便秘 タイプ別の対策 食生活、運動、排便環境、薬

更新日

セルフケア・対処食で健康づくり痔(じ)便秘便秘が続く大便がおかしい下腹部痛がある胃・腸・食道

「便秘」で悩む人は、全国で1000万人以上と言われています。「苦しくなったら下剤に頼る」「洗浄トイレで刺激して出す」など、自己流の対策の中には、かえって便秘を悪化させてしまうものもあるので注意が必要です。しかも、便秘のタイプによって有効な対策が違います。自分のタイプに合った方法を知って、便秘のモヤモヤを解消して、スッキリした毎日を送りましょう。

“たかが便秘”ではない

便秘の症状自体もつらいですが、慢性の便秘で悩んでいる人では脳卒中による死亡者が2倍以上、心筋梗塞などの死亡者も1.5倍以上というデータもあります。強くいきんで血圧が上がることが原因のようです。便秘はほかにも慢性腎臓病などのリスクを高めることもわかっているので、「便秘くらい大したことはない」と放っておかず、適切な対処が必要です。

便秘のタイプ

便秘は原因によって、「排便の回数が少ないタイプ」と「排便が困難なタイプ」の2つに大きく分けられます。

排便の回数が少ないタイプ(週3回未満)

便秘に悩む人に圧倒的に多いのが、このタイプです。排便の回数が減ってしまう原因は大きく2つあります。1つは、ストレスなどの影響で大腸の動きが悪くなり、便を直腸、肛門へと、うまく送り出せない場合です。もう1つは、食事の量が少ないために、便の量そのものが少なくなってしまう場合で、若い女性や高齢者に多く見られます。
排便の回数が少ないと、便が長い間、大腸にとどまり、水分が吸収されて便が硬くなるので、いっそう排便しづらくなります。硬くて小さな「コロコロ便」の状態になります。

排便が困難なタイプ

肛門の筋肉や、骨盤の下にある骨盤底筋などに障害が起こり、筋肉がゆるまなくなると、便が直腸にたまっていてもなかなか排便できません。そのため、強くいきんでも、便が肛門でつまる感じになります。排便できても残便感があり、頻回便・つまり便の回数が増えるなどの症状が現れます。原因は「筋力の低下」や「いきむ力の衰え」、直腸にポケット状のふくらみができる「直腸瘤(りゅう)」などがあり、特に高齢者に多く見られます。

排便の回数が少ないタイプ(週3回未満)の対策

排便の回数が少ないタイプ(週3回未満)の対策の柱

「排便の回数が少ないタイプ(週3回未満)」の対策の柱は、「食生活」「運動」「排便環境」「薬」です。

対策の柱「食生活」

1日3食 欠かさずとる

排便の回数が少ないタイプの人で偏食やダイエットをしている人は、そもそもの便をつくる食事量が不足しています。食事をしないと胃腸が動き始めません。1日のうちで最も活発に胃腸が動くのは朝なので、特に朝食を抜かないようにしましょう。

発酵食品や食物繊維をとる

食物繊維 豊富な食品

ヨーグルトや納豆などの発酵食品や食物繊維をとって腸内環境を整えることが大切です。腸内細菌のバランスが崩れていると、便秘を起こしやすくなります。水溶性の食物繊維は、いわゆる善玉菌のエサになります。不溶性の食物繊維は、便のカサを増やし押し出しやすくします。どちらもとるようにしましょう。
食物繊維が豊富な食品として、「便通異常症診療ガイドライン2023(慢性便秘症)」に掲載されているのは、キウイフルーツ、プルーン、玄米などの米、豆腐や納豆などの豆類などです。このような食品を多くとると、慢性便秘症の人の排便回数が増加することがわかっています。ただ、ここに挙げた食品に限らず、食物繊維を多く含む食品の中で、自分が食べやすいものを意識してとるとよいでしょう。ご飯を玄米や雑穀にする、パンは全粒粉を使ったものにするなどは、食物繊維を習慣的にとるためにおすすめです。

水分摂取

1日に十分な食物繊維(25g)をとったうえで、多くの水分(約2リットル)をとると、排便回数が有意に増加することがわかっています。排便の回数が少ないタイプの便秘の原因の1つは、便が硬くなってしまうことですが、水分を摂取することにより便が軟らかくなり、排便しやすくなります。高齢者や前立腺肥大のある人は水分を控える傾向がありますが、便秘を招きやすくなるので注意しましょう。ただし、腎臓病などで水分摂取量の制限を指導されている人は、医師に相談してください。

対策の柱「運動」

排便では、肛門や骨盤の筋肉の他にも、いきむ際に「腹筋」など全身のさまざまな筋肉が使われます。筋力の維持には日常的な運動が大切です。
大腸を動かすのは副交感神経ですが、運動によって交感神経を刺激すると、休息したときに副交感神経の働きが高まり、大腸が動き出します。
特にウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動は、腸の動きをよくし、便秘改善につながることが分かっています。毎日の生活のなかでこまめに動く、階段の上り下りをするなど、積極的に体を動かすようにしましょう。

