日常にひそむぜんそくの原因

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セルフケア・対処ぜんそくせきがでる息切れがする・息苦しいのどがおかしい呼吸器

さまざまなぜんそくの原因

日常生活の中にひそむぜんそくの原因はさまざまですが、大きく2つに分けられます。「アトピー型」と「非アトピー型」です。いずれも症状は同じですが、原因を知ることは、適切な予防法や増悪抑制につながるので、とても重要です。

小児ぜんそくの9割、成人ぜんそくの6割ほどに関係するのがアトピー型ぜんそくです。アレルゲンとの接触を減らすことが予防策になりますが、何が自分のアレルゲンとなっているかは、血液検査で調べることができます。ぜんそくのアレルゲンとして、最も多いのは「ダニ」です。ダニは家の中に生息していますが、死骸やフンもアレルゲンになるため注意が必要です。

ぜんそくの原因となるもの赤いグループが「アトピー型」 青いグループが非アトピー型

ぜんそくと花粉症

アトピー型のぜんそくの1つとして、春先に気になるのは花粉症によるぜんそくの悪化です。花粉症は「上気道」の炎症で、ぜんそくは「下気道」の炎症ですが、気道は一本でつながっているため、上気道の炎症は下へと広がり、下気道の炎症を悪化させます。

上気道と下気道

さらに、花粉症はぜんそくの原因となる「好酸球」を活性化させるため、ぜんそく患者にとって花粉症対策はとても重要となります。ぜんそくを悪化させないためには花粉症の治療も同時に行うことが大切です。具体的にはぜんそくの治療を継続しながら、花粉症には抗アレルギー薬や炎症を止めるための点鼻の吸入ステロイドなどを使用する治療が考えられます。

非アトピー型ぜんそく

アレルゲンを原因とするアトピー型のぜんそくに対し、アレルゲン以外による非アトピー型のぜんそくがあります。

非アトピー型ぜんそく

COPD(ぜんそくとの合併)

主な原因は喫煙で、タバコの成分に含まれる有害物質が気道内部の粘膜を傷つけることで慢性的な炎症を起こし、ぜんそくに発展することがあります。好酸球が関係する典型的なぜんそくの炎症とは違い、「好中球」という白血球が関係します。ぜんそくに有効なステロイドが効かず、治療は難しくなります。また、副流煙にも注意が必要です。

アスリートぜんそく

スポーツ選手が行うハードなトレーニングは、呼吸回数が極めて速くなるため、気道が乾燥し、温度も下がります。そのため、気道がダメージを受け、過敏性が上がることで収縮しやすい状況となります。しっかりとしたウオームアップと適度な水分補給が重要となります。ぜんそくではない人はあまり心配する必要はありませんが、ぜんそくの人は激しい運動で悪化する場合があるので注意が必要です。

アスピリンぜんそく

ぜんそく患者のうち5~10%ほどに起きる、アスピリンによるぜんそくの増悪です。かぜをひいたことでアスピリンが入った解熱鎮痛薬を服用し、熱は下がったもののぜんそくの発作が起きてしまう、というのが典型的な状況です。発作症状は非常に強く起こることが多く、早急に医療機関を受診することをおすすめします。

肥満によるぜんそく

脂肪細胞からは、レプチン(ホルモンの一種)が分泌され、好酸球を活性化させます。そのため、太っていること自体がぜんそくにつながります。また、脂肪が多くなると、横隔膜が押し上げられて肺が圧迫され、呼吸も浅くなるため、ぜんそくの悪化にもつながります。

実践できる予防法・対策

気道の壁は乾燥によってはがれやすくなり、防御機能が落ちてしまうため、保湿はすべてのタイプのぜんそくに有効です。マスクはホコリやウイルスの侵入を防ぐだけでなく、気道の乾燥も防ぐのでおすすめです。こまめな水分補給も心がけましょう。
また、アレルゲン対策を考えると掃除も重要です。主なアレルゲンはダニです。ダニ対策となる掃除をすることは、ぜんそくの予防・悪化防止に効果が期待できます。

ダニ掃除

ダニ対策専門の研究所の協力のもと、オススメのダニ掃除をご紹介します。家具モニター調査によると、ダニの潜伏数が多い家具ワースト3は「じゅうたん・カーペット」「寝具(ふとん、枕など)」「ソファー」です。中でも気になるのは使用を避けることができない寝具の掃除。生きたダニは繊維にしっかり張り付き、取り除きづらいため、ポイントとなるのは「ダニ退治とあとしまつ」です。

まず生きたダニを退治するオススメの方法はこちらです。

おすすめのダニ退治

ダニは「高温と乾燥」に弱いことが、退治のための重要なポイントです。乾燥機はとても有効なので布団など大きいものもコインランドリーを活用し、対策をしてください。
ほかにも60度以上のお湯に15分以上を漬け込むことでダニを死滅させることができます。小さいものは、スチームアイロンも効果があります。

あとしまつとして重要なのはフンと死がいの除去です。フンと死がいは蓄積していくため、放置すると生きたダニよりもアレルゲンの原因となってきます。洗濯機にかけられないものも手洗いをするなど、定期的に洗い流すようにしましょう。掃除機による除去も有効です。できれば寝具の裏表を、なるべくゆっくりとかけるようにしてください。掃除機をかける前に叩いておくと中にひそんでいる死骸やフンが表面に浮いてくるため、吸い込みやすくなりますが、周囲へ飛散するためマスクを着用するなどの対策が必要です。

ぜんそくには多くの原因があります。何が原因なのか、なぜ症状が悪化しているのかをしっかり把握することが重要です。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2024年3月 号に掲載されています。

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