大腸がんを予防する生活習慣 5つのポイント

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日本人に最も多いがん、大腸がん。2021年にがんで亡くなった人の部位別でみると、大腸がんは、男性では第2位。女性では第1位となっています。さらに、亡くなった方の人数は、半世紀でおよそ6倍となっていて、その数は増え続けています。
理由の1つが高齢者の増加。年齢を重ねるほど、体内にがん細胞が発生しやすくなり、修復能力も下がってくるため、高齢者ほどがんになりやすくなります。
それだけでなく、大腸がんには生活習慣や環境も深く関わっています。そのため、生活習慣を改善するだけでも、大腸がんにかかるリスクは下げられます。

大腸がんを予防する生活習慣 5つのポイント

大腸がん予防の5つのポイント

①節酒

国立がん研究センターの「日本人のためのがんの予防法」によれば、「大腸がんのリスクになる」と「確実に言える」生活習慣が「大量の飲酒」。1日あたりのアルコール摂取量が23gを超えると、大腸がんを発症する危険性が高くなることが明らかになっています。
アルコール23gとは、日本酒なら1合、ビールなら大瓶(633ml)1本、焼酎なら原液で1合の2/3、ウィスキーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度。飲みすぎには注意しましょう。

②禁煙

もう一つ気をつけたいのが、「喫煙」。これまでリスクの「可能性がある」とされていましたが、
日本人にもリスクになるという証拠がそろってきたため、2022年8月、リスクが「確実」に変更されました。肺がんや食道がんなど、他の多くのがんの原因にもなるので、なるべく禁煙に取り組みましょう。

③バランスの良い食生活

牛肉、豚肉などの赤肉や、ハム・ソーセージやベーコンなどの加工肉は大腸がんのリスクを上げる「可能性がある」と言われています。全く食べてはいけない、というわけではありませんが、ほどほどの量にしておきましょう。
一方、積極的にとりたいのが、食物繊維。食物繊維の摂取は、大腸がんのリスクを下げる「可能性がある」ことが分かってきました。食物繊維は野菜類やイモ類、豆類、果物に多く含まれています。世界がん研究基金および米国がん研究協会では、野菜・果物を1日400gとることを推奨しています。目安としては、小鉢で5皿、果物を1皿食べることでおよそ400g摂取できます。

④身体活動

運動は大腸がんのリスクを下げることが「ほぼ確実」と評価されています。だからといって、必ずしも激しい運動をする必要はありません。厚生労働省によると、18歳から64歳の人は、歩行などの軽い運動を1日60分行うこと、さらに息がはずみ、汗をかく程度の運動を1週間に60分程度行うことも推奨されています。65歳以上の高齢者に関しては、強度を問わず、身体活動を毎日40分行うことが推奨されています。

⑤適正体重の維持

痩せすぎでも太りすぎでも、がんの死亡リスクが上がることが分かっています。
適切な体重を意識して過ごしましょう。

「節酒」「禁煙」「バランスの良い食生活」「身体活動」「適正体重の維持」という5つの健康習慣を実践することで、がんになるリスクはほぼ半減することが分かっています。できることから取り組んでいきましょう。

最近では、50歳になる前に発症する「若年性大腸がん」が世界中で増加していると報告されています。はっきりした理由は分かっていませんが、赤肉やアルコールの摂取量が多いことなどが関係していると考えられています。

生活習慣を改善すれば、大腸がんのリスクを下げることはできますが、ゼロにすることはできません。ただ、たとえ大腸がんになっても、ごく初期に発見できれば、ほぼ100%治療することができます。早期発見のために最も大切なのは「定期的に検診を受けること」です。

日本人の大腸がん検診受診率は?

日本人の大腸がん検診の受診率は40%ほどで、半分にも達していません。これは、アメリカと比べると圧倒的に低い数字です。アメリカでは、50歳を過ぎた国民は大腸内視鏡検査を無償で1回受けることができます。便潜血検査による検査と合わせると、検診受診率は約70%。その結果、近年アメリカでは、大腸がんの死亡率は大きく低下しています。
ある調査によると、日本人が大腸がん検診を受けない理由として最も多かったのが「自覚症状がないから」。他にも「検査がいやだから」、「面倒だから」、「検査費用が気になるから」という理由もありました。しかし、早期の大腸がんではほとんど自覚症状がありません。「体重が減る」、「おなかが痛む・張る」、「おなかにしこりがある」などの症状は、がんが進行してから現れます。このような自覚症状が現れたときには、治療は簡単ではなくなっています。一方、自覚症状のない早期に発見できれば、手術などをしなくても、内視鏡だけで簡単に治療できる場合が多いのです。
さらに、最近では新型コロナウイルスの影響で、検診を受ける人が減少しています。その結果、がんが進行して、おなかが痛む・張るなどの症状が出てから病院に駆け込む人が増えています。気づかないうちにがんが進行する恐れがあるので、感染対策に気を配りながらも定期的に検査を受けましょう。

大腸がん検診の流れ

40歳を過ぎた人であれば、住んでいる市区町村で年に1回検診を受けることができます。検査が行われる日が決まっているので、事前に空いている日や費用を確認しておきましょう。

  • 一次検診…便潜血検査
    まず、一次検診として行われるのは便潜血検査。専用の検査キットで少量の便を採取して提出します。検査キットは事前に保健所に取りにいくか、郵送で入手できます。
  • 便潜血検査が陽性の場合…内視鏡検査
    便潜血検査が陽性になった場合は、精密検査として内視鏡検査などを行います。
    その結果、大腸がんと診断されたら医療機関で治療が必要となります。

    実は、便潜血検査が陽性でも、約60%の人しか内視鏡検査を受けていないという現状があります。内視鏡検査は、「痛い」「恥ずかしい」というイメージがあるのかも知れません。しかし最近では、検査着などもお尻がかくれるように工夫されているなど、検査を受ける人の抵抗が少ないようになっています。

内視鏡検査とは?

最も一般的な「大腸内視鏡検査」は、細い管の先端に付いた小さなカメラを肛門から挿入し、大腸の内側の様子を直接観察する方法です。もし良性ポリープや早期がんがあれば、その場で切除することができます。


大腸内視鏡検査
カプセル内視鏡検査

なんらかの理由で普通の内視鏡が使えない場合は、「カプセル内視鏡」というものもあります。
長さ約3cm、直径約1cmのカプセル型内視鏡を飲み込んで、内蔵されている小型カメラで大腸の中を撮影する方法です。画像は受信機に送られ、大腸の様子を見ることができます。患者は飲み込むだけなので、負担が少なく検査が受けられますが、腫瘍が見つかった場合は、再度内視鏡検査が必要になります。

自分に合った方法を選択して、大腸がんの 「早期発見」を目指しましょう。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年4月 号に掲載されています。

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