動脈硬化・脂質異常症 タイプに合った食事・詳細版

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食材を賢く選べば食事を楽しめる

動脈硬化予防の食事といっても、あれもダメ、これもダメという制限ばかりではありません。工夫しだいで食べられる食材は多くあります。「LDL(悪玉)コレステロール値が高い人」「中性脂肪値が高い人」「糖尿病・高血圧がある人」の3つのタイプ別に楽しく食事ができる食材の選び方を紹介します。自分のタイプに合った対策を行いましょう。

タイプ別 血管が変わる食事術

食材・料理監修
日本女子大学家政学部食物学科 講師 亀山詞子

タイプ別 血管が変わる食事術

LDL(悪玉)コレステロール値が高い人

「LDLコレステロールを増やす食品」を控えて、「LDLコレステロールを減らす食品」を積極的に選ぶようにします。

控えたい食品【肉の脂】

肉の脂

肉の脂にはLDLコレステロールを増やす動物性脂肪(飽和脂肪酸)が多く含まれているため、牛肉や豚肉の脂身、鶏肉の皮、ベーコンやソーセージなどの加工肉は控えましょう。
ただし、肉はたんぱく質やビタミンB群を豊富に含むため、極端に控えるのはよくありません。部位や調理法、量や頻度を考えて食べるようにしましょう。

◎脂身が少ない部位を選ぶ

脂肪が少ない部位

牛肉や豚肉の「ヒレ」と「もも」は動物性脂肪が比較的少ない部位です。
ほかに、牛肉の「かた」、鶏肉の「ささみ」「むね」「もも」などもおすすめです。

<調理法を工夫>

鶏肉は皮をとると動物性脂肪が少なくなる

牛肉や豚肉の脂身の多い「バラ」「ロース」は、なるべく脂身を取り除きましょう。

脂身を除く

さらに、網焼きやしゃぶしゃぶなど、脂が落ちる調理法を選ぶようにしましょう。

網焼き、しゃぶしゃぶ

控えたい食品【卵】【バター、クリーム、チーズ】

卵

卵1個で、LDL(悪玉)コレステロール値が高い人の1日のコレステロール摂取量の目標値(200mg未満)を超えてしまうので、とり過ぎないようにしましょう。

バター、クリーム、チーズ

バター、クリーム、チーズにはLDLコレステロールを増やす動物性脂肪が多く含まれています。

<食べるとき・飲むときの工夫>

  • バターよりも植物油を使うとよいでしょう。
  • 牛乳にも動物性脂肪が含まれてはいますが、体に必要な栄養素も多く含まれているため、全てやめるのではなく、低脂肪や無脂肪のものに替えるなどの対策をしましょう。

積極的にとりたい食品【魚】

積極的にとりたい食品、魚

青背の魚に含まれるEPAやDHAは、中性脂肪値を低下させる効果があります。中性脂肪は、血管壁に入り込みやすい小型化したLDLを増やす働きがあるので、この値を下げるのが重要です。
ただし、内臓まで丸ごと食べる小魚は、コレステロールが多いので、とり過ぎないようにしましょう。

<調理法を工夫>

焼き魚、缶詰の魚
刺身・ホイル蒸し

魚の良質な油ごと食べられる調理法を選びましょう。焼き魚、缶詰の魚、刺身、ホイル蒸しなどがおすすめです。

積極的にとりたい食品【大豆製品】

積極的にとりたい食品【大豆製品】

大豆に含まれる脂質のリノール酸には、LDLの代謝を促し、血液中のコレステロールを減らして動脈硬化の進行を抑える働きがあります。

積極的にとりたい食品【海藻・きのこ類】

海藻
きのこ類

海藻(わかめ、ひじき、昆布、めかぶ、もずくなど)・きのこ類(なめこ、しろきくらげ、しいたけなど)は、コレステロールの吸収を抑え、動脈硬化の進行を予防する食物繊維が豊富です。特に水に溶けやすい水溶性食物繊維がおすすめです。

