放置してはいけない“咳(せき)ぜんそく”
ぜんそくと密接な関係にあるのが、その前段階ともいえる“咳ぜんそく”です。いずれも気道の慢性的な炎症が原因ですが、ぜんそくはゼーゼーヒューヒューとなる喘鳴(ぜんめい)がありますが、咳ぜんそくは気道の太い場所の炎症のため、喘鳴がなく、その症状は長引く咳だけです。
専門の医療現場では「ぜんそく」と「咳ぜんそく」を使い分けますが、正確に診断することは難しく、風邪をこじらせて長引いている咳も咳ぜんそくと診断されるケースが多いのが現状です。そのため咳ぜんそくは「大した病気ではない」と捉えられがちですが、その3~4割が典型的なぜんそくに移行し、大人の場合は完治することが難しい病気になってしまうため、しっかりと治療を行う必要があります。
咳ぜんそくが進行してぜんそくへ《40代女性・Aさんの場合》
Aさんは長引く咳に悩まされていたため、病院を受診しました。「咳ぜんそく」と診断されましたが、処方されたステロイドの薬で咳はすぐに治まりました。安心したAさんは薬をやめてしまいました。
ところが3か月後、再び咳が出ました。病院に行くと、また「咳ぜんそく」と診断され、前回と同じ薬ですぐに咳は治まりました。その後、Aさんは1~2か月おきに、咳が出ては薬をのむことを繰り返していました。すると1年後、これまでにない激しい咳と息苦しさに襲われました。咳ぜんそくはぜんそくへと移行してしまったのです。その後、Aさんは薬が手放せない生活になってしまいました。Aさんは何がよくなかったのでしょうか?
Aさんのよくなかった対応
重要なのは、Aさんは症状が出た時だけ治療をして、治療を継続しなかったことです。咳ぜんそくは、ぜんそくと同様に慢性の炎症によるものであるため、症状は良くなったとしても炎症は残り続けています。症状がなくても治療を継続してしっかりと炎症を抑え込むことが重要だったのです。さらに、良くなったり悪くなったりということを繰り返すうちに、気道の壁が厚くなり、空気の通り道が狭まるリモデリングも起きてしまいます。
大人の場合、ぜんそくは完治が難しい病気ですが、咳ぜんそくのうちは完治が可能です。薬の服用によって1週間ほどで咳は治まりますが、しっかりと炎症を抑えるためには3か月を目安に治療を継続することが大切です。
咳ぜんそくを判断するためのポイント
咳ぜんそくを見分けるポイントは以下の通りです。
咳ぜんそくは「コン コン」という痰(たん)の絡まない“空咳(からぜき)”で、8週間以上続いた場合に“慢性的”と診断されます。咳ぜんそくだけでなく、他の疾患が隠れている場合もありますので、咳が8週間以上続くようなら受診をおすすめします。
また、咳ぜんそくはハウスダストなどのアレルゲンにさらされる中で、徐々に体が反応しやすくなっていき、症状が突如現れます。そのため、表面的には何のきっかけもなく症状が始まるように見えることが多くあります。ただし、風邪をひいたことをきっかけに咳が長引いているような場合は咳ぜんそくではないことが多いようです。
特に就寝時は、副交感神経が優位となること、そして、日中との気温差により、気道を収縮させる物質「ヒスタミン」を分泌する細胞が活性化されるため、咳ぜんそくの場合は症状が出やすくなります。
長引く咳がある場合は、咳だけだからと軽く考えずに、咳の原因をしっかり調べることが重要です。