56歳のときに悪性リンパ腫に
Aさん(72歳・女性)は大学卒業後に会社を起業し、人一倍働いていました。スポーツが好きで健康には自信がありました。そんなAさんが大病を患ったのは56歳のときでした。
「首にグリグリした腫れた部分があるなと思っていたんです。ただ夜遅くまで働き続けていたので、肩がこったのかなと思っていました」
Aさんは、その年の健康診断で医師に首の腫れについて相談。触診をしてもらうと、医師の顔色が変わり、「これは異常だから急いで病院を受診した方がいい」と言われました。Aさんは総合病院を受診して精密検査を受けました。結果は「悪性リンパ腫」。しかも一番進行した「ステージⅣ」の状態で、首以外のあちこちにも腫瘍ができていました。
「自分の体がそんな末期がんの死に直面している状態だったとは。反対になんとか頑張ろうという気持ちもわいてきました」
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫とは、血液成分である白血球の一種・リンパ球ががん化する病気です。リンパ球は血管や体中に張り巡らされたリンパ管を通って全身に流れています。そのため、リンパ管の途中にある、首・わきの下などのリンパ節や、全身のあらゆる臓器、例えば、肺・胃・脳などに、腫瘍ができることがあります。
「R-CHOP療法」で腫瘍が画像から消えた
Aさんは、「R-CHOP療法」という治療を受けることになりました。「R-CHOP療法」は、悪性リンパ腫で最初に選択されることが多い、薬による治療法です。Rは「リツキシマブ」という分子標的薬、CHOは3種類の抗がん剤、Pは「ステロイド」です。
治療は21日間単位を1回として行われます。1日目に薬を投与し、残り20日間は身体の回復を待ちます。この治療を、6~8回繰り返し行います。
Aさんは、この治療を6回受けました。治療の途中でAさんは、脱毛・吐き気など副作用にも悩まされました。しかし、治療が功を奏し、腫瘍は画像上見えなくなりました。
悪性リンパ腫が再発 新しい薬で再び画像から腫瘍が消える
最初の治療から10年が経過したころ、Aさんの悪性リンパ腫は再発しました。
悪性リンパ腫は、がん細胞の形態や性質によってさまざまなタイプがあります。Aさんの悪性リンパ腫は再発しやすいタイプだったのです。
そこでAさんは、新しい分子標的薬「オビヌツズマブ」と抗がん剤「ベンダムスチン」を組み合わせた別の治療を受けました。すると、再び画像上、腫瘍が見えなくなりました。
悪性リンパ腫では、新しい薬の開発や既存薬の見直しなどで、現在10種類以上の薬が治療に使えるようになっています。新薬の開発も進み、「闘う手段」は増えているといいます。
悪性リンパ腫と闘ってきたAさんはこう話します。「当然、再発の不安はあります。それだけ大きな病気ですので。しかしこうやって普通の人のように生活ができている。そのことがすごく感謝です」