことができるので、深い位置の痔ろうでも肛門の機能を損ねないことが期待できます。
一方、非常に高度な技術が必要で、再発することも少なくありません。
肛門の機能を保ちつつ、再発も少なくて済む手術法として注目されているのがシートン法です。痔ろうの管にゴムひもを通して縛り、ゴムが縮もうとする力を利用して、ゆっくりゆっくり括約筋を切開していきます。時間をかけて少しずつ括約筋を切開していくことで、切開されたところは治っていきます。そのため、括約筋の損傷が少なくて済むのです。
痔ろうができた場所によって異なりますが、3か月半から半年ほどかけて治療を行います。場合によっては1年ほどかかるケースもあります。その間、2~3週間おきに通院し、ゴムひもを締め直したり交換したりする処置を受けます。最終的にゴムが外れることで治療が完了します。
痔ろうは自然に治ることはないため、気づいたら早期に肛門外科を受診し、手術を検討するようにしましょう。
いぼ痔とは?切れ痔とは?詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年2月 号に掲載されています。