健康食品・サプリメントが薬物性肝障害の原因に!

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肝がん・肝臓がん体がだるい目がおかしい腹痛肝臓

ダイエットや栄養補給など、健康づくりの目的で口にする、健康食品やサプリメント。厚生労働省の調査では、成人女性の約4割、成人男性の約3割が、健康食品やサプリメントを使っているとされています*。しかし、健康食品やサプリメントを使ったことが原因で、肝臓に障害が起こることがあるので、注意が必要です。
*厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」

薬物性肝障害とは

肝臓には、薬などに含まれる成分を代謝(分解)する働きがあります。そのため、薬を使って肝臓に過度な負担がかかり、障害が出ることがあります。これを「薬物性肝障害」といいます。健康食品やサプリメントは薬ではありませんが、薬と同様に薬物性肝障害を引き起こす可能性があります。
症状は、けん怠感、発熱、頭痛、食欲不振、黄疸(おうだん)(眼球の白い部分や皮膚などが黄色くなる)、腹痛、発疹、かゆみ などさまざまですが、軽症の場合は症状がなくても肝臓が障害されていることがあります。薬物性肝障害は、全体の約20%は使ってから7日以内に起こり、約80%は90日以内に起こるとされています*。しかし、90日以上たってから起こることもあるので、長く使っている健康食品やサプリメントだからといって安心はできません。
* Takikawa H, et al: Drug-induced liver injury in Japan-an analysis of 1,676 cases between 1997 and 2006. Hepatol Res in press.

薬物性肝障害の診断

診断は、基本的には血液検査で行います。さらに原因を特定するために追加の検査が行われます。薬物に対するリンパ球の反応をみるDLSTという検査や、ウイルス検査、画像検査などで肝臓の状態を調べます。

薬物性肝障害の治療

まず、原因と思われる健康食品やサプリメントの使用を中止することから始めます。そのうえで、肝臓の炎症を和らげたり、肝臓の機能を改善させる薬を使ったり、アレルギー性の場合はステロイド薬を使うこともあります。重症の場合、肝不全に対する治療が必要になることもあります。

それ、本当に必要ですか?

健康づくりの基本は「栄養バランスのとれた食事・適度な運動・十分な休養」です。健康食品やサプリメントが自分にとって本当に必要なものなのか、いま一度考えることが大切です。食生活を改めることで健康状態を改善することは可能です。
それでも健康食品やサプリメントを使いたい場合は、事前に医師や薬剤師に相談し、その際は「健康食品手帳」を活用しましょう。

健康食品手帳

健康食品手帳

👉「健康食品手帳 見本」ダウンロードはこちら

利用開始日、製品名、摂取量、体調の変化の状況などを記録しましょう。「お薬手帳」と一緒に使うと、健康食品やサプリメントと薬ののみ合わせなどについて、医師や薬剤師にスムーズに相談することができます。
健康食品手帳は、消費者庁などのホームページでもダウンロードできます。

消費者庁ホームページ
※NHKサイトから離れます

健康食品手帳に加えて

気になることがあった場合、医師や薬剤師のところに健康食品やサプリメントの実物を持っていく、あるいはパッケージなどを写真に撮っておいてみせるとよいでしょう。製品名やメーカー名を正確に伝えることができます。

薬物性肝障害 4つの事例

ケース① 58歳女性 ウコンが原因で起こった肝障害

(日本医師会ホームページ 「健康食品」・サプリメントについて>ウコンについて
https://www.med.or.jp/people/knkshoku/ukon.html
日本医師会監修「いわゆる健康食品・サプリメントによる健康被害症例集」(同文書院)より)
※NHKサイトから離れます

