ぜんそく “本当の怖さ”

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セルフケア・対処ぜんそくせきがでる息切れがする・息苦しいのどがおかしい呼吸器

絶対ダメ!ぜんそくの放置

ぜんそくの推定有病率

ぜんそくの患者数は、厚労省の調査によると大人で4%、子どもは7%です。しかし、これは医療機関でぜんそくと診断された人の割合で、実際には推定で1,000万人、およそ10人に1人がぜんそくだと考えられます。そして、その8割以上はぜんそくを放置しているとも言われています。また、ぜんそくは“子どもの病気”というイメージがありますが、大人のぜんそく患者のうち、7割以上は成人してから発症しているため、年齢に関わらず注意が必要です。また、「小児ぜんそく」は適切な治療で完治することが多いのに対して、「大人のぜんそくは完治が難しいのが特徴です。
一方で近年、治療法が飛躍的に進歩しているため、適切な治療を受ければ、症状を劇的に抑え込んだり、薬の量を減らしたりすることができるようになっています。ぜんそくのことを正しく知ることが重要です。

ぜんそくは“慢性的な炎症”が原因

ぜんそくとは、気管支などの気道に過剰に集まった好酸球(白血球の一種)が粘膜を攻撃し、炎症を起こすことで、咳や痰、息苦しさなどの症状が現れる病気です。
炎症は慢性的で、症状がなくなっても、その原因は簡単には消えていません。放置すると好酸球は拡大・増殖し、気道の粘膜もどんどん過敏になってしまいます。そして、何かのきっかけで気道が異常な収縮を起こすと、激しくせき込み、呼吸困難に陥るぜんそく発作が起きてしまうのです。

ぜんそく患者の気道と発作時に収縮した気道(左)ぜんそく患者の気道 (右)発作時に収縮した気道

発作は薬で抑えることができますが、発作と応急処置を繰り返すうちに気道を囲む平滑筋が太くなり、気道そのものが狭くなるリモデリング」が起きてしまうこともあります。すると呼吸機能が低下し、ぜんそくをさらに悪化させてしまいます。

ぜんそくと気づくには?

ぜんそくかどうかを判断するために重要なのは呼吸の音です。呼吸をするとき、胸部で“喘鳴(ぜんめい)”と呼ばれる「ゼーゼー」「ハーハー」「ヒューヒュー」という音が聞こえるのが特徴です。特に就寝時、早朝に鳴ることが多いのが喘鳴の特徴です。
他の病気の可能性もありますが、喘鳴があった場合は医療機関で受診することをおすすめします。

重症度に関わらない ぜんそくの怖さ

上を見上げている男性の写真

番組では46歳で発症し、初期症状にも関わらず、初めて経験したぜんそく発作で、死の恐怖に直面したという患者さんの例を紹介しました。
ぜんそくで亡くなる場合、死因のほとんどは窒息死です。発作が起こると重症度に関わらず呼吸困難に陥るため、一刻も早く気道を広げる治療が必要になります。異常収縮した気道が自然と元に戻ることは少ないため、対処する治療法がなければ、すぐに救急車を呼ぶなど、迷わず救急医療を受けましょう。

死者数を激減させた吸入ステロイド

ぜんそくは治療法の発達が目覚ましく、90年代半ばには年間の死亡者数が7,000人を超えていましたが、その後、激減しています。

ぜんそくによる死亡推移

その最も大きな要因が吸入ステロイドによる治療の登場です。90年代以前は、ぜんそくは気道の収縮そのものが原因と考えられていたため、狭くなってしまった気道を広げるための気管支拡張薬が治療の主体でした。しかし、気道が狭くなる原因が慢性的な炎症であると分かったことで、炎症に対して高い効果のある吸入のステロイドの吸入薬が治療に使われるようになり、死亡者の激減につながったのです。

吸入ステロイド

吸入ステロイドはただ吸い込めばよいというわけではなく、気道の細い部分にまで行き渡らせる必要があり、吸入するにはコツが必要です。
吸入器にはさまざまなタイプがあります。例えば、エアータイプのものは薬を出すために指で押すタイミングと吸うタイミングがずれると、あまり吸入ができません。一方、ドライパウダータイプのものは吸う力が弱いと効率よく吸入しづらいという特徴があります。それぞれにコツが異なるために難しいという課題もあります。吸入ステロイドの効果を十分に発揮するためには、しっかりとした吸入指導を受けることが重要です。

治療は継続が大事

ぜんそくの正体は慢性的な気道の炎症であるため、症状が出ていないときも気道の炎症は残っている可能性があります。症状から自己判断をして治療を中断してはいけません。悪化を食い止めるためには根気よく治療を続けることが大切です。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2024年3月 号に掲載されています。

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    放置しないで!身近な“ぜんそく”「ぜんそくの“本当の怖さ”とは」