高尾美穂流!女性の“カラダとココロ”術 Vol.1 更年期を乗り切る「睡眠改善」!秘策はヨガ&ネコ!?

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女性の病気・トラブル更年期障害眠れない・眠りが浅い全身
産婦人科医の高尾美穂さん

NHK健康チャンネルでは、女性のからだと心にまつわるお悩みを、産婦人科医、そしてヨガの指導者でもある高尾美穂さんにズバリ聞いちゃおうという連載企画をスタートします。

自身も更年期真っ最中という高尾さんは、「更年期は正しく知れば怖くない。コンディションを改善することはできるし、もっと健やかに過ごせるようになる」と語ります。新シリーズでは、医療現場からみた更年期、そしてヨガや運動、食事など高尾さんがプライベートでも実践しているセルフケアもたっぷりご紹介します。今、更年期でつらい人も、これから更年期を迎える人も、きっと役立つ情報が満載です!

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第1回は、更年期の人にも多い睡眠のトラブルについてです。高尾さんの実体験を交えて、実践している対策や高尾さんの生き方に大きな影響を与えたという「ヨガ」との出会いについてもお話を伺いました。

高尾美穂さん

更年期真っ最中の高尾さんを襲う、真夜中の「ホットフラッシュ」

――普段は更年期の患者さんに向き合っている高尾さんですが、ご自身は更年期症状はありませんか?

あります!わたしの場合の更年期症状は、まさに、“ボイラーがつく”という表現が一番合うと思いますが、寝ている最中に「今から汗が出ます」という感覚がわかるときがあります。それで、夜中にパッと目が覚めて、首回りにブワって汗をかくんですが、Tシャツを取り替えないと寝冷えしてしまうくらい汗が出ますね。

いわゆる、“ホットフラッシュ”と呼ばれる状態だと思います。エストロゲンが減少することで、血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経が乱れてしまって、起こるとされる症状です。

――いつも元気印の高尾さんでさえ、更年期による睡眠のお悩みがあるんですね

全体の6割ほどの女性が、更年期症状を経験するといわれています。更年期症状のピークは、特に閉経前2年、閉経後1年ですが、わたしはまさに更年期ど真ん中にいます。

わたしの場合は、寝汗によって睡眠が妨げられるのですが、不安や動悸(き)、頻尿や疼(とう)痛などもぐっすり眠れない理由になり得ます。長い間寝ていられないとか、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりする睡眠障害の悩みは、更年期の患者さんにはよくあるんです。

実は更年期の睡眠不調の改善はとても大事なことです。睡眠が十分にとれていないと、今度はメンタルの不調につながるわけなんです。患者さんの中には、更年期うつに陥ってしまうケースもあります。寝汗などの「更年期症状」×「睡眠のトラブル」×「メンタルの不調」は、切っても切れない三角関係にあるといえます。睡眠不足は心にストレスをためるだけではなく、免疫機能も下げてしまうことになるので、優先して改善したいですね。

目指すは7時間睡眠!よい睡眠をもたらすのは猫!?

――高尾さんが睡眠改善のために、実践していることはありますか?

とにかく睡眠時間を確保する意識は相当持っています。できるだけ、連続7時間はとりたいですね。以前は、朝早く起きてヨガをするプランでした。でも、更年期の今は、早起きにこだわらず、無理のないスタイルで朝の時間を有効活用しています。

それから、途中で目が覚めても、とにかく電気をつけずに過ごします(笑)。トイレに起きても、電気をつけずに壁づたいでトイレに行きます。暗い中でトイレを済ませて、もう一回寝る気満々で戻ってきて、すぐ布団に入るという意気込みで過ごすんです。そして、そのときは、絶対に携帯電話は見ないと心に決めています。

――とても強い心がけですね。ほかによく眠るための習慣は?

猫を3“人”飼っているのですが、毎日猫と一緒に寝るようにしています。電気を消すと猫たちが枕元に2人、足元に1人来るので、暗闇で触って確認します。睡眠環境としては、ベッドには人1人というのがベストですが、わたしにとっては猫と眠ることが安心材料になるんです。

優しい触り心地のものを触るだけで“幸せホルモン”とも呼ばれるオキシトシンが出るとされていて、わたしの場合は猫を触ります。自分が安心できるもの、心地の良いものに囲まれる環境を作ると、自然とリラックスできます。そうすると、交感神経活動が落ち着いて、相対的に副交感神経が優位な状態を作れるので、睡眠にとって有利と言えます。

※猫アレルギーをお持ちの方や、猫アレルギーの危険性のある方はご注意ください。自分が安心できるもの、心地よいものを選んでください。

高尾さんおススメ!睡眠改善のためのヨガポーズ&呼吸法

――高尾さんといえば「ヨガ」ですが、睡眠改善のためのヨガはありますか?

