Aさん(72歳・男性)が体調の異常を感じたのは、毎朝日課にしているラジオ体操が終わったあとでした。急に気分が悪くなり、しばらく横になってみましたが、体調がよくなる気配はありません。服が体にはりつくほど全身に汗をびっしょりとかいていました。
ただごとではないと判断したAさんは、近所のかかりつけの診療所ではなく、総合病院へ向かいました。そこで検査を受けていると、Aさんの容体が急変しました。付き添っていた妻は、その時の様子をこう語っています。
「夫は体をくの字に曲げて、痛い!って言いました。心電図がピーッと音をたてて、ベッドの上で夫は白目をむいていました。奥さんは外に出て下さいと言われました。」
実はAさんは、このとき、心室細動を起こしていました。心室細動とは不整脈の一つで、心臓の心室と呼ばれる部分が小刻みに震え、全身に血液を送り出すことができなくなる、非常に危険な状態です。Aさんの場合、心室細動を引き起こした原因は心筋梗塞でした。心筋梗塞とは、心臓に栄養や酸素を送り込む血管、冠動脈が詰まり、全身に血液を送り出すことができなくなる状態です。すぐに処置をしないと突然死につながることもあります。