<調理法を工夫>

煮汁・スープ

煮汁やスープに溶け込んだ食物繊維が丸ごととれる「海藻入りみそ汁」や「きのこたっぷりスープ」など、具だくさんの汁物もおすすめです。

積極的にとりたい食品【緑黄色野菜】

積極的にとりたい食品、緑黄色野菜

緑黄色野菜(ほうれんそう、モロヘイヤ、ピーマン、トマト、にんじん、ブロッコリ、オクラなど)は、β(ベータ)カロテンやビタミンC・Eなど、動脈硬化を進行させる活性酸素の働きを抑える抗酸化作用がある成分が多く含まれています。

中性脂肪値が高い人

中性脂肪は、体内では主にエネルギー源として利用されますが、食べ過ぎたり運動不足になると、余分な中性脂肪が体内に蓄えられ、肥満につながります。そのため、中性脂肪値が高い人は、食べ過ぎに注意することが大切です。そして、中性脂肪を増やす食品(糖質と酒)は控え、中性脂肪を減らす食品(青魚、海藻、きのこ類、野菜)は積極的にとるようにします。
肉の脂や卵、バター、クリーム、チーズなどについては、LDL(悪玉)コレステロール値が高い人ほど気にしなくてもよいですが、とり過ぎは肥満につながるので注意しましょう。

控えたい食品【糖質が多い食品、菓子、清涼飲料水】

甘い菓子や清涼飲料水は、糖質を多く含むので控えましょう。また、精製度の高い白米や精製された小麦を使った白いパンも糖質が多いので注意。

<食べるときの工夫>
◎糖質が比較的少ない茶色い穀物を選ぶ

糖質が比較的少ない茶色い穀物、ごはん系
糖質が比較的少ない茶色い穀物、パン系

精製度が高い白米は、含まれる糖質の割合が多く、精製度が低い胚芽米、玄米、麦、オートミールは食物繊維が多くて糖質は比較的少ない食品です。パンも、白い精製された小麦粉を使ったパンより、全粒粉や胚芽、ライ麦を使ったパンのほうが、食物繊維が多く糖質が少なくなります。

白色系、茶色系の穀物

穀物は、精製された白いものより精製度が低い茶色いほうを選び、無理のない範囲で日常の食生活に取り入れましょう。

◎洋菓子よりも和菓子を選ぶ

洋菓子よりも和菓子を選ぶ

ケーキやクッキーなどのバターやクリームを使った洋菓子は、脂肪が多く、カロリーが高めです。たまに楽しむ程度にとどめるほうがよいでしょう。洋菓子に比べて和菓子に使われている小豆や寒天は、比較的低カロリーなので適度に食べるのはよいでしょう。ただし、食べ過ぎは厳禁です。

◎果物は糖質の少ないものを選ぶ

かんきつ類やいちご、ベリー類、キウイフルーツなど、比較的糖質が少ない果物を中心に適度に食べるようにしましょう。ただし、ドライフルーツや缶詰は糖質が多いので注意が必要です。

控えたい食品【酒】

酒は飲み過ぎに注意し、飲む場合は1日にビールなら大瓶1本まで、日本酒なら1合まで、ワインならグラス1〜2杯程度までを目安にしましょう。この量が1日のアルコールの摂取25g以下に相当しますが、できるだけ減らすことが望ましいです。

積極的にとりたい食品【青魚、海藻、きのこ類、野菜】

これらは、LDL(悪玉)コレステロールだけでなく、中性脂肪も減らす効果があります。また、野菜に多い食物繊維は、胃腸に長くとどまり、おなかで膨れるため、食べ過ぎを防ぎます。緑黄色野菜を含めた野菜・海藻・きのこ類を朝・昼・夕の食事のたびに、小鉢2皿分は食べるようにするとよいでしょう。

糖尿病・高血圧がある人

動脈硬化の危険因子のなかで、脂質異常症のほかに、食生活の改善が特に重要なのは糖尿病と高血圧です。糖尿病がある人は、中性脂肪値が高い人と同様、食べ過ぎに注意し、糖質が多く含まれる食品を控えるようにします。高血圧がある人は、食塩をとり過ぎないことが何より重要です。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年9月 号に掲載されています。

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