寝る前にヨガで1日使った体をちょっといたわる時間を持ちます。ベッドの上でよくするのは、「ワニのポーズ」と呼ばれるポーズですが、あおむけになって足を伸ばして、片足をあげて反対側に倒し、腰回りをストレッチします。

ワニのポーズ

その後は、仰向けに寝ている状態でひざをギューッと胸の方に抱える「ガス抜きのポーズ」をします。自分自身を抱きしめるセルフハグに近いような状態です。1日よく頑張ったね、という自分へのメッセージですよね。しっかり体を伸ばした後にちっちゃくなると、非常にメリとハリがあって気持ちがよい動きなのでおススメです。

ガス抜きのポーズ

――就寝前にヨガで体を整えるのはとても気持ちがよさそうですね

そうなんです。ヨガはエクササイズとしてもですが、やっぱり「呼吸」が大事だと思うんです。ポーズをとるとき、“4秒吸って、6秒吐く”というゆっくりとした呼吸をします。すると、横隔膜にある自律神経が刺激され、副交感神経の働きが高まってリラックス状態になると考えられています。だから、よく眠れるようになるんです。

男性でも男性ホルモンの低下によって、更年期障害になることがあり、眠れないなどの症状がでます。そういった場合にも、自律神経に働きかける睡眠前のヨガポーズや呼吸法は有効と考えていいと思います。

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ケガの功名!?高尾さんとヨガの出会い秘話

――ヨガの効果は大きいですね

ヨガのポーズや呼吸以外に、ヨガで学んだ哲学も、自分にはすごく合っていたなと思います。

例えば、自分では変えられないことよりも、自分の力で変えられることにフォーカスした方がいいという考え方です。すごくシンプルであり、ある意味真理ですよね。

更年期は誰にでも訪れるもので、どうしようもないですが、その時期を楽しんで過ごそうと思うかは自分次第ですよね。わたしの場合、ヨガを通して、そういう考え方が知らず知らずの間に身についていたんじゃないかと思います。

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――高尾さんにたくさんの影響を与えたヨガとの出会いは?

20年ほど前、雨上がりにロードバイクに乗っていたときのことです。バイクが横滑りして、足首のじん帯を伸ばしてしまって、しばらく安静にしなければならなくなりました。それで、自分の体の回復に加えて、何かできることはないかと考えたときに、ヨガに出会ったんです。

病院勤めで当直がある生活になった頃、よくジムに通っていたのですが、そこのプログラムにヨガあったので、試しに行ってみたら、自分にはできないポーズがいっぱいあったんです。そこで、簡単に言うと、「できないのが悔しいから、そのポーズができるようになりたい!」という一心でハマったわけですよ。

医師として、ヨガインストラクターとして伝えたいこと

――安静にしていないといけないのに、ストイックですね(笑)

もともと、ソフトボールとかバレーボールとか、チームスポーツをずっとやっていたので、運動している人の感覚ですよね。ヨガでは、本当に運よくいいクラスに出会えたので、わたしのチャレンジ精神的な部分がモチベーションになってくれたんだろうなと思います。

ヨガを始めたころの高尾美穂さん

ヨガを続けるうちに、体にだけではなく、心にもいいことがあると感じるようになり、指導者の資格もとりました。始めてから10年ほどたった頃は、世の中でもヨガのよさが広まっていったのですが、“生理痛にもヨガがいい”というような話が出てきていました。

もちろんある程度緩和する人たちもいますが、子宮内膜症などがあったりすると、ヨガだけで改善するわけじゃないのも確かです。そこをちゃんと線引きしないと、ヨガにせっかく期待をしてくれたのに、その人の思いが残念な形で終わってしまうケースもあると思うようになったんです。

だから、それまでは完全に自分のためだけのヨガでしたが、産婦人科医として、“ヨガはここまで期待できる、でも、そこから先は医療に期待してほしい”というような線引きを世の中の人たちに伝えたいという気持ちで、今に至っています。

そして、“更年期”という言葉が広まるにつれ、更年期になる前から不安になって来院される若い患者さんと多く出会うようになりました。“悩みは大抵、過去か未来にあり”というヨガの考え方があるのですが、更年期を迎える前の方々は、まだ起こっていないことに不安になり過ぎないで、更年期について正しく知ればそこまで恐れるものではないよと伝えたいですね。

産婦人科医の高尾美穂さん

産婦人科医の高尾美穂さんに聞く、特別連載「高尾美穂流!“女性のカラダとココロ”術」では、これからも誰でも取り組める「運動」や「食事」、「医療」から見た更年期障害を通して、“更年期とのつきあい方”をお伝えしていきます。更年期で悩んでいる方も、まだ更年期でない方も、ぜひお楽しみに!