胆のう・胆管がんの最新治療 手術できないケースの新しい薬

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胆のう・胆管がん腹痛やせてきた胆のう・胆管

胆のう・胆管がんの治療

胆のう・胆管がんの場所

胆のうは、肝臓とすい臓の間にある消化器官で、肝臓がつくる胆汁という消化液をためています。胆管は、肝臓から十二指腸へ胆汁を送る管です。この胆のうと胆管に起こるがんを、それぞれ胆のうがん、胆管がんといいます。どちらも命に関わる病気で、5年生存率は約25%と低くなっています。その原因の一つは、胆のうがんと胆管がんがあまり知られておらず、気がつかないうちに進行してしまうことが考えられます。まずは、「黄だん」の症状や、健康診断の数値(ビリルビン、ALP、ガンマGTPなど)といった早期発見の手がかりに注意することが重要です。

胆のうがんを水平断面でみたもの

上の図は、腹部を水平断面でみたもので、胆のうは肝臓のすぐそばにあります。丸で囲っている、白くもやもやしているのが、胆のうがんです。

胆管がんを正面から断面でみたもの

一方こちらの図は、腹部を正面から断面でみたもので、胆管は肝臓の下、画像の真ん中辺りにあります。丸で囲っている、白くもやもやしているのが、胆管がんです。
こうしたCTやMRIなどの画像検査で、胆のうがんや胆管がんが確認され、がんが離れた部位に転移している可能性が低いと診断された場合は、手術が検討されます。手術でがんを切除しても、その周囲にがん細胞が残っていることが多いため、再発を防ぐために、手術後は抗がん剤治療を行います。テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(S-1)という薬がよく使われています。最近、この治療によって生存期間が明らかに延びることが証明されました。
ただし、持病がある場合や高齢の場合、がんが遠くの部位に転移している場合は、手術を行わず、複数の抗がん剤を組み合わせた治療を行います。

手術できないケースの死亡率を下げる新しい薬

2022年に胆のうがんと胆管がんの治療に対して、従来の抗がん剤とは異なる働きをもつ免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブに健康保険が適用されました。皮膚がんや肺がんなどの治療にも使われている薬で、免疫細胞の働きを高める働きがあります。
がん細胞は、健康な人の体でも日々生じていますが、通常は、すぐに免疫細胞ががん細胞を攻撃するため、がん細胞は増殖しません。

がん細胞の表面にブレーキ信号を発する物質が現れる

ところが、がん細胞の表面に、免疫細胞に対して“ブレーキ信号”を発する物質が現れることがあります。すると、免疫細胞の働きが抑えられ、がん細胞が増殖してしまいます。

“ブレーキ信号”を妨げる薬、デュルバルマブ

デュルバルマブは、このがん細胞の“ブレーキ信号”を妨げる薬です。従来の抗がん剤のみの治療と、従来の抗がん剤にデュルバルマブを加えた治療を比較したところ、デュルバルマブを加えた治療のほうが胆のうがんと胆管がんによる死亡率が約20%低下したとする報告があります。
(Oh DY, et al. NEJM Evid.2022)

薬の副作用

薬による治療では、白血球や血小板の減少、貧血、吐き気、便秘、下痢などが起こりやすいとされています。ほかにも、デュルバルマブに特徴的な副作用として、さまざまな臓器に過剰な免疫反応が生じ、甲状腺機能の低下や肝障害、糖尿病などが起こることがあります。副作用に対しては早めに対処することが必要なので、複数の診療科にまたがる副作用対策チームで対応するのが一般的です。

次の薬に備えるための「遺伝子パネル検査」

薬の効果や持続性には個人差があり、実際に使ってみるまでわかりません。がんが小さくなって手術を受けられるようになることもありますが、効果が低かったり、使い続けているうちに効果が低下することもあります。そのため、薬の変更に向けた準備が大切です。
その1つに、「遺伝子パネル検査」という、数百種類のがんに関わる遺伝子をまとめて調べる検査があります。胆のうがんや胆管がんに関わる遺伝子も調べることが可能で、4~5人に1人ほどの割合で、個々の患者に合った薬を見つけることができます。検査を受けるタイミングなどについては、担当医とよく相談することが大切です。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年10月 号に掲載されています。

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