メンタル不調を解決!漢方薬のチカラ

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こころ

ここ数年のコロナ禍の影響もあり、「うつ」や「不安」など、“心”の不調を感じている人が急増しています。こうしたなか、注目されているのが漢方薬。自分では気づきにくいメンタル不調のサインの見つけ方やケアの方法など、漢方専門医の今津嘉宏さんに教えてもらいます。

漢方専門医の今津嘉宏さん

解決のカギは「気・血・水」の「気」

東洋医学では「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方で、不調の原因を探ります。「血」は、エネルギーを循環させる血液。そして「水」は、体液などの水分。そして、メンタルの不調と関係が深いのが「気」。「気力」「元気」などに象徴される「生命のエネルギー」です。

気・血・水

「気」の異常 3つのタイプとは?

メンタルの不調と関係が深い「気」の異常は、「気虚(ききょ)」「気滞(きたい)」「気逆(きぎゃく)」の3つのタイプに分けられます。

「気」の異常 3つのタイプ

それぞれのタイプによって、体に現れる症状にも特徴があります。心身の不調に合わせて「気」の状態を推測し、セルフケアの方法を知ることもできます。

メンタル不調のタイプ
  • 気虚(ききょ)
    体を動かすエネルギーである「気」が不足しているため、気力がなく倦怠感(けんたいかん)が現れやすいのが特徴。また、「気」を作るとされる胃の調子が悪い人もこのタイプが多い。
    セルフケアは、食欲がなくても少しでもいいので「よくかんで食べる」こと。また、お風呂につかるなど「全身を温める」ことも大切です。
  • 気滞(きたい)
    「気」の流れが悪いため、気分や感情が不安定、眠れないといった症状が出やすいのが特徴。また、のどが詰まるような感覚も起こりやすくなります。
    セルフケアは、「気」の流れをよくするという「香草」などを食事に取り入れること。また、睡眠環境を整えて十分な睡眠をとることが大切です。
  • 気逆(きぎゃく)
    通常は、上から下に流れていると考えられている「気」が逆流しているため、足は冷えるのに、のぼせるなどの症状が起こりやすいのが特徴。また、動悸や突発的な頭痛なども起こりやすくなります。
    セルフケアは、足を温めたり軽い運動を行うことが大切です。

メンタル不調に処方される漢方薬

漢方専門医の今津嘉宏さんによると、メンタルの不調で処方される漢方薬は主に「気」の3つのタイプ別に分かれます。今津さんが注目する生薬と漢方薬を教えてもらいました。

気虚(ききょ)

【生薬】

  • 人参(にんじん)
    主な作用:滋養強壮
気虚(ききょ)

【人参が使われている漢方薬】
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、六君子湯(りっくんしとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)など

気滞(きたい)

【生薬】

  • 柴胡(さいこ)
    主な作用:抗炎症作用
  • 蘇葉(そよう)
    主な作用:抗不安・鎮静作用
柴胡(さいこ)と蘇葉(そよう)

【柴胡が使われている漢方薬】
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、抑肝散(よくかんさん)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)など

【蘇葉が使われている漢方薬】
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、香蘇散(こうそさん)など

気逆(きぎゃく)

【生薬】

  • 桂皮(けいひ)
    主な作用:解熱・抗ストレス作用
桂皮(けいひ)

【桂皮が使われている漢方薬】
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)など

※漢方薬の服用は自己判断せず、かかりつけ医や漢方専門医にご相談ください。

漢方薬を正しく安全に使うには?

ご紹介した漢方薬は、薬局やインターネット通販でも手に入れることができます。しかし、症状の裏には大きな病気が潜んでいる可能性もあります。ぜひ、かかりつけ医や漢方の専門医に相談し、診断を受けてから処方を受けることをお勧めします。

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この記事は以下の番組から作成しています。

東洋医学ホントのチカラ

東洋医学ホントのチカラ「心と体を整えるSP」

2023年3月20日(月) 午後7:30~ [総合]

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