対策の柱「排便環境」

排便環境を整える心得

排便環境を整える心得は3つあります。

  • その一 トイレタイムをつくる
  • その二 トイレは我慢しない
  • その三 ○○○○の姿勢で座る

その一 トイレタイムをつくる

毎日時間を決めてトイレに行くようにすると、最初のうちは便意が起こらなくても、しだいに脳や体が順応して、決まった時間になると脳から指令が出て便意が起こるようになります。とくに朝は、忙しいからといってトイレを後回しにしがちですが、少し早起きをして、出勤や通学などの前に排便を済ませるだけの時間的な余裕をもつことが大切です。

その二 トイレは我慢しない

「便意」を感じたときに忙しかったり、トイレが近くになかったりして我慢をすると、便意は引っ込んでしまいます。しかし、これを繰り返していると、直腸が鈍感になって「便意」を感じる力が弱まり、排便のリズムが乱れて便が停滞してしまうといった悪循環に陥ります。会社や学校など外出先で便意をもよおした場合でも、迷わずトイレに行くことのできる環境を整えておくことも大切です。

その三 ○○○○の姿勢で座る

排便時の姿勢

便秘の改善には、排便時の姿勢も大切です。背筋を伸ばして座ると、直腸から肛門にかけては横から見ると「く」の字のような形をしています。

前かがみの姿勢だと排便しやすくなる

「○○○○」の姿勢で座るとは、ロダンの彫刻「考える人」のような姿勢で座ることです。排便時に上半身を前かがみにして深くかがむと、直腸から肛門がまっすぐに近い形になり、排便しやすくなります。直腸と肛門をまっすぐに近い形にするには、太ももと上半身の角度が、35度くらいになるように上半身を前傾させるのが理想的な姿勢です。ポイントはひざを肛門より高い位置にすることです。トイレに足台を置くのも一つの工夫です。

洗浄トイレでお尻を刺激して出すようにしているという人もいるかもしれません。これは、時々使ってスッキリ出るというなら、悪いとは言えません。ただし洗浄トイレに過度に依存してしまうと、刺激がないと排便ができない、というようになってしまいます。ふだんの生活習慣を見直して便秘改善を目指すことが基本です。

対策の柱「薬」

処方薬

処方される薬には、便を軟らかくして排便を促す作用がある「酸化マグネシウム」「ポリエチレングリコール」「ラクツロース」などがあります。
また、ここ数年、新しい効き方をする薬もいろいろ登場しています。腸の中に水分を分泌させ便を軟らかくする作用がある上皮機能変容薬「ルビプロストン」「リナクロチド」、大腸の動きを活発にする胆汁酸が大腸に届きやすくする胆汁酸トランスポーター阻害薬「エロビキシバット」などがあります。
漢方薬の大建中湯(だいけんちゅうとう)は、おなかが張って腹痛もあるという人の便秘によく使われます。

市販薬

市販薬にも便秘薬があります。適切に使って、効果があれば、それでもよいのですが、「アントラキノン」系の刺激性下剤には注意が必要です。センナ、ダイオウ、アロエなどに含まれる成分です。市販薬ではセンノシドやセンナと表記されています。一時的に効果がありますが、頻繁に使うと次第に効かなくなり、便秘を悪化させる危険があります。毎日使用するのはやめましょう。どうしてもというときにだけ、一時的に使うようにしましょう。

排便が困難なタイプの対策

「食生活」「運動」「排便環境」については、「排便回数が少ないタイプ」と同じですが、「薬」については少し違う対応をします。

排便が困難なタイプの薬

ざ薬、浣腸などは、直腸を物理的に刺激することによって排便を促します。ただし、耐性ができると効果が弱くなることがあるので、長期連用は避けましょう。のみ薬のポリカルボフィルカルシウムは、便をゲル状にして出しやすくします。整腸剤は乳酸菌などの製剤で、腸内環境を整えて排便を促します。

受診の目安

便秘に悩む人の中には「毎日排便しないといけない」と思っている人も少なくありませんが、週に3回程度の排便でも、腹痛や腹部膨満感、残便感などがなく、スムーズに出ていれば問題はありません。市販薬を適正に服用しても効かず、不快感が続く場合は受診しましょう。便秘外来や胃腸科、消化器内科などが適していますが、一般の内科などでもよいので、受診して相談しましょう。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2024年3月 号に掲載されています。

きょうの健康テキスト
テキストのご案内
※品切れの際はご容赦ください。
購入をご希望の方は書店かNHK出版お客様注文センター
0570-000-321 まで
くわしくはこちら

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    なんとかしたい!便通の悩み「便秘 2つのタイプ・あなたはどちら?」