吐き気・おう吐の原因・対処法 心理的要因による吐き気はなぜ起こる?

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危険な吐き気・おう吐

吐き気は誰にでも起こる症状ですが、乗り物酔いや二日酔いなど、原因が明らかな場合、危険性は高くありません。しかし、ふだんおう吐することがあまりない大人が吐いてしまった場合は、命に関わる病気の可能性があるので注意が必要です。

消防庁「救急受診ガイド」

総務省消防庁が救急車を呼ぶ目安として出している「救急受診ガイド」によると、吐き気に加え、次の症状がある場合は、重大な病気の可能性があります。

  1. おなかがパンパンに張っている
    腸閉塞(へいそく)など腸の病気の可能性があります。腸閉塞は何らかの原因で腸が塞がってしまう病気です。食べ物が詰まってお腹が張って痛みが出たり、吐き気やおう吐といった症状が現れたりします。なかでも腸がねじれるなどして血流障害を伴う腸閉塞は、1分1秒を争う危険な状態です。激しい腹痛がある場合は要注意です。
  2. 胸または背中の痛みがある
    心筋梗塞、大動脈解離などの可能性があります。心筋梗塞は突然死につながる怖い病気ですが、吐き気・おう吐を伴うことが多く報告されています。早く治療すれば助かる確率も高まるため、早急に救急車を呼びましょう。大動脈解離は太い血管が裂けてしまう病気で、突然胸や背中の激痛とともに起こります。急速に死に至ることも多い病気です。
  3. 強い頭痛がある
    脳卒中などの可能性があります。脳卒中のうち、特にくも膜下出血は、今まで経験したことのない激しい頭痛が特徴です。また、吐き気がないのに突然吐いてしまうこともあるので、こういったおう吐があった場合は、救急車を呼びましょう。

心理的要因による吐き気はなぜ起こる?

吐き気・おう吐の主な原因

一般的に多く見られる吐き気・おう吐の原因の主なものを2つあげると、一つは胃腸など「消化器の病気」によるもの。もう一つは「心理的要因」によるものです。消化器の病気とは、例えば、十分に加熱していない肉を食べて食中毒になり、激しい吐き気がある場合などです。また、胃腸炎になり、吐いてしまうこともよく起こります。さらに、虫垂炎(盲腸)でも吐き気が起こることがあります。

「心理的要因」の吐き気やおう吐

おう吐中枢が刺激されることで吐き気やおう吐が起こる

緊張や不安、ストレスなどからも吐き気が起こることがあります。こうした心理的要因で起こる吐き気は人間の正常な防御反応の一つと考えられています。脳の中には「おう吐中枢」というところがあって、ここが刺激されると吐き気やおう吐が起こります。毒など体に悪いものを食べてしまった時にそれを吐き出すことこそ、おう吐中枢が関わる防御反応の中心です。そして、ストレスなどの心理的要因で起こる吐き気は、おう吐中枢に加えて「自律神経」が大きく関係していると考えられています。

自律神経とは

自律神経とは

胃をはじめとした内臓の働きや血液の流れをコントロールしているのが自律神経です。自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあります。
交感神経が優位になると体が「戦闘モード」になります。具体的には活動時やストレスを受けた時です。そして、副交感神経が優位になると体が「リラックスモード」になります。具体的には休憩している時で、胃腸がよく働きます。

実は、この自律神経とおう吐中枢には深い関係があります。人間の体は大きなストレスがかかると、戦闘モード、つまり交感神経が優位になります。もしもこの時、食べ物の消化をしていると、体の動きが鈍くなってしまいます。脅威に対して戦う、もしくは逃げるなど、迅速に体を動かすため、「おう吐中枢」が刺激されて、食べたものを吐き出す働きが起こるのではないかと考えられています。こうした反応は人間のみならず、蛇や犬などの動物でも見られると言われています。

吐き気・おう吐の対処法

食事のオススメ

吐き気・おう吐の対処法

吐き気があるときは胃に負担がかからないよう、おかゆなどの消化によい食べ物がおすすめです。また「しょうが」もおすすめです。しょうがはピリッと辛みがあります。この辛み成分が、吐き気を和らげてくれるという研究報告があります。しょうが湯やジンジャーティー、すりおろして食事に入れるとよいでしょう。
逆に、カフェインやアルコールなど刺激の強いものは、人によって吐き気を助長することがあるので、吐き気がある場合は控えましょう。また脂の多い肉など消化に時間がかかるものは、胃に負担が大きいので注意しましょう。吐き気があるときはなかなか食欲がわかないものですが、無理に食べようとせず、食べられるときに少量食べることが大切です。

吐き気に効果的なツボ「内関」

吐き気に効果的なツボ「内関」

吐き気を緩和するのに効果的なツボがあります。不安、緊張などの心理的要因からくる吐き気がある人にもおすすめです。「内関」と呼ばれるこのツボは、手首の内側のシワの中央から指3本分のところにあります。2つある細い腱の真ん中です。ゆっくり5秒かけて親指の腹で押してください。5秒たったらゆっくり離していきます。これを数回繰り返しましょう。
手術を受けたあとに吐き気やおう吐を訴える患者さんが多いのですが、このツボでおう吐が抑えられるという研究報告もあります。また、乗り物酔いやつわりなど、さまざまな吐き気に活用できるとされています。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年9月 号に掲載されています。

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