脳の血流が悪くなることで起こる血管性認知症 症状や原因、検査について

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認知症血管性認知症脳卒中物忘れをするうつ状態が続く意欲の低下脳・神経

脳卒中によって起こる血管性認知症

高齢になるほどなりやすい脳小血管病

血管性認知症とは、脳の血流障害が原因となって起こる認知症で、大きく2つのタイプに分けられます。1つが脳卒中による認知症で、もう一つが脳小血管病による認知症です。

脳卒中による認知症

脳卒中によって起こる血管性認知症

脳の血管が詰まる脳梗塞や脳の血管が破れる脳出血などの脳卒中によって脳の神経細胞の一部が死滅すると、認知症が起こります。

脳梗塞、脳出血の画像と症状

多くの場合、脳卒中の発症時に半身の麻痺やろれつが回らない、フラフラするなどの明確な症状が起こります。この場合、患者さんは直ちに病院に運ばれ、脳卒中の急性期治療を受けることになります。
そして、その後数か月以内に認知症を起こす場合があります。

「血管性認知症の症状チェックについて」はこちら

高齢になるほどなりやすい脳小血管病

脳小血管病は、脳卒中のように脳の太い血管に起きるのではなく、脳の細い血管に梗塞や出血が起こります。そのため多くの場合、症状が出にくく、知らないうちに病変の数が増えてしまうことがあり、認知症が起こりやすくなります。

脳小血管病のCT画像と症状

脳小血管病は、中年以上だと多くの人に数か所は病変ができていると考えられています。数が少なければ影響は少ないものの、病変は加齢とともに増えやすいため、高齢になるほど脳小血管病による認知症が起こりやすくなります。また、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や喫煙など、動脈硬化の危険因子がある場合も認知症が起こりやすくなります。

血管性認知症とアルツハイマー病との関連性や相違点

物忘れの違い

物忘れといえば、アルツハイマー病を思い浮かべる方も多いでしょう。アルツハイマー病による物忘れと血管性認知症の初期症状による物忘れには違いがあります。

アルツハイマー病と血管性認知症の物忘れの違い

アルツハイマー病の場合は、記憶が全部ぬけ落ちることが特徴です。血管性認知症の場合、特に初期はアルツハイマー病のように全部ではなく、一部が欠落する形で記憶障害が出ます。
例えば、アルツハイマー病の場合、朝食をとったこと自体を忘れてしまい、食事のあとに「まだ食事をとっていない」ということが多くあります。一方、血管性認知症の場合は、食事したことは覚えていますが、おかずが何であったかを思い出せないといった、まだら的な物忘れが多くなります。

アルツハイマー病と血管性認知症の混合型

アルツハイマー病と血管性認知症の混合型

近年では、アルツハイマー病と血管性認知症の混合型が非常に多くなっているといわれています。岡山大学が実施した調査では、混合型が全体の5〜6割を占めているという結果でした。

血管性認知症の検査

血管性認知症の検査

血管性認知症の基本的な検査は

  • 症状などを聞き取る問診
  • 記憶力などを調べるテスト
  • CTやMRIなど、脳の画像検査

です。

脳卒中を起こしている場合

脳卒中を起こしている人は、通院している医療機関でCTやMRIなどの検査を行います。通常は半年に1回くらいのペースで2〜3年、画像検査を受けることが勧められます。状態が安定しているようであれば、年に1回くらいのペースになります。
記憶力テストなどを併せて行い、精密検査を進めていくことが大切です。

脳卒中を起こしていない場合

脳卒中を起こしたことがなくても、認知症が疑われる症状があれば専門医を受診することが勧められます。脳の画像検査や記憶力テストをすることで、認知症の発見につながります。

危険因子がある場合、脳ドックの受診を

血管性認知症の危険因子には「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」「喫煙」などが挙げられます。70歳以上で危険因子がある人は、脳ドックの受診も勧められます。脳ドックとは脳の人間ドックのようなもので、費用は施設によって異なりますが4〜10万円ほどが目安です。

血管性認知症の治療について

治療の基本は生活習慣の改善と薬

血管性認知症の対処法について

血管性認知症の対処法は大きく分けて3つあります。

  • 脳卒中の再発を防ぐ
  • 脳小血管症の悪化を防ぐ
  • 認知症の症状を改善する治療

「血管性認知症の対処法、薬による治療について」はこちら

注目の認知リハビリテーション

最近では薬による治療だけでなく、体操療法やクッキング、フラワーアレンジメントといった認知リハビリテーションも注目を浴びています。
手足を動かすことによって、血管性認知症への効果が期待されています。

『Q&A 認知症』はこちら

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    これも認知症「血管性認知症」