肉体疲労の回復のためと思ってウコンを服用

肉体疲労の回復のためと思ってウコンを服用。

ウコン服用の1か月後けん怠感、発熱、頭痛

使用を開始してからおよそ1か月後に、全身のけん怠感、発熱、頭痛が起こった。

ウコンによる肝障害と診断

医療機関で血液検査を受けると、ウコンによる肝障害であることがわかった。

入院・治療

ウコンだけでなく、そのほかの健康食品の使用も中止した。入院してステロイド薬などによる治療を受け、半年後には回復した。

解説

原因は、高濃度のウコンを長期間使ったことでした。ウコンはカレーの香辛料などにも使われるショウガ科の植物の根茎で、一般的な食品の中にも含まれています。通常、食事でとる量であれば大きな問題はないと考えられていますが、ウコンの成分濃度が高い健康食品やサプリメントを長期間使うと、肝障害が生じることがあります。また、製品の品質に問題がある可能性も否定できません。
ウコンによる肝障害は、日本医師会が平成18年度から22年度に行った調査でも複数報告されています。また、日本肝臓学会の調査によると、健康食品などによる肝障害の約25%*はウコンによるものとみられています。
*恩地森一ほか 民間薬及び健康食品による薬物性肝障害の調査 肝臓2005

以下のケース②③④は、独立行政法人国民生活センターのホームページからです。
独立行政法人国民生活センター ホームページ
健康食品の摂取により薬物性肝障害を発症することがあります
-「医師からの事故情報受付窓口」から-
報告書本文(PDF)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170803_1.html
※NHKサイトから離れます

ケース② 70歳代女性 「健康ハーブ茶」を飲み始めて黄疸(おうだん)が・・・」

(日本医師会「健康食品安全情報システム」事業に寄せられた情報より)

健康ハーブ茶を飲み始める

園芸店で購入した「健康ハーブ茶」を飲み始めた。

2か月後に黄疸が現れる

飲み始めてからおよそ2か月後に、黄疸(おうだん)が現れた。医療機関を受診すると、高度肝機能障害であることがわかった。

肝臓の機能を回復させる治療うけるため入院"

「健康ハーブ茶」を飲むのをやめて、10日間入院し、肝臓の機能を回復させる治療を受けた。

解説

商品名などに“健康”とうたわれていても、科学的な根拠が本当にあるのかどうかはわかりません。言葉のイメージに惑わされないことが大切です。“天然”のものや“自然”由来のものであっても、害がない、ということではありません。長期間・大量に摂取すると、健康に悪い影響が生じることもあるのです。

ケース③ 70代女性 「友人から勧められたサプリメントで異変が・・・」

(国民生活センター「医師からの事故情報受付窓口」より)

友人に3種類のサプリメントを勧められる

知人から勧められた3種類のサプリメントを服用。

けん怠感などの症状

2〜3か月ほど使ったところ、けん怠感や尿が褐色になる、肌が黄色に変色するなどの症状が現れた。

重症の薬物性肝障害と診断

医療機関で血液検査を受けたところ、重症の薬物性肝障害と診断された。3種類のサプリメントすべての使用を中止し、1か月以上入院して治療を受けた。

解説

誰かにとってよい健康食品やサプリメントだったとしても、すべての人にとってもよいものとは限りません。使う人の体質や体調、摂取量や期間などによって安全性や効果、副作用には個人差があります。自分が使っているからといって、安易に人にあげたり、人からもらったものを使ったりすることは避けましょう。

ケース④ 50歳代女性 「健康食品とかぜ薬の併用が原因」

(国民生活センター「医師からの事故情報受付窓口」より)

10年前から複数の健康食品、かぜ薬

10年前から複数の健康食品を使っていたが、かぜをひいたときにかぜ薬を1日分服用した。

2週間後腹部違和感、肝障害

かぜ薬を服用した2週間後に腹部に違和感が生じた。医療機関で検査を受けると、肝障害が起こっていることがわかった。

肝障害の原因は健康食品1種とかぜ薬

血液検査の結果、使っていた健康食品の1種とかぜ薬を併用したことが原因であることがわかった。その摂取を中止すると回復したが、1か月以上の経過観察となった。

解説

健康食品やサプリメントに含まれる成分のなかには、薬の効果を弱めたり、副作用を強めたりするものがあります。これを薬物間相互作用といいます。

注意が必要な組み合わせ

たとえば、血液を固まりにくくする抗凝固薬の一種であるワルファリンは、ビタミンKを含むものと一緒にのむと効果を下げてしまいます。逆に、ワルファリンの効果を増強させる健康食品やサプリメントもあります。薬物間相互作用にはさまざまな組み合わせがあるので、健康食品やサプリメントを使っていて薬を服用する場合は、事前に医師に確認することが大切です。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年7月 号に掲載されています。

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